毎日新聞が「20年東京五輪:木材公募「供出」「搾取だ」ネットで批判」という記事を掲載している。記事によると、組織委員会が選手村交流施設の建設に利用する木材の提供を、全国の自治体に呼びかけた事に対して、ネット上の一部で「五輪は搾取のための錦の御旗ではない」とか、大会のメダルの材料として不要な携帯電話や電子機器などの提供を募ったことを前提に「金属の次は木材供出か」などの批判が強まっているとのことだ。組織委員会は各地の特産木材が集まれば、大会コンセプトの1つである「多様性と調和」を示すことにも繋がるし、オリンピック後は木材を各地に戻し、学校などでオリンピックの遺産・レガシーとして活用してもらえれば、無償提供であっても自治体にもメリットがあると考えているようだ。この組織委員会の提供公募に対して、そのような趣旨に賛同したのか既に提供を表明している自治体もあるようだ。
自分は組織委員会の主張も理解できなくはないが、批判の声にも一理あると思う。確かに2020年のオリンピックを大多数の国民が期待する、喜ばしい・望ましいイベントだと感じているなら、オリンピック後に大会施設の一部としてかかわった木材が地域の施設で利用されることについて、素晴らしいとか誇らしいというようなイメージを抱くことになりそうだが、オリンピックって本当にやる必要あるの?とか、誰の為のオリンピックだかよく分からない、一部の人がオリンピック利権を事実上個人的な思惑で利用しているだけ、などと開催に懐疑的なイメージを抱く国民が多ければ、木材提供などする必要ないと感じるだろうし、無償提供なんて自治体財源の無駄使いと思う人も出てくるだろう。要するに2020年東京オリンピック自体のイメージ低下が記事のような批判を招いているのだと思う。
東京オリンピックに関しては、まず招致活動で首相が行った「(震災で事故を起こした福島原発は)アンダーコントロール」という無責任で事実とはかけ離れた発言があり、その後も「復興五輪」などという耳障りだけはよい、逆に言えばあまり実態の伴わない宣伝文句も掲げられている。更に当初の試算を大きく上回る大会予算や、建設費問題で計画転換を余儀なくされた新国立競技場の問題。そして東京都外の会場問題と、またも噴出したそれらの会場に掛かる経費の負担問題。如何に計画が杜撰だったのか、招致前にコンパクト五輪などと宣伝していたのに、オリンピック史上過去最大となった予算などがそれを物語っている。こんな状態では「騙された」と思う国民が少なくないことにも頷ける。個人的にも、テレビなどで五輪を盛り上げる為に芸能人などを呼んでイベントを開かれたことなどが報じられているのを見ると「無駄に税金使って浮かれるな」なんて印象を感じてしまうし、大会スポンサーになっている企業がCMなどで大会ロゴを使用しているが、自分にとってはむしろ悪い印象を抱かせる要素になってしまっている。
確かに招致してしまった以上「やーめた」と言えるような種類のイベントではないし、どうせやるなら出来る限りオリンピックによるポジティブな効果を最大にはしてもらいたい。だが、どの問題にしても組織委員の委員長も、オリンピック担当大臣も、都知事も謝意を示すようなことはない。結局誰が最終責任を負うのかすら曖昧で「船頭多くして船山を登る」ような状態に見えてしまうようでは、オリンピック自体に好意的な印象を持てない人が増えるのも仕方がないことだと思う。そう考えれば毎日新聞の記事のような批判が起こるのも仕方がないことのように思える。