スキップしてメイン コンテンツに移動
 

冗談


 3年前に関西学院大で外国人非常勤講師が英語の授業中に、女子学生の出身地が福島県であることを確認し、教室の照明を消して「放射能を浴びているから電気を消すと光ると思った」などと発言していたことが明らかになった。この出来事の後、女子学生は大学を休みがちになり、単位取得に支障をきたし、昨年大学にこの事情について相談するに至ったようだ。非常勤講師は冗談のつもりだったということだが、個人的には冗談で済まされるとは思えない出来事だ。今日は他にも声優の水樹奈々さんに対しSNSで「ぶっ殺してやる」と発言した男が威力業務妨害で逮捕されるという事件も報じられている。こちらも発言した男は冗談として許される範囲という認識が多からずあったのだと思う。どちらの件も深い人間関係が出来上がっている間柄での出来事だったら冗談で済んでいたのかもしれない。


 これらのような笑えない冗談ほど性質の悪いものはない。ただ、笑える笑えないは人によって判断が分かれるものでもある。だからこの手の話がなくならないのだろう。結局重要なのはバランス感覚だ。日本以外の社会で生活したことがないので、あくまでイメージでしかないが、ポリティカルコレクトネスに日本より神経質なアメリカでは冗談についても日本よりも厳しいかもしれないし、風刺としてのブラックユーモアに寛容であるイギリスでは日本よりも冗談についても寛容かもしれない。しかしどの社会でも相手を明らかに傷つけ、追い込むような表現は冗談として認められないだろう。

 東日本大震災の時に感じたのは、あの地震で被害を受けた人の中にも、その受けた被害の度合いによって大きく感覚の差があるということだ。津波や福島第二原発事故の影響を大きく受けた東北だって、太平洋側か日本海側かのような地域差はあるだろうが、もっと小さな場面でもその差を感じさせられた。あの地震があったのは金曜日の午後で、多くの帰宅困難者が出た。その地震直後の週末は関東でも電力不足、安全確保が出来ていないなどの理由で電車が動かず、製油所の被害などでガソリンも売切れになり自動車やバイクでの移動にも不安があった。週明けの月曜は動き出した電車もあったが、完全復旧には程遠い状態でかなり混乱しており、自分が上司に職場に行けないと伝えると、彼は職場が契約していたガソリンスタンドがガソリンを確保してくれていた為、彼自身は社用車で通勤できたことを前提に「どうにかしておまえも来い」と言ってきた。結局自分はそれを無視し職場には行かなかったのだが、地震から3日が経った週明けの月曜も不完全な交通状況下で通勤した人たちの中から、また帰宅困難者が出る事態になっていた。この件は冗談とは直接的な関係はないかもしれないが、相手の事情・状況を考えずに自分の感覚だけを優先して発言することが如何に愚かなことかという点では共通する部分もあると思う。教師と生徒、上司と部下など一方から反論し難い環境に於いては特に注意が必要なのではないだろうか。

このブログの人気の投稿

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

大友克洋がAKIRAで描いたのは、2020東京五輪だけじゃない

 2020東京五輪招致、そしてそれが予定通りに開催されなかったことが、見事に劇中の設定と同じであることで知られる、大友 克洋のマンガ/アニメ映画・AKIRA。3巻の巻末にある次巻の予告ページでは、劇中で発行されている体裁の新聞がコラージュされていて、その中に「WHO、伝染病対策を非難」という見出しがあり、コロナ危機をも言い当てていた?という話も話題になったことは記憶に新しい。