8/3に新たな人事での内閣がスタートし、河野外務大臣がフィリピンでの国際会議に出席し一定の存在感を示したり、小野寺防衛大臣が沖縄米軍基地所属のオスプレイがオーストラリアで墜落した件を受けて、今年起きた沖縄での不時着(墜落という見解もある)も踏まえ、原因が究明されるまでの期間、国内でのオスプレイ飛行自粛を米軍に要請したりと、安倍首相が宣言した”結果本位の仕事人内閣”ということをアピールするような動きを早速見せている。安倍内閣への評価がそれだけで回復するとは流石に思えないが、刷新前の惨憺たる状況を考えれば、とりあえずは順調な滑り出しかとも思えた。しかし就任からたった2日で結果本位の仕事人内閣とやらに水を差すような発言をする大臣が、またもや現れた。
ハフィントンポストによると、江崎沖縄北方担当大臣は地元で支援者らが行った就任祝賀会後、記者らの質問に対して、今後の国会答弁では間違いを避けるために「役所の原稿を朗読する」とか「しっかりお役所の原稿を読ませていただく。立ち往生より、ちゃんと答弁書を朗読かな」などと述べたそうだ。更に「自分の思いで話すと、どこかで揚げ足を取られかねない。間違えたことを言ってはいけないという意味。答弁書を自分でチェックした上で読む」とも発言したそうだ。北方領土問題についても「素人は素人」と発言し、自分は素人であると宣言していたらしい。江崎氏は今回の大臣就任要請に対して1度固辞したようだが、所属派閥に対する唯一の大臣要請だったことが念頭にあったのか、二階幹事長に「なんで断るんだ! これは派閥の総意だ!」などと激怒され、一転就任することになったことを複数メディアが報じている。江崎氏の発言は大臣を嫌々やらされている感が如実に表れているように自分には見える。恐らく嫌々務める大臣だから責任感が薄く、自分が明るくない分野の責任を負わせられるのも本意でなく、だから単なる情報伝達係に徹しようというのが本音なのだろう。しかし大臣が単なる情報伝達係でいいはずがない。それでは官庁の単なる広報係だ。彼がそんなつもりなら少なくとも報酬は是非全額返上してもらいたい。
更に翌日の釈明も酷かった。朝日新聞によると「不用意な発言で軽率だった」としながらも、「(答弁書の)原稿をチェックして、自分なりに加えるところは加える。省くところは省く。こうしたもの(答弁書)を参考にするということだ」と述べたそうだ。このような真意が「役所の原稿を朗読する」という表現になったのは”謙虚に話をした”結果だ、とも述べたそうだが、自分には彼の釈明は苦しすぎる言い訳にしか聞こえない。実際には役人に指示を出して用意された原稿を基に発言する側面が強いのかもしれないが、「原稿を自分なりにチェックして...」なんて堂々言えてしまう時点で「僕は実質的な仕事は出来ません。全部役人にお任せで結果を報告するだけです」という本音が見え隠れしているように思える。北方領土問題は「素人」と発言したことに関しても「北方領土問題は外相、日ロの経済協力事業を推し進めるのは経産相。私が肩ひじ張って出ることも好ましくないし、あのような表現になった」などと、沖縄”北方”担当大臣の存在意義を自ら否定するような発言をしている。彼が謙虚さが何より重要だと思っているなら、能力不足を謙虚に受け止め辞任という決断をするべきだ。確実に他に彼より適任な人物がいるだろう。
更に、前日、記者の質問に対して前述のように答えておきながら「活字にされたことに疑問符を投げかけなきゃいかん」と、まるで記者が揚げ足を取って実態と大きく異なる記事をでっち上げたとでも言いたげな主張までしたらしい。彼の言い訳は、都議選で「自衛隊、防衛省、防衛大臣、自民党としてお願いしたい」と明確に発言しながら、「自衛隊、防衛省、防衛大臣とは言ったが、そういう意味じゃない」とか、「日報には戦闘と書かれているが、法に抵触するので法的な”戦闘”ではない」なんて容認し難い釈明・説明をした稲田前防衛大臣にそっくりだ。安倍政権内では、低姿勢なだけでは結局責任を認めることになりかねないから、ある程度無理矢理でも逆ギレ的な発言もしておけというような方針でもあるのだろうかと疑ってしまう。
冒頭でも触れたように、勿論しっかり仕事に邁進しようという大臣もいるだろう。全員が江崎氏のような態度・姿勢だったらそれこそ一大事だし、そんな状態ならそもそも安倍政権はとっくに崩壊しているだろう。しかし首相が自ら胸を張って”結果本位の仕事人内閣”などと宣言してからたった2日で、そのイメージを大きく損なうような出来事が起こったことは見逃せるような事態ではない。何故ならこれまでの内閣に江崎氏と同じような大臣が複数居た事が内閣改造が必要だった理由だし、内閣改造後も似たような大臣の存在が直ぐに発覚したという事は、安倍首相ら政府の首脳陣に人を見る目がないことを露呈しているということになるからだ。米トランプ政権でも人事に関する奇妙なというか、最早珍妙と言っても過言ではない事態が連発し混迷を極めている。それに比べれば日本はまだマシかもしれないが、マシだから問題ないのかと言えば全くそんなことはなく、首相には派閥間の人数バランスとか当選回数よりも、大臣に対する適正が本当にあるのかどうかで人選を行って欲しい。資質の無い大臣に報酬が払われるのが好ましくないという気持ちもあるが、それよりもなによりも適切な政策が実施されないということの方に強い懸念を感じてしまう。江崎氏の発言だけを見ればそれは些細なことかもしれない。しかし発言のタイミングの悪さから、改造前の惨憺たる状況がまた繰り返されるのかという想像をしてしまう人は決して少なくないだろう。