ネット上で必要以上に強気なコメントをしている人を見ると、中学生男子のような思考丸出しで恥ずかしくないのかと思えてしまう。まず大多数の健全で品行方正な中学生男子によろしくないイメージの例として使ってしまったことを謝りたい。そして強気な彼らに対してこんな批判をしている自分も、彼らと大差ないのかもしれないとも感じる。しかしBuzzFeed Newsの「大阪府警「ひざ蹴り3発動画」がネット上に やりすぎなのか波紋広がる」という記事のコメント欄がヒドいので反論したくなってしまった。大阪市内の路上で客引きの顔を殴った疑いがある外国籍の男性を警察官が3人がかりで押さえつける様子を、現場に居合わせた人が撮影した動画が公開されたようだ。男性は酔っており警察官に噛み付こうとしたということなのだが、押さえつけた際に警察官の1人が3回にわたってひざ蹴りしている様子が映っている。これがやりすぎなのか、正当な制圧行為なのかということがネット上で波紋を呼んでいると言う記事だ。
まず個人の見解として、男性が実際に暴行を行ったことや警察官に噛み付こうとしたのが事実だとしても、押さえつけ、既に制圧した後に膝蹴りを入れる必要性があるとは思えない。警察官の仕事は制裁を加えることではない。制圧する際に暴れるのをやめさせるために仕方なく膝蹴りを入れるのであればまだ理解できるが、押さえつけた後に膝蹴りを入れるのはやりすぎと言われても仕方が無い。もし打ち所が悪く、男性に致命的な後遺症が残ったり、死亡でもしていたら確実に過剰防衛とされるだろう。致命的な怪我に至っていないし、死んでもないんだからいいじゃないかという声もあるかもしれないが、膝蹴りを加えた結果がどうなるかは、加えた時点では分からない。極力必要性の低い暴力は控えるべきだ。動画での膝蹴りは既に3人の警察官に上からがっちり押さえつけられている男性に対して行われている。どう見ても不必要だ。
記事に対してのコメントを一つずつ見てみる。
>警察官は怖いぐらいでちょうど良い。
確かに犯罪抑止の観点からも警察官は軽く見られないように振舞う必要性はあるだろうが、それが膝蹴りを入れるという暴力によって達成されるべきことではないことは明らかだ。
>これぐらいしないとダメだ やりすぎといってる奴頭おかしいだろ
やりすぎといっている奴頭おかしい と考えている時点で反論にすら値しない主張。これぐらいしないとダメな理由も全く示されていない感情的でしかないコメントである。
>犯罪者に対してやり過ぎぐらいで当たり前。嫌なら犯罪を犯すな
逮捕された時点では男性はまだ犯罪者ではない。もし犯罪者であったとしても制圧した後に暴行を加えてよいということにはならない。男性を犯罪者前提で、やり過ぎぐらいで当たり前、という2つの点で勘違いをしている。やり過ぎと認識しているのにそれを容認するのも矛盾している。
>明らかに公務執行妨害ですよね。
>アメリカだったら射殺です。
>日本人は優しいね。
もし公務執行妨害だとしても必要性の低い暴行を加える理由にはならない。流石にアメリカでもこの程度で射殺したら大問題になり、殺人罪に問われる恐れも大いにあるだろう。
>普通だよ。
>凶悪犯罪者に対し体を張って捕まえてるか、コレぐらいは当たり前。
>この程度で騒ぐほうがほかしい
>警視庁は朝日新聞を訴えたらどうだ?
これぐらいが当たり前なら警察はやりたい放題ではないだろうか。凶悪犯罪者の定義とは何なのか。男性の暴行が事実だとしても何発殴ったかは分からないが、酔っ払いの喧嘩程度と想定しその程度で凶悪犯ならば、大抵の犯罪は凶悪事件だ。また何故か 朝日新聞を訴えたら と提案しているが、この記事が引用しているのは毎日新聞の記事だ。
>ちゃんと蹴り入れる位置が死なない所か分かってればいいんじゃない。
>格闘家の真似して頭にひざ蹴りしたら死んじゃうけどね。
ある程度は暴行が死につながる恐れを考慮しているようだが、死ななければ暴行を加えても構わないということでもない。
>やり過ぎと、思う方が、平和ボケすぎる。何なら、そう言う人たちが、変わって、躰張って、逮捕出来るの、ですか?抵抗する方が、ワルインだから。アメリカなら、射殺されてるかも、しれないよ?
