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創作物の模倣


 強制わいせつの疑いで逮捕された男が「マンガを真似た」と供述したことを受けて、埼玉県警がマンガを描いた漫画家に、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどを要請したということを複数のメディアが報じている。個人的には、世間から「何も防犯上の対処をしていない」という批判を受けることを恐れた埼玉県警がとった苦肉の策、とも思えなくもないが、果たして警察という権力が、たとえ対象が所謂エロマンガだったとしても表現活動を萎縮させる恐れのあるようなことをするべきだったのかには疑問を感じる。例えばこの被疑者が犯行の参考にしたものが過去の高名な作家の推理小説のトリックだったら、警察は出版社に対して同じような申し入れをするのだろうか。



 6/15のMXテレビ・モーニングCROSSでもこの件を話題にしており、前述のような懸念を示すコメンテーターが居る一方で、ポルノに影響されて犯罪に走る者が一定数いるのだからこの件での警察の申し入れが不適切だとまでは言えないという主張のコメンテーターもいた。要するに痴漢や強姦などをテーマにしたポルノ作品はそれが犯罪であることをもっと強調すべきだという意見だ。だが、それらの作品のほぼ全てで作品のどこかに「犯罪です」とか、フィクションだとかなどのクレジットがあり、そういった作品を見る人の多くはフィクションであることを理解して見ているし、当然現実世界で真似しないことを考えれば、真似して現実世界で実行する者の責任がかなり大きいと言えると個人的には思う。

 また、後者の意見を補足するようなかたちで番組MCの堀氏が、強姦被害者へのインタビューの中で語られた話を例に上げ、「欧米ではレイプとネット検索すると犯罪であるとか、防止するにはどうしたらよいかというサイトが多くヒットするが、日本ではポルノ作品ばかりがヒットして犯罪であることを指摘するサイトのヒットが少ない」という話をしていた。犯罪の被害者がそのような状況に不条理を感じるのも理解は出来るし、確かに日本は性風俗産業やポルノの分野で世界的に見ても先進?国で、そういったものが巷に溢れていると言っても間違いではないかもしれない。しかしポルノ作品が性犯罪の主たる要因の一つであるなら、日本は世界的に見ても性犯罪の発生件数が飛び抜けて多いはずだろう。だがそのような根拠が示されたのを見たことがない。自分が知らないだけかもしれないが、もしそのような事実があるならば世界中からもっと非難を受けるような状況があるはずだ。

 児童ポルノの件に関しても同じような話があったが、現実では犯罪とされるような性表現に興味を持つ人間をゼロにすることはどうやっても不可能だと思う。要するに人間の内心を取り締まることは究極的には不可能だ。それは小児性愛だろうが強制わいせつだろうが同じことだし、小説やマンガ、ゲーム、役者が演じるポルノなどで擬似的にそれを体験させることが、興味を持つ人間が現実に実行することを抑止しているという可能性だって当然考えるべきだ。それは性風俗産業が高度に発達した日本で性犯罪発生件数が他国と比べて突出している訳ではないことからも想像出来る。ポルノが嫌いだとか、宗教的に好ましくないという考え方を全面否定するつもりもないが、その考えだけを根拠に闇雲に規制を強めることが賢いとは思えない。強い規制は多くの場合、強い反発を生む。その結果何が起きるかを想像してみて欲しい。

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