6/3の土曜日にフジテレビが映画・マイノリティリポートを放送する。個人的にこの映画はトムクルーズ主演作品の中で最も重要な作品の一つだと強く思っている。映画の舞台は2050年代。犯罪予防局という、予知能力を利用して凶悪犯罪が起こる前に犯人を逮捕する捜査機関がある世界。トムクルーズが演じるのは犯罪予防局のチーフ捜査官。ある日彼が殺人を犯すという予言が行われ、取り締まる側だった彼が追われる立場に、という映画だ。単なる近未来SF作品としても楽しめるが、原作の小説やこの映画には、発表・公開当時から懸念されていた政府機関による監視強化を暗に批判しているという、政治的なメッセージが込められているという見解や側面がある作品でもある。
このタイミングで放送されるのは、現在大きな話題になっている共謀罪・テロ等準備罪・組織犯罪対策法案と全く無関係だとは思えない。放送するフジテレビは産経新聞と関係の深いテレビ局で、産経新聞は親政府というイメージの強い報道機関だ。共謀罪についてもメディアの中では、どちらかと言えば懸念を強く示しているとは言えないような立場をとっている側である。そのフジテレビがマイノリティリポートをこのタイミングで放送するということは、素直に考えれば、一部の偏見に満ちた人々が主張するように、メディアによってはっきりくっきり左右だとか、保守革新だとかいう立場が分かれているわけではなく、フジテレビや産経新聞というどちらかと言えば親政府であろう報道機関の中にも、所謂共謀罪に対する懸念を持つスタッフが居る可能性が感じられる。ただ、フジテレビは映画を放送する際に映画本編には当然手を加えないが、本編の前後に独自の演出を加えることがしばしばある為、今回のマイノリティレポートも番組内で何かしらの主張があるのかどうかにも注目したい。
放送するテレビ局がどこかということは別にマイノリティレポートは是非見てもらいたい作品だ。フジテレビが嫌いだとか、吹き替え版は好みではないと言うならDVD等を借りて見て欲しい。共謀罪が成立しても危険な思想を持っていない自分は関係ないなどと思っている人は特に見て欲しい。もしくはイマイチなぜ世間が共謀罪について騒がしくなっているのか興味を持てないとか、理解できないなんて人にも勧めたい。この映画を見た後なら、今共謀罪法案に興味を持っていない、持てないと思っている人も、懸念を持つのか、妥当と感じるかは個人差があるだろうが、高い確立で興味が沸いてくるだろう。当然この映画はフィクションなので描かれるような世界が必ず到来するということではないが、この映画に散りばめられた要素について考えることはとても重要なことだと思う。