トランプ大統領がイスラム系7カ国について入国審査厳格化、実質的には原則入国禁止を大統領令で指示したことを受けて、ANA・JALが該当国籍を持つ人のアメリカ行き便への搭乗を基本的に拒否するという方針決定をした。これに対して一部から「トランプの(人種差別的な政策の)片棒を担いでいる」という批判がある。少し短絡的な批判だとは思うが、そう見えてしまうのも分からないでもない。
該当国籍を持つ人をアメリカまで乗せても入国を拒否されれば、航空会社がアメリカ国外への退去に掛かる費用を負担しなければならない恐れもあり、そういった混乱を避けるための措置として上記のような対応を発表したという経緯を考えれば、ANA・JALの姿勢は苦渋の決断だったと考えられる。ANA・JALがトランプ大統領の政策を積極的に支持しているようには見えず、「片棒を担いでいる」という批判は言い過ぎかもしれない。しかしANA・JALの方針決定に関するニュースを見ると、報道機関の伝え方が良くないのか、実際に両社がそのようなスタンスなのかは定かではないが、いささか事務的なイメージが強く、それがトランプ大統領の政策に即座に同調する対応を示した冷たい企業という印象に見えなくもない。いくつかの記事には両社はウェブサイトでも説明するという趣旨の記述があったが、ニュースが発表されてから既に4日が経過しているが、ざっと確認したところ両社のウェブサイトにそれらしい記述、プレスリリースは見当たらなかった。いくつかの企業がトランプ大統領に槍玉にあげられているのを見て、余計な摩擦を生まないために、トランプ政権の政策に対応するのは本意ではないというニュアンスで発表することを避けているのかもしれないが、それが一部の人には「片棒を担いでいる」ように見えるのだろう。
多くの国の首相・大統領たちがトランプ大統領のこの政策について批判、不快感を表明しているのにもかかわらず、わが国の首相は日本企業にも影響があるにも関わらず「コメントを控える」姿勢をとっている。この姿勢は余計な事を言わないのは賢いとも見ることができるが、アメリカとの関係を重視しているので、その他の国が差別されても目をそらします。という冷たい姿勢のようにも見える。悪く言えばアメリカが何をしようとも日本は言いなりです、文句も言いません。と表明しているようにも見える。今はまだその沈黙を守る姿勢が批判される事態にはなっていないが、今後の状況次第ではANA・JALが「トランプの片棒を担いでいる」というレッテルを貼られたのと同じように批判されるかもしれない。そのうち慌てて姿勢を変えるかもしれないが、今後もトランプ大統領が方針を変えず、もしくは強化し、それに対して安部首相が姿勢を変えるタイミングを誤れば批判を受けてしまう恐れもある。日本国内から首相への批判が起きたとしても仕方ないで片付けられるかもしれないが、他国からこのような批判を受けることになれば、彼を首相に据えている日本全体が差別を助長していると思われかねない。日本はアメリカの顔色だけを伺っているとは思われないような振る舞いを首相に期待したい。