昨日・8/3、宣言されていたように内閣改造人事が発表された。前日までに予想・内定が報じられていたほぼそのままの人事が午後一番で発表された。その後は組閣の手続きが行われ、夕方には安倍首相がそれを受けた記者会見を行った。会見の一部始終を見た個人的な感想は「内閣改造だなんだと言っても、結局この人の頭の中は何も変わっていないのではないか」という事だった。要するに適当に耳障りの良い文言をずらずら並べただけの、中身が今後伴うと期待できないような主張が行われたように見えた。自分は支持率が低下し始める前から首相や政府与党の言動・振舞いに不信感を持っていたし、今年に入ってからはそれにかなり拍車が掛かっていたので、そのような先入観があるから余計にそう思えるのかもしれない。これから昨日の首相の会見に批判的な指摘を書く。その手の表現をすると”揚げ足取りだ”という批判がされることも理解しているが、率直な個人的な受け止めをそのまま書いてみる。
まず会見の冒頭で安倍首相は、
先の国会では、森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、さまざまな問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。そのことについて冒頭まず改めて深く反省し、国民の皆様にお詫び申し上げたいと思います。国民の皆様の声に耳をすまし、国民の皆様とともに政治を前に進めていく。5年前、私たちが政権を奪還した時のあの原点にもう一度立ち返り、謙虚に丁寧に国民の付託に応えるために全力を尽くす。ひとつひとつの政策課題にしっかりと結果を出すことで、国民の皆様の信頼回復に向けて、一歩一歩努力を重ねていく。
と反省の弁を述べた。この発言の時点で既に反省と口でいっているだけのようにしか思えなかった。何故なら、彼が反省しお詫びをしているのは”大きな不信を招いた”ことについてのようだが、これまで森友・加計問題・日報隠蔽に関して、首相や政権与党関係者の関与は一切ないと主張しているのだから、不信の理由は誤解を招ねいた意思決定の不透明な進め方ということになる。要するに、この発言は「これからは誤解されないように気をつけます」と言っているように思える。ということは、彼の中では森友・加計・日報のどの問題も、既に誤解という事で決着したという認識なのだろう。それは森友・加計問題に関しては、次の議論の場が設定されておらず、日報問題に関しても、特別防衛監察の責任者である前防衛大臣の閉会中審査への召喚を拒んでいることから、既に隠蔽疑惑は完全に解明されたので後は新防衛大臣が結果の詳細を説明すればそれだけで充分だ、と考えているように見えることが裏付けている。更に言えば、支持率の急落の要因の一つである共謀罪の強硬な方法での採決に関しては一切触れられておらず、人によっては「さまざまな問題」という表現に含まれているという見解もあるかもしれないが、具体的に触れないということはそれについては全く問題性を感じていないとも考えられる。個人的には森友・加計・日報・共謀罪のどの問題もまだまだ真相解明には程遠い状況、または適切な議論が充分に行われたとか、適切な可決手法だったとは言えない状態で、記憶も記録もないけど関与はないから信じろ的な説明や、あんな乱暴な論法・可決方法では、全く”丁寧な説明”だなんて思えないし、問題は決着した・丁寧な説明が充分に行われたと当事者が勝手に判断して欲しくない。丁寧な説明だったか判断するのは説明を受ける側だし、問題が解決したか判断するのも彼ではなく国民だ。
しかもそんな矛盾の多い反省の姿勢を前提に「国民の皆様の声に耳をすまし、国民の皆様とともに政治を前に進めていく」なんて言われても、国民の声から目を逸らした反省の弁を述べていること自体が、既に国民の声に耳をすましていないのだから、そんな言葉に信憑性を感じられないのは当然だろう。それは結局「国民の皆様の信頼回復に向けて、一歩一歩努力を重ねていく」ことが期待できない事を物語っている。
更に首相は、
今回の組閣では、ベテランから若手まで幅広い人材を登用しながら、結果重視、仕事第一、実力本位の布陣を整えることができたと考えています。最優先すべき仕事は、経済の再生です。安倍内閣はこれからも、経済最優先であります。
と困った時の”経済最優先”をまたも強調し、経済分野に関連する大臣から紹介を始め、交代した主要な大臣を紹介し終えると、
この内閣は、いわば、結果本位の仕事人内閣であります。国民の皆様の声に耳をすまし、国民の皆様と共に、政治を前に進めていく。そして、しっかりと結果を出していく。その決意でございますので、皆様のご理解とご協力をご支援を、お願い申し上げます。
と述べた。安倍内閣は国民へのご機嫌取りが必要になると、必ず経済最優先を強調し始める。前回の衆院選でも憲法改正のけの字にも触れず、経済経済と言い続けていた。今回の会見ではこれまでの経済政策の成果として有効求人倍率の改善を主張している。しかしその一方で実質賃金は下落し続けているし、当初から掲げている物価上昇率2%の目標は全然達成出来ず6度も目標達成時期を延期するような状態だ。一応今回の会見では都合の悪いことから目を逸らしているという批判をかわす為か、それらの点にも触れてはいるが、既に5年もの時間をかけているのに”まだ道半ば”というイメージを作ろうというのは、果たして適切な主張と国民に受け止めてもらえるのだろうか。個人的にはこれまでの他分野の不適切な言動をカバーするほどの力は、もうそこには残っていないように思える。
また「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣を整えることができた」「この内閣は、いわば、結果本位の仕事人内閣であります」という話だが、通常どの内閣も”結果本位の仕事人内閣”でなければならないし、大臣の人選で、経験をつませると言う意味では実力本位では無い場合もあるかもしれないが、結果重視、仕事第一ではない場合があるのだろうか。そんな当然のことを強調しなければならないほど、前内閣は不適切な言動・不祥事が多く大臣の資質に欠ける者が複数いた、肩書きを増やさせる為に選んだ、若しくは人気取りだけの資質の伴わない客寄せパンダがいたということだろうか。そしてその惨憺たる状態を改善する為には今回の内閣改造が必要だったと理解してよいということなのだろうか。しかしそれでは冒頭の反省の弁では”そのようなことは(前内閣が惨憺たる状態だったということは)なく、あくまで誤解だ”というような言い方で、”誤解を招いたこと”だけが悪かったかのような言い草で説明していることと大きく矛盾するように見えてしまう。そんな説明の最後に再び「国民の皆様の声に耳をすまし、国民の皆様と共に、政治を前に進めていく。そして、しっかりと結果を出していく」などと言われても、全く期待感を持てないし、信憑性も感じることが出来ない。要するに国民の声に耳を貸すとも思えないし、国民と共になんてのは口だけだとしか思えないということだ。
今回発表された内閣人事は、これまでの酷い状態が少しでも改善されるかもしれないという点だけで言えば歓迎するべき内容かもしれない。しかし自分が気になるのは、支持率低下・都議選大敗後も変わらず強硬な発言を続けている二階氏が幹事長に留任していたり、全く容認できない理由で参考人承知や閉会中審査へ消極的な姿勢を示し続けた竹下前国対委員長が、ポストは変わってはいるものの、党の要職に再び名を連ねていることだ。これは結局、内閣改造とか、経済最優先とか、人づくり革命などという分かり難いポストの新設とか、様々な方法で印象改善をしようとはしているが、安倍首相や党の首脳陣の考え方は殆ど変わっていないことの表れのように思える。