文部科学省が14日に公表した学習指導要領改定案の小中学校社会科で、竹島・尖閣諸島を「我が国固有の領土」と初めて明記したことが話題になっている。個人的には文中の”固有の”という表現にはやや違和感を感じるものの、竹島や尖閣諸島について日本に領有権があると主張していると教えることには概ね異論はない。ただ尖閣諸島に関して「領土問題は存在しない」という方針にはかなり疑問を感じる。毎日新聞によれば、文部科学省は「歴史的にも国際法上も正当な我が国の領土について正しく理解してもらう」ためと説明し、竹島については「発達段階に応じて、平和的解決に向けた方策を取り上げる中で相手側の主張を扱う可能性はある」と説明しているが、尖閣諸島については「領土問題は存在しないので主張を並列で取り上げるのは適切ではない」として授業で中国の主張に触れることを認めないとする見解のようだ。
個人的には、竹島・尖閣諸島・北方領土・沖ノ鳥島などは全て日本の抱える領土問題と考える。まず領土問題の概念が”日本の領土に関する諸事情”であるとすれば、日本の見解と異なる見解を他国が示せば、どちらの見解に整合性があるかは別として、見解が対立した時点で領土問題があると言えるのではないだろうか。日本が実効支配している尖閣諸島について「領土問題はない」とするならば、ロシアが実効支配している北方領土について「固有の領土なので領土問題はない」というロシアの主張も受け入れなければならないと思う。竹島や北方領土など他国が実効支配している時は相手側の主張を扱うことを容認し、自国が実効支配していたら他国の主張を扱うことは認めないという、自国にだけ都合のよい国の姿勢を、自分は子供に胸を張って教えたくない。
自国の領土を守ろうということ、そのために領土について子供に教えることには賛成だが、だから領土に関する他国の主張は教えてはならないというのはおかしい。その2つは全く別の問題で、1歩間違えば、自分の都合だけしか考えない排他的な思考を育ててしまう可能性があると思う。他国の主張が間違っている・おかしいということが、もしも絶対的な事実だとしても、その主張を知らなければ批判することもできないし、間違っているかどうかも判断できない。他国が日本と異なる主張をしていることを子供に教えてはならないということは、「現政府の見解は絶対で、間違うことはあり得ないので、それについて国民が考える必要はない。だからそれを信じて疑わず妄信するような子供を育てろ」と文部科学省や政府が言っているように聞こえてしまう。それでは太平洋戦争以前の教育に逆戻りではないだろうか。