スキップしてメイン コンテンツに移動
 

不寛容な社会


 自民党の金子恵美総務政務官が子供の保育所への送り迎えに公用車を使っていたとし、それについて週刊新潮が6/29発売の紙面で公私混同だと指摘する記事を掲載した。個人的には流石に明らかな公私混同とまでは言えないのではないと感じる。確かに金子議員は子供の送迎以外にも母親を東京駅へ送る際にも公用車を使用したことを認めているようで、彼女の公用車使用に対する意識が高かったかと言えば、そうではなかったのかもしれない。しかし通勤経路から大きく逸脱しない範囲での子供の送迎まで公私混同だと批判することは、自分にとっては、子育ては完全に個人の責任で行えと言っている様にも思える。例えば、通勤経路を大きく逸脱しない範囲であっても夫を職場までとか、高校生の息子を学校まで公用車で送迎していたというのであれば批判は免れない。しかし送迎していたのは保育園に通うような子供だ。それはある意味では、現在少子化対策として子育ては親が全責任を負うというような意識から社会で育てるものという意識への、社会全体の意識改革が必要だという見解もあるのに、逆行するような話ではないだろうか。言い過ぎかもしれないが、子育て中は議員だろうがそれ相応に苦労しろだとか、子育て中は議員なんかになるなと言っているようにさえ思えてくる。


 金子議員を批判する人の中には、この問題は子育て問題ではなく、国会議員の公用車利用についての意識の問題だとか、多くの一般的な親は運転手付きの車など使えるはずもなく、苦労して送迎しているのに国会議員が同じ苦労をしないのは如何なものか、などという主張している人がいる。このような議員を擁護するのは議員を甘やかすことになり、政治の劣化を助長するとまでおっしゃる著名人もいるようだ。しかし自分は、国会議員として活動する為に子供を保育園に送迎していたのだから、子育て問題は全く関係ないと言うのもどうかと思う。確かに国会議員としての意識の問題は少なからず絡む問題ではあるだろうが、この件で過剰にそれを指摘するのは、否定派がこの件への擁護について政治の劣化を懸念するように、よりギスギスした社会状況の加速へ繋がりかねないという懸念を感じる。

 今年の4月に”消防車・制服姿で昼食を食べに行った消防団員”について批判の声が上がったことと、この件は似たような案件であると思う。確かに規律・規則を守ることは社会の秩序を守るためには重要なことだ。しかし消防団員の件は消防操法大会の説明会からの帰路の中途でのことだったし、金子議員も通勤経路を大きく逸脱しない範囲の、しかも保育園への子供の送迎だ。こんなことまで馬鹿正直に規制だ規律だと批判して一体誰が得をするのか。税金が使われる公用車・消防車なのだから、間接的に納税者が得をするとも言えるかもしれないが、微々たるガソリン代を指摘することで、同時に社会にギスギスした空気が広がるなら本末転倒だと思う。どうもやっぱり最近日本人から寛容さが失われている気がしてならない。先日書いたバニラエア車椅子対応問題についても同じような感覚を覚えた。このような批判をしている人たちは、全く規律を犯さずに生きている聖人君主達なのだろうか。こんな表現は適切ではないのかもしれないが、自分には妬み嫉みのような感覚の方が強いのだろうとしか思えない。いい加減間違った平等感や正義感を振りかざすのはやめたほうがいい。その内「おもてなしの心だとか言いながら、実は不寛容な日本人」なんて評価を世界中から下されることになってしまうかもしれない。日本人は規則正しい民族であるというのは長所でもあるが、行き過ぎればそれは同調圧力と呼ばれるような短所にもなり得ると思う。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。