西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。一昨日の投稿でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。
クラブと言うと、派手な看板や目立つ外装のところも多い。渋谷円山町周辺のクラブは、周りに派手なラブホテルが多いこともあって、大抵「ここがクラブだよ!」と言わんばかりに派手な看板や外装でアピールしている。
自分もクラブに行き始める前はそんな派手な感じをイメージしていたが、イエローはマンションの様なビルの地下にあり、店名のアピールも一切なく、スナックや居酒屋のようなタイプのスタンド看板にまっ黄色のシートを貼っただけのものがぽつんと置いてあるだけだった。トップ画像は、記憶を頼りにその様子をコラージュで再現したものだ。場合によっては、営業しているのにそのスタンド看板すら出していない日もあった。
イエローは1991年12月にオープンし2008年にクローズした。閉店前の1週間は、ずっと関連パーティー、いや、もしかしたら閉店発表後毎週末関連イベントが行われていたかもしれない。それくらいファンが多く、イエローに思い入れのあるDJやオーガナイザーが沢山いた。特に最後の週末は凄まじく、6/21(土)がクローズパーティーで、自分も勿論遊びに行った。イエローは日頃から盛り上がると閉店時間を無視して土曜の夜から日曜の昼、場合によっては夕方まで営業が続くような箱だったが、クローズパーティーは当然日曜早朝で終わる筈もなく、パーティーは延長された。
ナイトクラブで遊ぶ人達は、終電で遊びにきたり、クラブに行く前にお酒を軽く飲んで、AM1:00頃から遊びにくる人が多いが、自分はエントランスで並ぶのが嫌いなので、大抵オープン直後、だいたい23:00頃から遊びに行くことが多かった。イエローのクローズパーティーなんて当然並ぶだろうからと早々に入場した。翌・日曜は仕事があったので朝6:00頃箱を出たのだけど、朝6:00の時点でもまだ入りきらずにエントランスに並んでいる人達がいて驚いた。
日曜の夕方に仕事を終えて、mixiだったがTwitterだったかFBだったかは覚えていないが、SNSを見たらまだパーティーが続いているというので、仕事終わりにまたイエローに向かった。月曜日も仕事だったので本当の最後の最後まではいられなかったが、土曜の22:00に始まったクローズパーティーは、月曜早朝6:00頃まで続いたらしい。
- SPACE LAB YELLOW - スペース・ラブ・イエロー -
- 西麻布「YELLOW」の1週間に及ぶクロージングパーティ、FRANCOIS Kら登場 - 音楽ニュース : CINRA.NET
- SPACE LAB YELLOW FINAL THE CLOSING PARTY -Pt.1/2- | clubberia クラベリア(Wayback Machine)
遊園地やデパートが経営不振による閉店を発表すると、懐かしむ客で盛り上がりを見せることはよくある。だが、イエローは決してそんな風にクローズパーティーが盛り上がったわけではなく、閉店発表の前も客は減ってはいなかった。
ではなぜイエローは閉店したのか。今は亡き公式サイトでの閉店発表には次のように書かれていた。
店舗が入っているセソーラス西麻布ビル側よりビル解体に伴う立ち退き要請があり、協議の結果2008年6月末日を持って退去することとなりYELLOWを閉店する運びとなりました。
建物自体がなくなる、それがイエローの閉店理由だった。しかし、イエロー閉店から約1年半が経過した2010年2月、イエロー跡地に eleven がオープンする。イレブンはイエローの流れを汲むクラブとされ、その話の通りイエローと似た傾向のテクノ/ハウスを中心としたイベントを行っていたが、そのイレブンも2013年5月に閉店することになる。
建物の取り壊しが延期になり、それでイレブンとして実質的にイエローが復活、取り壊しまでの間再び営業することになった、ということだったのか?と思っていたが、eleven 閉店後同じ場所に Double なる新しいクラブがまたしてもオープンした。それは長続きしなかったが、その後も Freq、Berg Tokyo、R Tokyoと数回に渡って、リニューアルなのか経営者が変わったのかは分からないが、セソーラス西麻布地下にはクラブが存在し続けた。2017年にナイトクラブとしては最後だった R Tokyo が閉店した後、今度は代アニLIVE BASE西麻布という、代々木アニメーション学院系のライブスペースになっていたようだ。
そのそして代アニLIVE BASE西麻布も、昨年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響なのか、Twitterアカウントは存続しているものの2020年後半以降ツイートはなく(リツイートはあり)、公式サイトはなくなってしまっていて、営業休止中、若しくは閉店したようだが、もし閉店だったとしても、今もまだセソーラス西麻布は取り壊されていない。取り壊しを理由にイエローが閉店してから、もう13年が経つのに。
どんな経緯で、イエローがセソーラス西麻布取り壊しを理由に閉店を発表することになったのか、はよく分からない。本当に取り壊す計画があって立ち退きを迫られたが、他の入居者などとの兼ね合いで計画がとん挫したのか、イエローの経営に何らかの問題があって閉店することになったが、そうは言わずに表向きは取り壊しを理由にしたのか。
ただ、何にせよクローズパーティーに参加したイエローファンの多くは、eleven がオープンした時点で「話が違うじゃん」と思った筈だし、eleven閉店後も続々とクラブが入れ替わり立ち代わりオープンし、そして2021の現在もセソーラス西麻布がそこにあり続ける現状を見て、その思いを強めていることだろう。
ここまでイエローのことを書いてきたが、この投稿のテーマはタイトルの通り「話が違うじゃん」である。10/1の投稿で書いたように、新たに自民党の総裁となり、衆院任期末まで暫定的に首相になった岸田 文雄は、総裁に選ばれた直後に「生まれ変わった自民党をしっかりと国民の皆さんに示す」と言っていたが、党人事も新内閣の大臣らも、全くこれまでと変わり映えしない面々がずらっと並んでいた。
更に森友学園問題、河井元法相や吉川元農水相などの汚職や公選法などについて、国民が納得するまで説明を続けると言いつつ、再調査はしないと言う。つまり彼らの言う説明とは、問題ないと言い張り続けて国民がウンザリして折れるのを待つ、という意味でしかなく、それでは全く「生まれ変わる」なんてのは無理、というかそもそも生まれ変わる気など毛頭ない、ということだ。
更に、国会召集の要求を拒み続けた前/前々首相同様国会軽視も変わらず、予算委員会での国会論戦も一切見せずに衆院選を始めるつもりのようで、その姿勢は、ボロが出るから予算委はやらない。有権者には出来る限り判断材料を与えずに選挙に入るのが得策、と思っているとしか思えない。つまり国民が納得する説明なんて全くするつもりがない、ということだ。
生まれ変わる? 国民が納得するまで説明を続ける? どちらも全く口だけでそんなことをするつもりはない。つまり「話が違う」でしかない。