テレビCMや広告などでよく見かける、○○無料という謳い文句。無料というのは消費者にとって最も魅力的に見える謳い文句の一つである。全部が全部と言うわけではないが、実質的には無料と言えない物まで”無料”という看板を掲げている場合も多いように思う。度が過ぎている場合はまるで騙そうとしているようにも見える。そのような広告に飛びついて騙される消費者にも問題はあるかもしれないが、○○無料という表現にもう少し節度が必要なのでは?とも思う。
無料と一口に言っても様々な場合がある。もっとも無料という言葉のニュアンスに近いと感じるのは、消費者が対価を支払う必要が全くない場合だ。例えば動物園・植物園などの入園無料。これは一切お金が掛からない例だ。園内で飲み物を買ったり、お土産を買えばお金が別に掛かるが、それは必ず購入しなくてはならないものではない。「お土産購入が入園無料の条件です」なんてことだったら話は別だが、公立の施設ならそのようなケースはほぼない。
無料を謳う場合で最も多いのは、例えば”送料無料”のような、実質的には無料ではなく他に支払う代金にその分を含んでいるというケースだ。送料無料で説明すると、送料は無料なのではなく商品の代金に含まれているわけで、本質的には”送料無料”でなく、商品の価格は”送料込み”ということである。このような無料表示は人によってそんなに気にならないかもしれないが、個人的には若干違和感がある。というのは、消費税の内税表示で”消費税無料”とは言わないからだ。どう考えても”消費税込み”と表現する。送料無料と同じような表現で”送料当社負担”というような場合もあるが、これも実質的には商品の売上等の利益から送料を捻出しているのだろうから、”送料込み”の言い換えであると言えると思う。
この送料無料と似ているが、同じように見えて騙そうとしている感がより強いと感じるのが、”1個買うともう1個無料”だ。このケースは実質的には2個分の価格を1個の価格として表示し、あたかも半額で販売するかのように感じさせるという手法だ。”2個買うともう1個無料”とか”5個買うと1個サービス”などとも似ているが、実際にはそれらより1個買うともう1個無料の方が騙している感が強い。というのも”2個買うともう1個無料”は、1個だけ買うなら設定された1個の価格で販売されるので、1個の価格設定が実際に意味を持っている。しかし1個買うともう1個無料の販売方法の場合、販売される最小単位は2個で、実際には1個で販売されることはない。1個の価格は見せかけでしかなく、その価格は実質的に2個の価格だ。”1個買うともう1個無料”の販売方法を行う前に、1個での販売を実際にしている場合や、”1個買うともう1個無料”を”今だけ!”などと期限を区切っていれば、2個分の価格を1個の価格に見せかけているとは言えない場合もあるかもしれないが、今だけ!の”今”が長い期間続いていて、実際には”今だけ!”とは思えない場合などもあり、個人的にはこの手の販売方法はどうしても2重価格表示を疑ってしまう。
だいたいどの広告の”無料”も、実際には有料だが誰かがコストを負担して無料になっているもので、その負担を誰がしているのかを考えてみた方がいいだろう。上記のケースのように実質的に自分(消費者)が負担しているという場合は騙された気分になるだろう。また、送料無料の場合などは、消費者による負担+運送業者が不当に安く請け負わされているなんてこともあるかもしれない。入園無料の公立動物園だって運営に税金が投入されていることから考えれば、厳密に言えば間接的に料金を支払っていると言えるかもしれない。ここで示したケース以外にも様々な場合が考えられるので、○○無料という謳い文句に飛びつく前に、その裏側にあるコストについて一度立ち止まって考えてみることが必要なのかもしれない。