トランプ大統領が、彼に批判的な女性ニュースキャスターに対して「low I.Q. Crazy Mika(IQが低くて頭のおかしなミカ)」「She was bleeding badly from a face-lift(彼女はシワ取り整形手術の傷で血を流していた)」などの誹謗中傷としか言いようがない暴言をツイートした。彼はそういう事を平然とするような人物だということは、既に多くの人が知っていることなので大きな驚きはないが、それでもこれまでよりも酷さが更に1段上がったとも感じる。しかも大統領のこの醜悪な発言について、ホワイトハウスのサンダース副報道官は「This is a President who fights fire with fire(大統領は、毒をもって毒を制した)」などと、やられたからやり返したという趣旨の発言で擁護している。今のホワイトハウスはトランプ氏が選んだイエスマン揃いだという事も誰もが知ることだが、トランプ大統領だけでなく、今のアメリカ政権は差別主義者の集まりだという事を自ら示したように見える。イスラム圏からの入国禁止大統領令に差別の意図は無いという主張の信憑性をさらに下げるような事態である。
今年の初頭、トランプ大統領の就任直後、というか昨年の当選直後からだが、まるで新しく就任する組長の元へ、ゴマをするように一目散足を運ぶ下部組織の組長のように見えた安倍首相だが、流石にここ最近は当時に比べればそれなりの距離感を維持しているようだ。距離感を維持しているというよりも自分達に降りかかる火の粉が多くてそれどころではないのが実情かもしれないが、結果的にでも距離を取っているように見えるのは、世界中から日本はトランプに右へ倣えの愚かな国と思われないためには好ましい傾向だと感じる。
しかしトランプ政権の醜悪ぶりを見ていて感じるのは、流石にあそこまで酷いとは言えないかもしれないが、安倍政権にも似ている部分が多々あると思えることだ。それは、近い将来日本の政府も現アメリカ政府と大して変わらないと世界中から思われるのではないかいという点で大きな不安でもある。菅官房長官が前文科事務次官に対してトランプ氏ほどあからさまではないにしろ「出会い系バーに出入りしていた」ことなどについて個人攻撃を疑われるような発言をしたことは記憶に新しい。しかも同じ会見の中で「責任者として辞意も示さず地位に恋々としがみついていた」などとも発言している。これは文科省内で天下りの組織的な斡旋が行われていたことの責任を前川氏が取ろうとしなかったという意味で、実際そうだったかどうかはわからないので、この発言だけを判断すれば個人攻撃とは言えないかもしれないが、現在の内閣には南スーダンの日報に関する複数の失態、さらには隠蔽疑惑(隠蔽自体は疑惑ではなく確実で、誰が主体的に隠蔽しようとしたかについての疑惑)、森友学園問題に関連する裁判出廷についての虚偽答弁、都議選での応援演説で複数の法律違反の疑い(疑いといっても法律違反である発言をしたのは確実)があるにも関わらず、それでも尚、職に留まっている防衛大臣がいるのだから、前事務次官にだけ前述のような物言いをつけるのは個人攻撃だと思える。
更に、都議選の応援演説で麻生副総理が「ここにいるマスコミの人は言っているだけだから。責任はなんもとらんわけです、この人たちは。それは事実でしょうが。しかも、かなりの部分、情報が間違っている。間違いありませんよ、俺、書かれている方だからよくわかる。読んだらこれも違う、これも違うなと。たぶん他の人も違うんだ。そんなものにお金まで払って読むかと。結果として、新聞は部数が減っている。自分でまいた種じゃないか。この間、ある新聞社の社長がそう言ったのがすごく印象に残っている。」と発言したようだ。何を指してマスコミの報道は間違っていると言っているのかは分からないが、どう読んでも「マスコミ、特に新聞は間違いだらけだ」と言っているように見えて仕方がない。しかし総理が自分の改憲に対する考えは読売新聞を熟読しろと言っていることなどから判断すれば、全ての新聞社がそうなのではなく、一部、要するに自分達にとって都合の良くない報道をしている新聞社に向けた発言だと考えられる。確かにどの新聞社にも過剰な解釈と思えるような記事を書く記者はいる。それを指摘したいならそれぞれについて具体的に批判するべきであって、(自分達にとって都合の悪い)新聞社は総じて間違いだらけで正しい記事は殆どないという様な論調で表現するべきではない。彼にしてみれば「そんな露骨なことは断じて言っていない」のだろうし、確かに明確にはそう言ってはいないが、彼の副総理という影響力の大きい立場を勘案すれば”誤解を招きかねない”発言は避けるべきである。そんなことも考えずにこのようなことを言ってのけるのもトランプ政権との相似点でだ。
またマスコミは責任を取らないと言うが、あなた達の政権、党内にも国会議員の資質が疑われるような自体に陥っても議員辞職せず、離党や大臣などの辞任だけで済ませ、何かしら理由をつけて本会議には出席せずに任期中の議員報酬だけは受け取ろうとする人が大勢いるし、中には不適切な言動を指摘されて都合が悪くなると、追求を避ける為としか思えないようなタイミングで都合よく具合が悪くなったり、病院へ逃げ込んだりする人もいることはどう思っているのだろうか。指摘するならまず身内をなんとかした方が良い。
更に自民党の二階幹事長も東京都議選の応援演説で、北朝鮮を「きちがいみたいな国」と表現したことについて、差別的な表現だと報道されたことなどを念頭に「言葉ひとつ間違えたらすぐ話になる。私らを落とすなら落としてみろ。マスコミの人だけが選挙を左右するなんて思ったら大間違いだ」などと麻生副総理と似たようなことを述べている。「きちがいみたいな国」という表現については「表現として必ずしも適切でないものが一部あった。注意したい」と釈明してから大した時間をおかずに行った発言だ。トランプ政権と違い安倍政権の関係者は、十分とは思えないながらも、頑なに謝意を見せないということはなく、場合によっては不適切な言動を認め謝意を示すことはある。しかし彼のこのような発言・姿勢や、大臣の職に恋々としがみつく防衛大臣などから分かるのは、彼らは謝罪・反省があるというスタンスを見せはするが、実際は「なんで俺達が理不尽な批判に晒され、非難されなければならないんだ」という思いのほうが強いのだろうという事だ。でなければ自分の不適切な言説の直後に、こんなメディア批判のような言葉が出てくることは考えられない。という事は、結局安倍政権の関係者らは頑なに不適切な言動を認めないトランプ政権と大した差はないとも言えるだろう。
世界各国多くの人がトランプ政権の醜態を見て「自国の政権でなくて良かった」と思うことが想像できる。当然自分もそのように思うのだが、現在の日本の政権は実はトランプ政権にオブラートを1枚被せただけの状態なんじゃないかとも思え、そう考えると恥ずかしいやら不安やら、そんな気持ちが沸き起こってくる。我々はトランプ政権のその酷さに慣れ始めている。同様に日本国民も安倍政権の酷さに慣れてしまってはいないだろうか。それはある視点で見れば、民主主義の崩壊に加担していることになるのかもしれない。