人気ファッション誌Vogueで掲載された芸者風の写真に起用されたモデルが「日本の文化を盗用している」と批判され、ツイッター上で謝罪する事態になったという記事をハフィントンポストが掲載している。掲載されている写真は欧米人から見た日本といったような写真で、モデルが着物のような衣装で・酒樽や和風な祠、鹿威し、力士などと共に写っている。この騒動の背景には、2012年にもこのモデルがネイティヴ・アメリカン風の髪飾りを付けて下着ブランド・ヴィクトリアズシークレットのショーに出演し、同じように文化の盗用という批判受けているということもあるらしい。批判は単純に日本文化の盗用ということではなけではなく、厳密にはVogueがこの写真が掲載された号をdiversity issueとしているのに、日本での日本的な撮影に日本人でもアジア人でもないモデルを起用したことに対しての批判もあるらしいが、個人的には日本人以外が日本的な格好をすることを認めないのも、diversity=多様性を認めないということにならないだろうかとも思う。
個人的な意見を述べると、この程度で文化の盗用ならば、日本食として定着しているラーメンや餃子は中国由来の食べ物であり、文化の盗用とされてしまうのではないか、日本人が中国っぽさを演出をする際に、清時代の辮髪やチャイナドレスでそれを表現することも許されなくなってしまうのではないだろうか。というか世界中でスタンダードになりつつある服の型式はヨーロッパ由来のものが殆どで、日本人は和服以外の服装をすることが出来なくなってしまうとさえ思う。
今回の騒動が起きたアメリカでは、2016年にディズニーがハロウィンで販売したコスチュームに対して、ニュージーランドの先住民マオリ族が抗議の声をあげ、マオリ族が名を連ねるマオリ党のマラマ フォックス氏が、「他者の文化の信仰や歴史を食い物にして、利益を得ようとしている」と批判したらしい。しかし今回の件と決定的に異なる点が1つある。それはこの件に関して批判しているのは殆どが日本人ではないということだ。個人的にはマオリ族の件にも賛成しかねるが、アメリカでは映画等エンターテインメント産業に於いて白人だけが優遇されているように見える状況があることや、マオリ族が多民族社会におけるマイノリティーという立場であるということを勘案すれば百歩譲って仕方がないとも思える。だが今回の件に関して日本人である自分からしてみれば「余計なお世話だ」としか思えない。日本人もアメリカではマイノリティーかもしれないが、この程度で文化の盗用などと言い出したらキリがないし、日本文化の扱いに対して不満があれば日本人は自ら主張する。
和食・寿司が世界的に流行し、各国でアレンジされた寿司が多く出回り、日本がオリジナルの寿司を正しく知ってもらおうと”すし知識海外認定制度”なるものを始めたら、海外では、日本だって中華料理・フランス料理・イタリア料理などをかなりアレンジしており、それぞれの国での料理との違いを理解していない日本人も大勢いるじゃないかという反発もあった。自分はそれもそうだと感じたし、確かに文化を守るにはある程度伝統を重視することも必要だが、文化を大切にするあまりに厳格に不可侵なものとし過ぎたら、その文化の発展自体を阻害することにもなる。少なくとも日本文化はそんなに閉鎖的ではない。様々な考え方の人がいるとは思うが、日本では外国人から見た目線で(視聴者である日本人が)日本文化を再確認するなんてテレビ番組が流行っているし、それを楽しむことができるということからも、この件での批判がいかに無意味なことかがわかるだろう。