いわゆる共謀罪法案が国会で審議されそうだが、法案の内容によっては国家権力による監視を不当に強めすぎることが懸念されている。肯定派が慎重派に対して「後ろめたいことがあるから反対なんでしょ?」と意見するのをたまに目にする。これはあまりに短絡的な考え方ではないだろうか。犯罪とは言えない行為での不当逮捕は隣国では現実に起きている。過去の日本でもそれは体制への反対行為・反論を封じ込めるのに利用され、軍国主義や戦争に向かってしまった原因の1つだった。
他の地方がどうなのかはわからないが、東京近郊では実感として国家権力の濫用では?とも思える事態に遭遇することがある。警察官による職務質問を事実上拒否できないことだ。渋谷や新宿など繁華街で突然、警察官に止められ荷物検査を要求されることがある。ナイフ所持などの銃刀法違反や違法な薬物の所持を取り締まる目的なのだろうが、荷物検査に応じるかどうかは任意のはずだ。しかし実際は断ることができない。「任意ですよね?」と断ろうとすると「何も無いなら見せても問題ないですよね?」とか言い始める。「約束があるので急いでいる」といっても「すぐ終わるから」と返ってくることが殆ど。任意という意味を理解しているのだろうか。「仕事に遅れる」と伝えると断ることができる場合もあるが、それでも「すぐ終わる」の一点張りを続ける警察官もいる。実際に警察官とそんなやりとりをしていて、見たかった映画の時間に間に合わなかったこともある。その日の予定は台無しだった。テレビの○○警察24時的な番組ではまるで”犯罪を見向くの能力”が警察官にはあり、犯罪者だけを狙い撃ちして職務質問しているかの様な印象を与えるものが多いが、現実は強面やおどおどした人など、普通の人よりはやや怪しそうな人に手当り次第に声をかけるだけなのだろう。自分もいわゆる犯罪者顔に見られがちで損だなと思う。
今ですら警察官(国家権力)による”任意”を拡大解釈した”強要”がまかり通る状況なのに、拡大解釈が可能な内容で共謀罪を成立させてしまったら、どんなことが起きるだろうか?と懸念してしまうのはおかしいだろうか。もちろん共謀罪の施行は防犯に役立つという側面がある。しかし内容をしっかりと検討しなければ不必要に犯罪者を生み出し、最悪、言論統制のような事態を引き起こす可能性もあるということも考えてみてほしい。現政権にはそのような意図がなくても法律は一度制定すれば政権交代後も効力を失わない。どんな人が権力者になっても悪用できないようにしておかなければならない。