先週・BuzzFeed Japanが内閣府大臣官房政府広報室が運営する「国政モニター」というサイトに、ヘイトスピーチや特定人物を誹謗中傷する投稿が掲載されていたということに関する記事、
内閣府のサイトにあふれるヘイトや誹謗中傷 担当者は「びっくりしている」
内閣府サイト、公開中止に ヘイトや誹謗中傷を放置との指摘が相次ぐ
ヘイトが集まる内閣府サイトの実態、元「国政モニター」が証言
3本を掲載していた。その内容にはただただ驚かされる。 しかし、一部の新聞・テレビなどでは一応取り上げてはいたものの、何故か大手メディアの反応は薄かった。タイミング的にはTOKIOメンバーの強制わいせつ事案や麻生氏の「セクハラ罪という罪はない」発言などが注目されていた時期だが、個人的にはそれらと同様かそれら以上に問題視しなければならない案件のように感じていた。
国政モニターとは「国の重要施策に関して、国民の皆さまからご意見、ご要望などを聴取し、国の行政施策の企画、立案及び実施のための参考とすることを目的」とした制度だったそうだ。”だった”というのは、2017年に既に制度としては休止し現在は新たな投稿を募っておらず、これまでの投稿を「国民からの意見・要望」として公開していたという状況だった。5/1までは。”5/1までは”というのは、主にツイッター上で問題視する声が上がり、BuzzFeed Japanが最初の記事を掲載した日の翌日に突然サイトが閉鎖されたからだ。
国政モニターのサイトに掲載される「国民からの意見・要望」に関しては、「立法・司法・政治関係のご意見や、誹謗中傷、差別的な内容などは掲載しない」という規定が設けられ、留意事項としてサイトに記載があったようだが、実際には「朝鮮人を叩き出せ」とか特定の政治家を誹謗中傷するような投稿が複数掲載されていた。これについてBuzzFeed Japanが5/1に取材を申し込むと、 担当者は「びっくりしている。事実を確認中」と答えたそうだ。現在の担当者は問題視されている投稿が掲載された当時の担当者と同一ではないのかもしれない。もしそうならば、そのような第一声も理解は出来る。しかしこの取材の翌日急に「国政モニター制度は平成28年度をもちまして休止しております」という文言だけがサイトに表示されるようになり、実質的には閉鎖され、それを踏まえてBuzzFeed Newsが、サイトを実質的に閉鎖した理由について一連の騒動との関連性を聞いた取材に対し「コメントできない」としながらも、
いただいた意見はすでに関係省庁に配布し、一定期間公開した。国政モニターの目的は達成し、役目は終わっているとの認識
と述べたそうだ。「これまで公開していたヘイトスピーチや誹謗中傷も「国民からの意見・要望」と認識していたから一定期間公開していたのか?」ともツッこみたくなるし、「急に目的が達成され役目が終わったのか?しかもゴールデンウィークの真っ只中に?」ともツッこみたくなる。これ以上影響が広がらないように兎に角臭い物に蓋をしなくてならないという意図が滲み出ており、あまりにも不誠実だとしか言えない。
冒頭で紹介したBuzzFeed Japanの記事のコメント欄には「(ヘイトスピーチとか誹謗中傷だと一部の投稿を問題視するということは)言論弾圧をしろというのか」とか「どんな意見でも国民の意見であることに変わりはない」などという旨のコメントが複数寄せられている。彼らは表現の自由とは何を言っても構わないということだと曲解していると言わざるを得ない。公序良俗に反するとは一体どのような意味なのかを理解していないとしか言えない。このようなタガが外れたかのような主張を、「立法・司法・政治関係のご意見や、誹謗中傷、差別的な内容などは掲載しない」という規定があったにも関わらず、内閣府大臣官房政府広報室が運営するサイトに掲載されいたということは、内閣府大臣官房政府広報室やその担当者はそのような主張も誹謗中傷、差別的な内容には該当しないという判断だった、言い換えれば、内閣府大臣官房政府広報室やその担当者も、BuzzFeed Japanの記事にタガが外れたかのようなコメントを寄せている者と似たりよったりであるとも言えそうだ。
自分は、自分が住んでいる国の政府の中に誹謗中傷や差別を容認するような人がいるのは死んでも嫌だし、容認は言い過ぎだとしても、無頓着な人がいる事もけっして容認出来ない。日本では民主的な手順で政府を運営する者が選ばれており、もし政府が誹謗中傷や差別を容認するような状態であれば、日本人は誹謗中傷や差別を、積極的にではないかもしれないが、容認するような民族だ、というレッテルを他民族・他国民・他国政府から貼られかねない。
長野県サイトにヘイトスピーチ表現 投稿をそのまま掲載(朝日新聞)
三重県 「放火する民意の低い国」HPにヘイト意見放置(毎日新聞)
深刻なことに、同様の事案が政府以外でもあったことが報じられている。自分が見かけた記事は上記の2件だけだったが、他にも報じられているかもしれないし、報じられずに埋もれている件もあるかもしれない。若しくは国政モニターの件を受けて問題化する前に対応した自治体もあったのかもしれない。
このような案件が、少し本来のニュアンスとは異なるが”芋づる式”に報じられるのを見ていると、セクハラに関する適切な認識を著しく欠いていた財務省や一部の自民党議員・この期に及んで未だに適切な認識を持てない副総理兼財務大臣と同様に、中央・地方共に政治家・役人たちの誹謗中傷、差別に対する意識は著しく低い恐れがある、というか恐れではなく、一部の者なのかもしれないが適切な認識に欠ける者が確実に存在しているという事実が明らかになったと言えそうだ。
こんな状況でどうして、いじめやセクハラ・パワハラがなくなると期待できるだろうか。結局中央・地方に関わらず、こんな状況ではいじめ撲滅やセクハラ・パワハラを無くそうなんてことを政治家・お役所が主導するように言っていても全然説得力を感じられない。単なるスタンス、やってますアピール、政治家については得票の為の手段と思っている者もいるのだろう、と感じてしまう。