姫路市の私立認定こども園(保育園)が、46人の定員に対して22人多い68人の児童を市に隠して受け入れ、その68人に対して40人分の給食しか用意していなかったり、定員オーバー分の22人に対しては独自の保育料を設定したり、補助金を受けるために10人の保育士しか勤務実態がないのに13人と申請していたりなどの事態が発覚し波紋を呼んでいる。大手メディアは、それらの問題の中でも虐待の恐れが強い”少ない人数分の給食”を最も大きく取り上げている傾向が強い。また経営者が「給食を余らせると勿体ないと思った」という趣旨のコメントをしていることも取り上げられており、個人的にはおかしな方向で話が盛り上がらなければいいなと感じている。
この保育園については報道が事実ならば、糾弾されて当然だと思う。メディアが”少ない人数分の給食”を大きく扱うことも、いくつかの要素の中で最も重大なことだと思うし、視聴率などの為にセンセーショナルな部分だけを強調しているとも言い難い。ただあまりにこの部分だけを強調し過ぎると、この保育園の経営者の「余らせると勿体ない」というコメントに過剰反応した他の保育園経営者が、クレームをつけられることを恐れ、食品ロスが問題になっていることに反して、必要以上に給食の発注量を増やすなんて結果に繋がらないかが心配だ。多くの学校・企業などが、クレームが妥当か不当かに関わらず、クレームを付けられること自体を避けるために先回りして必要以上の対応をするという傾向が、現在の社会に蔓延しているように思えるからだ。
ネット社会になる以前も、カルピスが黒人をモチーフにしたマークを変更するに至った件など、おかしなクレームはあったと思う。しかしネット・SNSが社会に定着して以来、匿名で言いたいことを言えるというその特徴を利用し、自分勝手で過激な主張をする人が増えているように思う。それを目にした人、特に一部の中高生など未熟な若者が”それOKなんだ”と勘違いし、更にそういう傾向が強まるという悪循環が生まれているようにも思う。結局子供は大人の鏡なのだ。そんな人々はしばしば質の悪いクレームをつけることがある。企業にとってクレームは内容を問わずつけられた時点で既にマイナスイメージだし、対応自体にもコストが掛かる為、クレーム自体を避けようとすることは理解できる。しかし不当なクレームに対して弱腰に見える企業の姿勢はそれを増やす要因の1つになっているとも考えられる。勿論正当なクレームには前向きに対応してもらいたいが、おかしなクレームについては健全な社会を維持するためにも毅然とした態度で臨んでもらいたい。