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本を”読んだほうがいい”理由


 「本を読まなければならない理由は?」というとあるトピックがツイッターなどで話題になっている。この件について、本質である”本を読むべきかどうか”ではなく、○○すべき・しなければならないという表現について疑問視する人もいるようだが、個人的には反抗期の中学生的な発想の難癖としか思えない。考え方・受け止め方hは個人の自由なので全否定するつもりはないが、この件の話の本筋とは確実にずれている。それでもそんな主張に配慮して、本を”読んだほうがいい”理由は何かと問われれば、それは知識を得る為でも仮想体験が出来るからでもない。そんなのは映画でもテレビでもネットでも代用出来る。自分は

本=言語表現(日本語表現)の教科書

だから本を読んだほうがいいと考えている。


 日本語を例にすると、日本で生まれて少なくとも両親のどちらか一方が日本語話者であれば、物心つく頃にはある程度日本語の基本は自然と身につく。しかし義務教育の小中学校で既にマスターしているはずの日本語を、国語という科目として週に数時間、9年間更に学ぶことになる。それは自然と身につく話し言葉だけでは充分ではないからだと思う。更に言えば、その学校で学ぶ国語だけでも日本人として生きていくには充分とは言えないので、本を読むことでそれを補完することが望ましいと言えると思う。

 当然の如く人は知らない言葉・表現を使うことは出来ない。日常会話のような話し言葉と文字表現・書き言葉は異なる点も多く、書き言葉には話し言葉より正確な表現が求められる。書き言葉は話し言葉を使う上でも役立つ。要するに書き言葉>話し言葉であり、日本人として生きていくには書き言葉の能力が高いほうが確実に有利だということだ。本を単に娯楽と捉えて他の娯楽と比べる人もいるようだが、スポーツせずとも人生は終えられるし、映画を見なくとも、漫画を読まなくとも生きていける。しかし識字率が低かった近代以前なら分からないが、現在書き言葉を使わずに人生を最後まで過ごすことは現実的ではない。適切な文章表現を学ぶ為には本を読むことが一番近道だと思う。

 「ネットにも文章は多く存在しているし、手軽に読めるので必ずしも本である必要はない」という声もある。確かにネットでも書き言葉は多く存在し、それを読むことで学ぶことが出来るとも言えるが、誰でも勝手に書けるネットと、校閲を受けていることが基本である出版物では文章の質が違う。言葉とは時代とともに変容するものでもあるが、それでも誤解を生まない為には誤用や間違った文字表現などについて知るべきで、誤用を用いた文章を正しい表現と勘違いしない為や、適切で豊かな文章表現を知るには出版物の方が向いているはずだ。適切な使用方法を知らなければ、間違いにすら気がつけない。ある程度文章に対する分別が身についているならば、ネットの文章でも良いのだろうが、入り口は本のほうがより向いていると思う。

 とは言いつつも出版物の文字表現・文章表現も、ネットレベルまでとは言わないが、質が低下していることも事実だ。その理由はネットの文章で育った世代が書き手になったり、校閲を行う側になったことにあると思う。それが時代の流れなのだから、今後は本を読む必要性は低くなるという見解もあるのかもしれないが、それはある意味では適切な文章表現の否定でもあり、ならば国語の授業を受ける必要もないということになると思う。兎に角、適切な文章を学ぶ・身につける為には、読む本の内容はなんでもいいので、出来るだけ多くの出版物に触れたほうがいい。文章表現は口語表現の礎であり、さらには自分の主張を他人に表現する為の礎でもある。また自分の主張・心情を文章で表現すると言うことは、主張・心情を整理し、明確化し、再認識するという意味でも役立つ。それが本を”読んだほうがいい”理由だ。

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