車用ファブリーズのテレビCMの、イカ焼き・ハンバーガー・たこ焼き・吸殻の匂いについての「この”最悪の臭い”を消せるか」という表現がどうも気になる。ファブリーズは少し前にくさやを扱ったコマーシャルでもくさやの扱い方についてその賛否が話題になっている。このような表現については個人による感じ方の差もあり、今回の件に関しても車内が舞台なので、そこに残る”残り香”についての表現と受け止めれば過敏に反応しすぎかもしれないという気持ちもあるものの、吸殻の臭いについては仕方がないとしても、コマーシャルでは食べ物をまだ食べる前の状態が描かれており、残り香とは認識しづらく、やはり一般的な食べ物の匂いを”最悪”と表現することは、好ましいとは言い難いと思う感覚のほうが強い。
くさやの件は生産者らが抗議する気持ちもわからないでもないが、数ある食べ物の中でもその匂いの強烈さ加減では日本有数の食べ物でもあるし、くさやのその匂いの強さは特徴の1つでもあることから、食べた後もファブリーズがあれば匂いを気にする必要がないという好意的な見方もできるのではないか?とも感じた。例えば餃子は美味しいがにんにくの臭いが気になるという人たちに向けて、口臭対策商品ならそれを緩和できると宣伝するような場合、表現の方法にもよるが、餃子は臭いから食べるなと言っているのかと受け止める人は少ないと考えれられるのと似た感覚だ。しかし今回の件では、イカ焼き・ハンバーガー・たこ焼き・吸殻の匂いをハッキリと”最悪の臭い”と言ってしまっている点が大きく異なる点だと思う。吸殻の臭いについては仕方がないと書いたが、嫌煙家が増え、煙草=悪という意識が広まっているとしても、吸殻の臭いが好きという人はあまりいないかもしれないが、煙草が好きな人からすれば煙草の香りをコマーシャルのような場面で”最悪”と表現されることはあまり気分のいい話ではないと思う。ましてやイカ焼き・ハンバーガー・たこ焼きが好きな人が同じように感じるのは当然だと思う。
コマーシャルでなぜこんな表現をしてしまうのかといえば、強い表現・過激な表現の方が人目を惹きやすいということがあると思う。広告収入を目的として閲覧数を上げる為に、検索サイト対策だけを重視したDeNAの問題で、大きく取り上げられた「肩こりの原因は幽霊の場合も」なんて記事もそんな人間の感覚をついたものだと思う。去年のアメリカ大統領選の最中、広告収入目的でマケドニアの青年たちが嘘ニュースサイトを作り、人の目を惹くことだけを考え、過激な嘘をばら撒いたのも同じような事件だろう。今回のファブリーズのコマーシャルは嘘とまでは言えないが、”最悪の臭い”なんて言わずに”最強の臭い”でよかったんじゃないかと思う。
テレビ番組やコマーシャルについては過剰な演出の許される範囲について、演出として妥当なのか捏造なのかなどの問題が時折起こるが、特に健康・美容・清潔に関する商品のコマーシャル、健康などに関する情報を扱う番組は、嘘とまでは言えなくても、人の不安を必要以上に煽り、そこに付け込むような手法の演出がここ数年多く、年を追うごとに増えているように感じる。全てが問題とは言えないかもしれないが、そろそろ何らかの歯止めをかけるべき頃合いかとも思う。見る側も落ち着いて惑わされないように見るようにしなければならないだろう。
※追記
3/30に同じコマーシャルをテレビで見かけたところ、「最悪の臭い」が単に「臭い」に変更されたバージョンが放送されていた。冒頭でリンクしていた販売元の公式Youtubeチャンネルでも「最悪の臭い」バージョンは既に公開停止となっている。