ハフィントンポストによると、企業や団体に在宅勤務など場所や時間にとらわれない働き方を推奨する「テレワーク・デイ」の第1回目が7/24に実施されたらしい。テレワーク・デイとは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に総務省や厚生労働省、内閣府などの行政機関が東京都および経済界と連携して展開する国民運動とのこと。いくつかの点で疑問を感じるのだが、テレワーク促進の効果は期待できるかどうかは後述するとして、まず、オリンピックと所謂働き方にどのような関連があるのだろうか。どうもオリンピックで更に混雑すると予想される通勤時間帯の交通機関の混雑を抑制するという名目でオリンピックと関連付けているようだが、個人的にはオリンピックに関して様々な不手際が取り沙汰される中で、とりあえず関連性の薄いことでも枕詞としてオリンピックを掲げることで、オリンピックそのものの必要性を強調しているように思える。深刻な労働環境の問題に関することを、関連性の薄いオリンピック肯定の為に持ち出すのはやめて欲しい。そして国民運動という表現だが、国民運動とはどんな性質のものなのだろうか。個人的にはその字面から、デモなどで訴えられるような一般的な国民側から国や企業などの権力へ向けて行われる行動・意思表示的なニュアンスのように感じるが、これはそれとは全く逆に政府や企業によって主導されている。国民運動という言葉を掲げることで、多くの国民が望んでいることを国民・政府・企業が一体となって行っているというような印象を誘導しようとしているように感じられる。その二つの点で既に胡散臭さを感じてしまう。
在宅勤務など場所や時間にとらわれない働き方・テレワークが今後認められるようになり、選択肢として促進されるべきだということは、自分も理解できるしその通りだと思う。しかし企業の協力を得られればテレワークを実現しやすい職種もあれば、そうではない職種があることも事実だ。個人的には、テレワークを実現しやすい職種よりも、実現し難い職種の方が長時間労働などの過重労働にさらされているように思う。例えば小売やサービス業などでの接客、先日新国立競技場の現場で自殺者が出て話題になったが、工事現場の作業員や現場監督など、比較的テレワーク向きだと思えるホワイトカラーの中でも個人のペースで仕事を進め難い営業職などだ。そのような職種は働く場所に縛られやすく、働く場所を自分の裁量で自由に決めるなんて到底実現できないと思う。そういう職種があるのに一部のホワイトカラー以外は恩恵が薄いテレワークなんて考え方を普及させようなどというのは不公平だとまでは言わないが、「テレワークを促進しよう!」と言われても、自分は蚊帳の外だとか自分には関係ないと感じるような人が決して少なくないと感じる。それでは完全に失敗しているプレミアムフライデーの二の舞になるようにしか想像出来ない。
テレワーク促進の理由には、所謂過重労働環境の是正以外に、子育て中の親や高齢者・障害者など通勤が人より負担になるような人の就業機会の拡大、通勤時間帯の交通機関の混雑緩和などもあるようだが、何よりもまず今働いている人々の労働環境の是正にどれだけ効果を与えるのかを重視した施策を行って欲しい。特にテレワーク・デイは2020年の「東京オリンピック・パラリンピックを契機に」なんて枕詞を掲げている働き方改革に関する施策の一つなのに、オリンピックのメインスタジアムになる予定の新国立競技場の建設現場で、過酷な労働環境が引き金になったと思われる労働者の自殺が問題になるという矛盾するような事態が起きている。確かに出来ることからこつこつとやっていかないと、この国の状況は変えられないことも事実なのかもしれないが、オリンピックだとか国民運動だとか、パッと見だけ耳障りのよい言葉を並べられると、国も企業も出来ることしかやらない、若しくはやってますというスタンスを見せておけばそれでOKと思っているんじゃないかと疑ってしまう。