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「幼稚園児以下だ」は暴言か


障害者雇用、職場でパワハラ「幼稚園児以下」と暴言も
TBSニュースが11/6に報じた記事の見出しである。障害者雇用枠で採用された知的障害のある男性が、指導役の女性から暴言を受けたとして、会社と女性に対して賠償を求める訴訟を起こした件で、11/6に和解が成立したという記事の見出しだ。記事には
 女性が「幼稚園児以下だ」という表現を暴言と認めた、会社も責任を認め、“今後は知的障害者の特性を理解し、これを踏まえた職場環境を用意すること”を約束した
とある。 男性は「私みたいな障害者にも働きやすい環境にしてほしいというのが私の願いです」とコメントしており、恐らくパワハラに相当する行為が実際にあったのだろう。また男性の、
 『幼稚園児以下』もそうですし、『バカじゃん』とか、『いつまでたったら仕事を覚えるんだ』とか言われた
 とりあえず耐えて、我慢し続けて働いていたので
などのコメントも紹介されており、記者は“幼稚園児以下”“バカでもできる”という表現を添えており、それらが暴言に当たるということを示唆しているように見える。


 「幼稚園児以下だ」「バカでも出来る」は、暴言に当たる懸念の強い表現であることに間違いない。適当な根拠なくこのような表現を相手にぶつければ確実にそれは暴言に当たるだろう。しかし、絶対的に暴言に該当するかと言えば、自分はそんなことはないと思う。
 例えば、片山地方創生担当大臣は、国税口利き疑惑に関して(週刊文春の記事)、懸案になっている税理士男性に秘書用の国会通行証を与えていたり、男性が地方議員のパーティーで片山の代理として挨拶しているにも関わらず、「男性は私設秘書ではない」と言い張っているし、桜田五輪担当大臣は、11/6の国会審議の中で適切に質疑に対応できなかったのは「事前通告が全然なかったから」と翌日の会見でコメントしたが、今日・11/9に実際は事前通告はあったとしてこのコメントを撤回した。彼らのようなあまりにも不合理な発言を繰り返す人を「幼稚園児以下だ」と評しても、そう評することが妥当か否かは評する場や状況にもよるだろうが、そう評しただけで直ちに暴言に当たるとは思えない。「もっとマシな説明はバカでも出来る」と表現しても同じではないだろうか。
 何が言いたいのかと言えば、冒頭のTBSニュースの件は、理不尽なパワハラ行為が実際にあったのだろうからそれを擁護するつもりはないが、場合によっては「幼稚園児以下だ」「バカでも出来る」という表現を用いても暴言・パワハラとは言えない場合もあるのではないか、という事だ。

 自分は以前「幼稚園児以下だ」と思える後輩の世話をまかされた事がある。彼は何度も同じ注意をしても一向に改めようとせず、自分はかなりイライラされられた。勿論最初から「幼稚園児以下だ」と思ったわけではなく、彼が同じ失敗を何度も、しかもその度に同じ注意をしているのに繰り返し、一向に作業方法を変える傾向が見られなかったからそう感じた。個人でする仕事ならば放っておいてもよいのだろうが、チームでやる仕事、分業する仕事の場合、一人の失敗は周囲に負担をかける。彼が同じ失敗を繰り返す度に本来する必要のない残業が増え、しかも世話役という事で自分も叱られるし、他の人から嫌な顔をされる。面倒を見きれないと上司に相談しても「長い目で見ろ」という建設的でない返答しかない。そんな状況では「幼稚園児以下だ」という嫌味の一つも言いたくなるのもある意味当然ではないのか。
 自分の場合は更にイライラを募らせ、その後輩の尻を思いっきり蹴るという暴力、最終的に仕事をさせないという状況にまで至ってしまい、それについては確実に間違った行為、パワハラと言われても仕方がないと今は悔いているが、一方でそのような行為に至った経緯にも目を向けて欲しいとも思う。自分の失敗ではないのに上司から監督者としての責任を問われるが、その責任分の手当等、見返りなど何もない。しかも後輩の失敗によっていらぬ残業まで強いられ、同僚からも「お前の所為だ」と嫌な顔をされる。後輩にある程度前向きな面が見えたら、面倒を見るというやりがいもあったのだろうが、ドライな言い方をすればデメリットが上回った為にそうは思えなくなった。
 自分の過去のパワハラ行為を正当化するつもりは一切ないし、どんな場合でもパワハラは否定されるべき行為であることに違いはない。しかし、パワハラを生むのは個人の性質だけでなく、中間管理職らに対してその責任に見合うだけの見返りを与えていないなど、労働環境もその一因になっている事を理解して欲しい。長時間労働や内容に見合わない低賃金などストレスフルな労働環境が改善すれば、ストレスに起因するパワハラ行為についてはそれに比例して減るのではないだろうか。


 「実習先から失踪し不法就労か ミャンマー人9人逮捕」(テレ朝ニュース)という、ミャンマー人が就労資格がないにも関わらず、港区の飲食店で働いて逮捕されたという報道に対して、
  • 彼らは技能実習生として来日したが、実習先の建設会社などで同僚から嫌がらせを受けて失踪し、飲食店で働かざるを得なくなったという経緯
  • 飲食店が時給900円という、最低時給以下で雇っていた事
などを、不法就労以上に注目すべき、問題視するべきという主張を、ツイッターでしばしば見かける(テレ朝ニュースはそれらの要素にも触れている)。奇しくもどちらの件も労働環境に纏わる話で、一面だけに注目すると適切な対処が行えなくなる恐れがあるという共通点のある話だと自分は思う。

 余談だが、このような事を書くと今度は「マスゴミは偏向」なんて極端な事を言う人が出てきそうだが、各メディアが取り上げる側面も決して間違い、誤報、誇張ではなく、そのメディアなりの見解を示しているに過ぎないのではないか。ネット普及以前はそれに対して異論・反論を示すことは容易ではなかったが、今は個人がSNSでそれを示す事も可能だ。「マスゴミが偏向」していると言う話が正しければ、それ以上に偏向している個人がSNS上には大勢いる。「マスゴミは偏向」と言っている人も実は、マスコミが強調したい側面とは別の、自分の切り取りたい一面だけを強調しようとしているという矛盾がある 

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