PASMO払い戻し手数料がかかるようになるのを目前に、ほとんど使わなくなっていたPASMOを清算してきた、そんな記事が数日前に目に付いた。ちなみにほとんど同じ機能を持つJR東日本のSuicaは、以前から払い戻し手数料を徴収している。これまで払い戻し手数料がかからなかったPASMOも、3/12からはSuicaと同じように手数料がかかるようになる。
さよならPASMO。払い戻し手数料開始前に現金化 - Impress Watch
この記事の筆者は、以前はPASMO定期券を使っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークが常態化し定期券を買わなくなり、交通機関の運賃支払いにはApple Pay/Apple WatchのSuicaを使っている為、PASMOが不要となったそうだ。それで、PASMOには10年使わないと失効というルールもあるし、払い戻し手数料が徴収され始める前に清算しておこう、ということになったようだ。
日本は現金・紙幣/貨幣の信用度が高いため、世界的に見てキャッシュレス化が遅れていると言われていたが、それでもこの10年でキャッシュレス対応は結構進んだ。知り合いの中にはほとんど現金を持たないという者も少なくない。しかし自分はと言うと専ら現金派で、クレジットカードやスマートフォンを使ったキャッシュレス決済は基本的に使わない。自分が唯一使っているキャッシュレス決済方法は、10年以上前に作った無記名Suicaカードだ。
DOMMUNEでは、アナログ12インチレコードの新譜紹介番組・PRIVATE VINYL
LESSON という番組を毎月配信している。DOMMUNE主催の宇川
直宏、DJ・Licaxxxがレギュラーで、もう一人ゲストDJを交え、その3人に対して、渋谷の老舗のテクノ/ハウス系レコード店テクニークの代表・佐藤
吉春が、その月に入荷した新譜を中心に購入を提案する、という構成で、番組後半でLicaxxxとゲストDJが購入したレコードを使ったセットでDJを披露する。
紹介されたレコードは、観覧に来た客も購入できるし、配信を見ている視聴者もテクニークのWeb通販で当該レコードを購入することができるという、実演販売・通販番組としての側面もある。
番組初回から毎回出演してきたLicaxxxだが、2022年1月の配信は、直前に新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者となった為に出演を見合わせた。だが配信は見ていたようで、これまで同様に、紹介されたレコードをWeb通販経由ではあるが購入したそうだ。
そのことについて、先日配信された2022年2月の回で言及しており、DOMMUNEの現場で現金でレコードを買よりも、家で配信を見ながらWeb通販で購入するほうが財布のひもが緩んだと言っていた。彼女は日ごろ電子決済を主に利用しており、同番組の前に番組の為に現金を引き出してくる、とも言っていて、番組内で現金で購入する際には、財布の中の現金残高を考慮して購入するレコードを選ぶが、Web通販では手持ちの現金残高を気にする必要がないのが財布のひもが緩んだ理由だろう、と言っていた。
これは、キャッシュレスがここまで進む前からよく言われていたことで、浪費癖のある人は現金を使っている感の薄いクレジットカードを使わない方がいい、という話をよく耳にした。
また先月2月の配信では、テクニーク佐藤が、同店の常連客でもあるLicaxxxや、ゲストDJや宇川 直宏らの趣味趣向を勘案して、彼らの好みそうなレコードを紹介していることも話題になった。その話を聞いて自分は次のようにツイートした。
レコード屋とかバーとかの店員に好みを察知されてオススメされるのは嫌じゃないんだけどさ、ショッピングサイトのアルゴリズムにオススメされるのは抵抗があるんだよ。
— Tulsa Birbhum / タルサ ビルハム (@74120_731241) February 25, 2022
レコード屋とかバー店員とかは、その場でしか客を見てないけど、アルゴリズムはずーっとこっちを監視している気がして。#DOMMUNE
実店舗の店員は、常連客の好みを、その店の中の行動・会話・振舞いだけで判断するが、ショッピングサイトのアルゴリズムは、ユーザーのそのサイト内での購買行動・閲覧履歴だけでなく、直前に閲覧していたサイトや、検索履歴などからもおススメをしているかもしれない。GoogleやSNSアカウントと情報を共有している場合、もっと広くユーザーの行動を分析しているかもしれない。それはある種の監視のように感じられる為、そういうことはあまりいい気がしないし、されることに抵抗がある。
だから自分はクレジットカードやスマートフォンなどを使用したキャッシュレス決済をなるべく使いたくないのだ。何故ならそれらを使えば、どこで何を買ったのかの履歴が確実に残るからだ。個人がどこで何を買ったのか、ということ程プライベートな情報はなかなかない。例えば、レンタルビデオ店でどんなアダルトビデオを借りたかは、ほとんどの人が人に知られたくない情報だろう。休みの日にどこに行って何をしたか、だって、アダルトビデオのレンタル履歴程ではないにせよ、勝手に誰かに知られるのは抵抗がある、という人が多いだろう。
勿論、実店舗のレンタル店を現金のみで利用してもレンタル履歴は残るわけで、電子決済もそれと変わらないと認識する人もいるだろう。確かにその認識もおかしいとは言えないし、多くの場合、そのようなデリケートな情報は適切に扱われる。しかし、電子決済の怖いところは、それを決済方法のデフォルトにすれば、何かの分野に限らず、何にどれだけお金を使ったか、を全般的に誰かに知られるリスクが高まる、というところにある。それはつまり、生活の大半をさらけ出すようなものでもある。
そんなリスクを感じるから、自分はクレジットカードやスマートフォン系キャッシュレス決済のような、個人情報と強くひもづけられる電子決済を使いたくないし、チャージに手間はかかるが無記名Suicaという、個人情報とひもづけられる恐れの低いキャッシュレス決済しか基本的に使わない。勿論、まったくWeb通販等を利用しないわけではないから、決済方法がクレジットカードしかない場合には使うこともあるが。
サービスの運営者が適切に運用していても、その企業で働く個人が恣意的な理由で情報を悪用する恐れもあるし、不正アクセスなどによって第三者が情報を悪用する恐れだって確実にある。現にそんな事案は頻繁に報じられている。どんなデータでも、データがあれば確実に流出の恐れは付いて回る。つまりデータ流出を防ぐには、出来る限りデータを収集しない、蓄積しない、一元管理しないことが重要だ。
このように書くと、勝手に「データを一切収集するな、蓄積するな」と言っていると歪曲し、そんなのは非現実的で過敏すぎると、読解力が壊滅的なバカが上から目線で言ってきたりする。でも誰もそんなことは言っていない。利便性と比較して果たして見合うだけのリスクかどうかを考えるべきだと言っていて、見合うリスクと判断するならそのリスクをとってもいい。一切データを収集・蓄積するななんてこれっぽっちも言っておらず、利便性をウリに個人情報の一元管理をさせろと言ってきたり、シレっと個人情報を収集しようとする組織や人には注意する必要がある、という話である。
程度の差はあれど、多くの人にそんな感覚があるから、自民政府がゴリ押し、湯水のように予算をかけても、マイナンバーカードなるものは全然普及しないんだろう。
トップ画像には、クレジットカード端末 クレジット カード 支払い - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。