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捜査機関への信頼


 政府はオリンピック開催などを念頭に置いたテロ対策の為には、共謀罪(テロ等準備罪)が必要だと主張しているが、多方面から様々な懸念が噴出している。政府や法務大臣は犯罪組織が対象で一般市民はその対象とならないと説明しているが、犯罪組織と一般市民の線引きなんて果たして明確にできるのか甚だ疑問である。以前にも書いたように警察官による職務質問に対応するかは任意であるはずだが、職務質問を拒否しようとすると「やましいことがないなら対応しろ」というようなニュアンスで実質的には職務質問への対応を強制されることなどは、一般市民に協力を求めているようで実質的には一般市民を犯罪者予備軍として扱っていることのように思える。


 このようなことから、警察とは犯罪を未然に防ぎ治安を守ることも仕事なのだろうが、共謀罪が不適切な内容で運用されたら、犯罪を未然に防ぐという名目の下で一般市民を犯罪者に仕立て上げることをしかねないという懸念を感じてしまう。先月は警察が令状なしでGPS捜査を行っていたことは適切でないという判決が最高裁で出されたり、覚醒剤使用者を逮捕する際に令状が出ていると嘘をついて暴力を振るったことで、その後行われた尿検査の陽性反応の証拠能力を否定され容疑者が無罪になったことが明らかになっている。これらは警察権力の行き過ぎを牽制するために行われた司法判断だ。現状ですらこのような警察権力の濫用があるのだから、犯罪組織と一般市民の線引きを捜査機関の判断に委ねてしまうような内容での共謀罪の成立は好ましいとは確実に言えない。

 熊本県警の警部補が警察署内で採取した容疑者の指紋を、現場の鑑識活動で採取したとする嘘の資料を作成したということを3/29にNHKなどが報じている。「実績を上げるため、数年前からやっていた」と話しているにも関わらず、この警部補に対する処分は停職6か月と証拠偽造での書類送検”だけ”だ。指紋採取やDNA鑑定などの科学的な捜査は一見誰の目にも明らかな間違いようのない証拠のようにも思えるが、この件からわかるように捜査機関の人間が結託すれば簡単に偽造できてしまう。両方とも犯罪が行われた現場へ持ち込むことはとても簡単だ。DNAなんて髪の毛1本現場に落としておけばその人物に容疑をかけられるのではないかと個人的に思う。

 結局、科学捜査にしろ共謀罪にしろ捜査機関が不正を行わない、特に犯罪者を捏造しないという信頼性が最も重要なポイントだ。今回報道された熊本の件のようなことが果たして例外的な事だったのか、それとも氷山の一角なのかは定かではないが、熊本県警だけでなく日本の警察全ての信用度を大きく損なったのは紛れもない事実である。

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