「多くの先進国に比べて日本の受動喫煙対策は遅れている」これは受動喫煙対策の正当性・必要性を訴える際によく言われることだ。しかし自分は世界の標準的な受動喫煙対策と日本の対策は異なっていることは事実だが、それが遅れているかどうかとは別だと思う。例えば、現在男系男子しか皇位継承を認めない日本の天皇制も、世界的に男女平等が強く叫ばれているし、他の君主制の国でも女王を認める国が多くあることを考えれば、日本の天皇制は遅れているとも言える。個人的には男女平等を日本の象徴である天皇から発信する為にも、制度改定が必要だと思うが、過去の伝統を重視したいという意見も一方で無視することは出来ない(当然過去に日本でも女性天皇が存在したことは知っている)。現在、皇位継承を男系男子に限る天皇制は受動喫煙対策に比べれば制度を改定しようという機運は薄い。当然他国の状況を参考にすることも必要だが、他国と比べてどうかということよりも、内容を吟味することの方がよっぽど大事だと思う。もっともらしい言葉に引っ張られた判断が必ず正しいとは言えない。
都議選に向けて5/13に開かれた自民党都議連の会合で、首相のビデオメッセージが公開されたようだが、その中に「急に誕生した政党に都政を支える力はなく、」という表現があったようだ。急に誕生したことと、都政を支える力がないことには確実な関連性がなく、厳しい言い方をすれば、根拠のない誹謗中傷とも思える。この台詞を見て、反対に「ただ歴史が長いだけの政党には健全な都政を行う力はない」と言われたら、どう思うのだろうかと感じた。現にオリンピックにしろ築地移転の混乱にしろ、混乱の種は自民党系都知事や組織委員会長が撒いたものだ。そしてそれを上手く収拾出来ていない小池氏にもある種の問題を感じるが、過去十数年間の都知事や責任感の薄い組織委員会長たちよりマシであることは見ての通りだし、にもかかわらず、自民党の都議たちが抵抗を見せていたのも事実だ。
また同じ会合で菅官房長官は「パフォーマンスやイメージで戦おうという候補者に負けるわけにはいかない」なんて発言をしたようだが、それはリオ五輪の閉会式でかなり象徴的なパフォーマンスをした安倍首相への皮肉なのだろうか。今国会で成立を目指すテロ等準備罪法案だってイメージを先行させているとしか思えない。”オリンピックに向けたテロ対策”と主張しているが、この法案はTOC条約批准の為に必要な法案で、テロ対策が主目的ではないという見解が自民党内からも出ているし、そもそもTOC条約はこの法案がなくても批准できるという話も自民党内にもある。TOC条約批准が主な目的ならテロ等云々なんて名称は確実にイメージ戦略に他ならないし、法務省が示した叩き台にテロという文言が一切無かったこともそれを裏付ける。
前述の発言がされたのは自民党内の会合であるし、都議選に向けた内部の結束強化の目的で行われたことを考えれば、多めに見ることも出来るが、安倍首相も菅官房長官も自民党員であると同時に、我が国の中枢に最も近い重要な人物で、その発言は国内だけでなく国外からも注目を集める立場である。そんな立場に居る人たちには”根拠が明確でないことを、もっともらしい言葉でまるで信憑性があるかの様に表現すること”は控えてもらいたい。まるで某大国の大統領の様だ。他国からの信頼を失う恐れがあることもそうだが、日本で最も尊敬されるべき立場の人間がそんなことをすれば、多くの国民、子供たちも「それでいいんだ」と勘違いしてしまいかねないからである。当然私たち市民も惑わされないように、言葉の裏側にある発言者の意図を読み取る努力をする必要があるということだ。