スキップしてメイン コンテンツに移動
 

法による支配とは


 今週の何曜日だったか正確な日付は失念してしまったのだが、MXテレビ・モーニングCROSSで共謀罪についての放送を行っている際に、コメンテーターらが条文に含まれる”物品の手配、関係場所の下見その他の計画”という文言の”その他”について恣意的な解釈が可能で、不適切な運用に繋がる恐れがあるという指摘を行なっていた。それに対する視聴者の「その他という文言を入れておかなければ、条文の隙間をついた犯罪を取り締まれないから、その他という文は妥当」という趣旨のツイートを、MCの堀氏が「こんな意見がきましたよ」と紹介していた。堀氏は明確にその主張が不適切だとか、間違っているとかいうような指摘はしなかったが、自分にはその主張は法による支配ということを全く無視しているとしか思えない。


 元来、法というものは誰が読んでも同じように感じ、同じ条件で適用されなくてはならないのが基本だ。異なる解釈が可能である法には欠陥がある。なぜなら、異なる解釈が可能であるということは、恣意的な運用の恐れを意味し、それは法の支配という大義名分を掲げた陰で人による支配を可能にするものだからだ。例えば、中国にも一応憲法は存在しているが、事実的には憲法より上に中国共産党がある。北朝鮮のような一人の指導者による独裁的国家ではないが、国民のために権力の行き過ぎた行動を抑止するのが目的の、憲法が機能していないのであれば憲法があっても民主的な国家とは言い難い。それは法の支配ではなく中国共産党による支配と言えるだろう。

 安倍首相は憲法改正を進めたい理由の1つに自衛隊が違憲である恐れを挙げている。憲法9条の解釈により自衛隊が違憲であるか合憲であるかの判断が分かれることは事実で、戦後の長い期間現憲法下で自衛隊が存在し運営されてきたことを考えれば、憲法9条に欠陥がある恐れは強いと言わざるを得ない。それを正す為に憲法改正、特に9条の改正が必要だと首相は訴えている。しかしその一方で現憲法制定以降どの政権も、当然自民党の政権でも認めてこなかった集団的自衛権を解釈の変更だけで容認できるとし、安全保障関連法制を推し進めた実績がある。一方では憲法に複数の解釈が可能であることに懸念を示し、他方では今までの解釈を一方的に覆すというのは矛盾していると自分は感じる。更に今議論されている共謀罪でも広い解釈が可能な、曖昧な条文を盛り込み、それについて政府や捜査機関の恣意的な運用の恐れは低いという不確実な理由で肯定するのも、彼自身の憲法改正感と矛盾するものだとも思える。また、法の解釈など明文化されていない部分などについての判断の基準として、先例・通例・慣例・前例などは重視されるべきものでもある。安保関連法制における集団的自衛権の容認については、これまで現憲法制定以来どの政権も認めなかったという前例をも軽視・蔑ろにしているとも言える。

 法律というものは人間がつくるものであって、普遍的に完全なものであることは究極的には不可能だということは分かるが、それでも出来る限り誰が読んでも、どんな場合でも同じような解釈しか出来ないという状態に近づけた条文を備える必要がある。それを運用する組織の性善性に期待した法に問題がないわけがない。要するに法律の条文からは極力曖昧な要素を取り除かなければならないのは明らかである。前述のようにそれは首相も自らの憲法改正感で指摘・表明している。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。