アメリカなら射殺、は前述の通りなので割愛。 抵抗する方がワルインだから という考え方は怪しい=犯罪者確定という危険な考え方だと思う。このような考え方があるから、例えば痴漢冤罪のようなことが起きるのだろう。
>適切でしょ。なにがやり過ぎなのかわからない。
個人の感じ方なので否定は出来ないが、適切である理由が全く書かれていない。感情的な主観に基づくコメントと思える。
>やりすぎと言うコメントは動画で一人だけ見ました それ以外は警官を擁護する事しか書かれていない
>私的には一人の警官は銃を構えいつでも撃てる状態でいるべきだと思う
抵抗するなら撃たれても仕方ない 警察も直ぐ釈放してるようだが最も厳しく取り締まって欲しい
警官が必要以上に拳銃を振り回すことがどれほどのことか考えているだろうか。抵抗するなら撃たれても仕方ないなんて馬鹿な話があるだろうか。ナイフを振り回すとか相手も拳銃を持って発砲をほのめかしていない限り、撃たれても仕方がないなんてはずがない。
>ええでぇ~、でも同じ警察官の犯罪にもこれくらいしてや!
この記事のコメント欄の中では最もまともだが、非警察官の犯罪だろうと警察官の犯罪だろうと、司法判断すらすっとばした制裁的な暴力を容認出来るはずがない。
>この文書の筆者は単なる馬鹿ぁ?
>取り押さえただけで暴力やり返され無い保証って どこに有るの?
>
>暴力やり返されて取り逃したら、
>更に批判するんだろうねぇ!
>
>例え手錠を後ろ手に掛けても、
>強烈な蹴りは余裕でできるからねぇ、
>だから
>少しでもプレッシャーかけて何が悪いの?
>
>オブラートに包んだ妄想的な攻撃しない
>ヒーローなんて現実的には有り得ない。
>現実的に考えようよ。
>
>攻撃無しの警察官で
>暴力的で暴れる犯罪者に立ち向かえって
>言い出したら、
>そんな仕事に就きたいですか?
>批判してる方々は
この文書の筆者は単なる馬鹿ぁ この一文だけで既に反論にも値しない。現実的に考えられていないのはこのコメントを書いている本人だと個人的に思う。法治国家とか法の支配などの意味をもう一度良く考えたほうが良い。警察は攻撃なんて当然許されていない。防衛の為の最低限の暴力が許されるだけ。
>外国やったら射殺。
どこの国を指しているかは分からないが、民主主義的な法治国家ならこの程度でそんなことが許されるはずがない。どこかの独裁的な国のことを想定したコメントなのだろうか。
彼らの思考の根底にあるのは、警察は絶対的に正しく間違えを起こさないという勘違いなのか、若しくはただ単に悪者っぽい誰かを糾弾することで、悪を糾弾する自分の素晴らしさを実感したいという気持ちだと思える。もし後者ならば、この件で男性が死亡、若しくは意識不明の重体などになっていたら、彼らは掌を返して警察批判を同じような歪んだ正義感で繰り広げていたように思う。正義とは何か、正義とは絶対的なものではない。これまで非難された酷い独裁者達も必ず自分の正当性を主張しているし、これまでに起こされたどの戦争も正義の戦いを掲げている。現在最悪のテロ組織とされるISだって彼らの正義の為に無差別殺人や紛争を行っている。
この記事で暴行を働いたとされる男性に対する警察官の過度の暴行を容認するということは、他人の権利を尊重しないということでもあり、結果的には自分の権利もいつか軽視されることに繋がるはずだ。日本にも、治安維持法のような制度や特高警察のような組織の元で、権力による市民の権利の制限が行われた時期があった。そのような過去があることを知っていれば、酒に酔って人を殴ったからといって必要以上の制裁・暴力が許されるはずがないことは理解できるはずだ。そんな制裁や暴力が許されれば、裁判をすっ飛ばした私刑的な制裁・暴力も許される社会になりかねない。