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国会は多数決ではない


 日本は民主主義の国なのだから、共謀罪を恣意的に、又は不適切に運用する者が権力者になる可能性は限りなく低いという主張をしばしば目にする。おかしな運用をするものを国民が選挙で選ぶとは思えないし、もし国民を騙すようなかたちでそのような者が政権についたとしてもリコールなどで辞めさせることが出来るという話だ。同じ事を自民党・石破氏も言っていたのを聞いてとても驚いた。戦前の日本で治安維持法が出来た際も現在と方式は異なるが選挙は当然行われていたし、独裁者ヒトラーだって民主主義的な手続きを経て権力者になっている。前述の話が真実ならば、戦前の日本でもドイツでも個人が意見を主張することが許されない社会にはならなかっただろう。そのような過去を考慮しても、楽観的な見解というか権力者に対する性善説みたいなものを主張できるのが不思議だ。


 そもそも万が一にも恣意的に運用される、不適切な運用をされる恐れのある法律は不完全なものだし、その時点で適切な法律ではない。そのような懸念があることを認めるのならば、その懸念を取り除いた法律に改善するのが立法府の責任ではないのか。中学の公民で日本では司法・立法・行政が各々行き過ぎた施策を行わないように監督しあう三権分立というシステムがあると習った。どうも既に立法・司法は行政の下に組み込まれ、三権分立は形骸化したように思える。

 また5/19に衆院法務委員会で法案が可決された際に、維新の議員がいきり立った様子で、「30時間も議論したし、野党は同じような質問ばかりで馬鹿げている」という趣旨の発言をしていた。何十時間議論しようが内容が充実していなければ何の意味もない。法務大臣の答弁は矛盾することも多いし、しっかりと質問に答えられていないと思える場面も多くある。だから野党の質問が同じようなものになる。これまでの衆院法務委員会がそのように見えないのは、前述の発言をした維新の議員が法案を通すことだけしか考えていないからじゃないのかと思う。共謀罪は個人的にはあってもいいと思う。しかし政権や捜査機関が不当な運用を出来ないようにする構造をセットで作ってもらわなければ困る。現に米国ではNSAによる不適切な監視活動が指摘されている。先進国の多くに共謀罪があるのだから、我が国にも必要だというのなら、他国にある似たような懸念を考慮するのは当然だろう。そこだけ日本は違うでは通らない。

 政権は法案を今国会で成立させる為、会期の延長を検討しているという話がある。ただ単に成立阻止を目指し、会期が延長されずに廃案になることを望むという声もあるだろうが、自分は出来るだけ会期を延長しとことん議論を続けて欲しい。とはいっても衆議院の優越があるのだから衆院を通過したら、参議院での議論は実際は形式的なものになりがちだ。現に賛成派の中に前述の維新の議員のような輩も居るのだから、時間を掛ければそれでお仕舞いということにもなりかねないことも理解している。だが、会期延長を望まないという考え方は議論を放棄しているとも言えそうだし、議論をせず廃案に追い込めと言っているのと同じで、そんな時間さえ掛ければそれでOKと考えている人々と同レベルのように思える。国会は単なる多数決ではない。単なる多数決なら国会議員に高い給料を払う必要など無い。議論で対立する考えをお互いに説明し、理解しようとすることで、数の力だけで間違った判断をしないようにする必要がある。要するに少数派の意見を尊重する為、多数派にある程度譲歩する為に議論をする場が国会だと思う。そのことを政府与党ら賛成派の議員も、野党ら反対派の議員にも今一度考えてみて欲しい。

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