国連の核兵器禁止条約へ向けた会議に、核保有国の不参加を理由として、日本も参加しないとしたことが話題になっている。当初岸田外務大臣などは会議に参加し、唯一の被爆国である日本の立場を明確にしていくという態度を示していたが、一転して「核保有国と非核保有国の対立を深めかねない」などとしてこのような姿勢が表明された。一連の流れから考えると、核廃絶に消極的な態度を示しているトランプ大統領・同盟国アメリカから、この方針決定に関して何らかの関与があったのではないかという疑念を感じてしまう。この会議へはフランスやアメリカなどの核保有国が不参加を表明している。アメリカのヘイリー国連大使が会見で「議場にいる人たちは、私たちが直面している核の脅威を本当に理解しているのか」と発言し、北朝鮮による核の脅威を理由に現実的ではないと核禁止条約やその為の会議自体を批判している。この姿勢は他の会議不参加核保有国も同じようだ。
核保有国は北朝鮮などの核の脅威を理由に核廃絶は現実的でないとしているが、まず今回の会議に参加する100以上の非核保有国からすれば、アメリカの核の傘に守られている立場の日本に住む自分が言うのも変かもしれないが、北朝鮮に限らず国連の常任理事国のような核保有国の核だって十分脅威である。だいたい北朝鮮が核を欲する理由は、朝鮮戦争以来、対立しているアメリカが核を持っていることに対しての怯えからだと思う。または今まで大きな後ろ盾だった核保有国・中国との間に溝が生まれたことなどにも理由があると思う。要するにヘンリー国連大使が言う「直面している核の脅威」は彼らが核を保有していることによって引き起こされているという側面もあると思う。
核保有国が核兵器禁止条約へ向けた会議に参加しないことが最も残念なことだが、それに対して批判的な態度を被爆経験国である日本が示せないことは、日本国民としてそれ以上に残念に感じられる。日本を唯一の被爆国と世界に発信し、昨年は被爆地・広島に、核廃絶に向けて前向きな姿勢をとっていたオバマ大統領を招くなどしていたのに、米大統領が核廃絶に消極的なトランプ氏に変われば、彼の思いを忖度するような態度へ180度転換してしまう我が国の現政府の対応は、争いを避ける賢さというよりも、アメリカの腰巾着的なずる賢さ・日和見主義的な主体性のなさを感じてしまう。