さすがに昨日の報道関連番組は総時間のおよそ80%ぐらいが森友学園・籠池氏の証人喚問だったように感じられた。普段は国会中継を積極的に見ることはないのだが、昨日だけは衆参両方の中継を録画し全て見た。まず感じたのは議員によって質問力にかなりの差があるということだった。自民・公明や民主以外の少人数政党の議員は持ち時間が少ないこともあり、印象に残るような質問をした議員はほとんど居なかった。中には「その質問いる?」と思ってしまうような場面も多々あった。印象に残ったのはやはり与党・自民党と野党第一党の民進党だった。最も質問が上手かったと感じられたのは民進党の枝野議員だ。籠池氏が自民や維新に、彼曰く「はしごを外された」と感じていることもあるだろうが、順序立てた枝野議員の質問と、それに対してテンポよく答える籠池氏がそう感じさせたのかもしれない。個人的には枝野議員と自民・葉梨議員以外は時間を余計に消費しているだけにも感じられた。ただこの2人の質問の前提に午前中の参議院での喚問があったとも言えるので、それ以外が全て無駄で必要ないということではない。
今まで頑なに籠池氏の国会招致を拒んできたのに、籠池氏の安倍首相からの100万円寄付発言を受け、「総理を侮辱」「国家に対してけんかを売るってことがどれだけ大変なのか分かってない」などと一転して参考人招致ではなく、偽証罪が適応されることもある証人喚問に踏み切った自民党。まず上記のような証人喚問に踏み切った理由自体にも違和感を感じるが、喚問で自民党が衆参両院で籠池氏に対して高圧的な接し方をしていたことが自民党のこの件に対する姿勢を表していると思う。しかも一応森友学園問題の本筋とされている国有地取得に関して質問でほとんど触れなかったことは、まず偽証罪のあり得る証人喚問で籠池氏に圧力をかけて黙らせよう、それでも黙らないなら偽証罪に問えるような言質を引き出そうという雰囲気が露骨に感じられてしまった。
今まで籠池氏は整合性に欠ける、ウソとも言えるような言動を散々しているのに、安倍首相からの100万円寄付など自分たちにとって都合のよい話は、全面的にではないにせよ信用してしまっているかのように見える野党の姿勢にも疑問を感じないではないが、野党の中でも民進の質問姿勢はある程度そういう態度からは距離を置いているように見え、籠池氏、首相夫人らなどの誰が真実により近いことを言っているのかを追求しているように見えた。自民党の籠池氏が嘘をついていることを前提として高圧的に話を進めようとしていたこともそう感じさせた要因の一つだ。今回の喚問は結果が出たと言えるようなものではなく、証人喚問という厳しい状況にも関わらず籠池氏が、嘘か本当かはわからないが、堂々と発言していたことで、現状では彼の発言の信憑性に大きく疑問符をつけることができなかったこと、自民党議員が彼の嘘を明確に証明したとは言えないことなど、自民党が参考人招致をすっ飛ばして証人喚問に踏み切ったことは失敗だったと思う。
「総理を侮辱」したから証人喚問 というような発想を生む空気が自民党内にあることは、首相の”首相夫人が名誉校長だからといって、役人が恐れ入りましたとはならない”と言う発言、つまり所謂役人らの忖度を否定していることと大いに矛盾しているように思える。要するに国有地の問題にしても、認可の問題にしても、首相や首相に近い政治家の直接的な関与がなかったとしても、彼らに過剰に配慮するような動きがあったから異例尽くしの払い下げ・認可適当判断などがあったように思えてならい。今まで明るみになった数々の状況の1つ1つに関しては、それに関わった役人・政治家らは違法でもなく、不適切とまでは言えないのかもしれない。しかしそれらが重なり、森友学園という一学校法人だけに異例尽くしで便宜が図られるようなことが起こったことは事実だ。ならば首相・政府与党は「問題はなかった」で強引に幕引きを計ろうとするのではなく、積極的に事実究明をし、今後このような事態が起こらないように対策を議論するべきだ。