海に親しみを感じない若者が4割を超えるという日本財団の調査結果が公開され話題になっている。ハフィントンポストの記事によれば、「海にとても親しみを感じるか]」という設問で、
10-20代は約4割が「親しみを感じない」
30代は「親しみを感じる・感じない」が拮抗
40-60代は「親しみを感じる」が約4割
という結果だったそうだ。個人的にはこの調査結果に大した驚きはない。何故ならスキーやスノーボードなどについても80-90年代に比べて出かける人が減っているという事が数年前から指摘されているし、単に海に限った話ではなく、アウトドア系レジャー全般に同じような事が言えるのではないかと思えるからだ。アウトドア系レジャーが敬遠され始めた理由はいくつかあると思う。
まず、真っ先に考え付いたのは「若者の車離れ」だ。勿論アウトドア系レジャーには車でなくとも、電車などを利用して行くことはできるだろうが、アウトドア系レジャーを楽しむにはどうしても荷物が増える。またアウトドア系レジャーを楽しむ場所は、インドア系に比べて公共交通機関でのアクセスが良いとは言えない場合も多く、車がないと不便なことが多いからだ。東京以外の地域では車離れと言っても、家に1台も車がないという事は稀だろうから、流石に車離れだけが主たる理由とは言えないかもしれないが、若者の自由に使える車が減っていることは事実だろうし、それなりの相関関係はあると感じる。
次に思いつくのはバブル崩壊以降、波はそれなりにあるものの、実感できるような好景気がほとんどないことだ。ハフィントンポストの記事でも触れられていたが、「小学生の頃どのくらいの頻度で海に遊びに行っていたか」という設問で、年代が若くなればなるほど低頻度の割合が増えている。自分は海に限らず、レジャーに出かける頻度が経済的な理由や、親の労働環境の問題でそれ以前と比べて減っているのだろうと想像する。子供の頃にそういったレジャーをあまり経験していないと、そもそも興味が沸かないことに繋がる気がする。
3つ目は、少子化の進行や一人っ子が増えたこともその理由だろう。最近まで一人っ子政策が徹底されていた中国では、過保護な親・祖父母が多いという話がある。理由は少子化の進行や一人っ子が増えたことだけではないかもしれないが、どうも最近は個人的には病的と思えるレベルの所謂潔癖的な思考をする人が増えたように思う。清潔とは対極的な位置にあるとも言えるアウトドア系レジャーの中でも海水浴は、菌だの虫だのなどというような話は当然懸念するのだろうが、それだけでなく基本的に肌を露出し砂が付くことは避けられない。そのような点から海=不潔のような印象が少なからずあるのだろうと想像する。泳ぐだけなら海でなくともプールがあるし、わざわざ不潔な海に行く必要がないと考える人が増えたのではないかと想像する。
この調査結果を発表した日本財団は、
海への理解や関心を深め、次世代に海を引継ぐため、
①実地体験型の「海の学び」の場の提供
②地域の特色や地域性を生かしたプログラムの展開
③地域や学校で「海の学び」を実践するための手助けとなるネットワークや素材の提供を実施する
としているようだ。個人的には、似たような問題が他のアウトドア系レジャーにもあるように思える。日本財団が海への興味に着目して対策をすることを批判するつもりはないが、もっと抜本的に海、アウトドアレジャーに限らず、様々なことに多くの人、特に若い世代が興味を抱く機会を広げられるような社会を目指す必要があるのではないかと感じた。レジャー産業だけでなく海に関する多くの産業が、人々の興味が薄れることは産業や文化の衰退に繋がるのではないかという懸念を抱いているから、この記事が取り上げる調査結果が話題にされているのだと思う。同じような事が海に関してだけでなく他の分野でも起こる恐れはあるように感じられるので、前述のような社会を目指すことは、文化水準の維持、発展のためには必要だろうと思う。