奈良・天理市の市長が予算の陳情などで出張していた東京の宿泊先に派遣型風俗・所謂デリヘルを呼んでいたという記事を週刊新潮が掲載したようだ。自分は週刊新潮の記事を読んだわけではなく、それを元にしたハフポストの2次的な報道でそれを知ったのだが、一部の大手新聞社なども週刊新潮の記事を引用するなどしてこの件について伝えているようだ。確かに市長と言う極めて公な立場の人間についての話だし、その人柄というものは次の投票行動の目安になるだろう。ただ個人的には、例えば、児童買春の疑いがあるとか、公金で性風俗を利用していたなど明らかに違法な行為があったのなら報道されることも理解できるが、出張中であっても公務時間外の違法ではない行為についてまで報道されることにはやや違和感を覚える。百歩譲って週刊誌が芸能ゴシップ的に扱うことは、彼らが名誉毀損で訴えられるリスクと引き換えにしてでもこのような記事を載せるメディアという認識があるので、賛同は出来ないものの想像はできるが、果たして大手新聞社などシリアスなメディアが取り上げる必要性があることなのだろうか。
市長はこの報道を受けて、定例会見後に記者の質問に対して、
「プライベートな時間の中でのことだが、市民の皆さまや市職員、そして家族に申し訳ない。痛切に反省している」
と釈明している。まず、たとえプライベートな時間であっても市長が性風俗の利用していたというのは誰もが好ましくないと感じることだろう。しかし、性風俗の利用自体は違法な行為ではなく、違法ではないプライベートな行為を一方的に暴露されることも決して好ましいことではない。市長のコメントから彼に家族がいることが分かるが、もし配偶者が居るのだとしても、性風俗の利用が絶対的に悪いと部外者が決め付けることは出来ない。配偶者が不満を感じており、配偶者が情報をリークし週刊新潮の記事が書かれたのなら、この件が報道されたことはある程度理解できるが、ハフポストやいくつかの大手新聞社のサイトの記事を読む限り、そのような記述は一切見当たらない。要するに市長が性風俗を利用したことは不貞行為に当るかもしれないが、それについては当事者間の問題であり、メディアや一般市民など部外者が必要以上に介入すべき事案ではないと思う。
公務出張中に出張費で賄われている宿泊先にデリヘルを呼んだことを問題視する人もいるだろうが、個人的にはこれについても特別な問題ではないと感じる。これについて問題視する理由は、出張中という状況は、公金で交通費・宿泊費などの旅費が支払われているのだから、公務が終わった後の時間も公的な立場が持続しており、著しく私的な遊興を行うべきではない、という思考ではないかと想像する。
もしその考え方が適切ならば、公務を終えた後に、例えば出張先の地域に住む友人などと食事をするようなことも慎むべきだ、ということになってしまいそうだ。要するに出張のついでと称して友人に会うなら、その為の交通費・旅費とも考えられるから、公金負担ではなく自分で支払うべきだということにもなるだろう。
また、別の視点で考えれば、デリヘルを呼べないホテルは結構多く存在し、出張先で風俗を利用したい場合、宿泊するホテルとは別にデリヘルの為だけにラブホテルを休憩利用することは決して珍しいことではないので、市長が公金で賄われる宿泊先ではなく、ラブホテルを別に用意してデリヘルを利用すれば問題はなかったという風に、公務出張中に出張費で賄われている宿泊先にデリヘルを呼んだことを問題視する人は考えられるのだろうか。
週刊新潮の記事では、デリヘルでは許されない所謂本番行為を行っていた疑いがあるとも指摘しているようなのだが、これについて市長は、
「定められたサービスの範囲であり、違法行為はなかった」
と否定している。確かに実際に本番という違法行為があったのなら話は大きく変わってくるが、もしこの事実がなかったのなら週刊新潮の記事は名誉毀損に該当する恐れがかなり強まる。勿論新潮も全く出鱈目を書いているわけではなく、少なくとも接客した女性か、派遣した店の関係者などに取材をしているのだろうが、それにしたって当事者の証言だけでは心許ない。今後何かしらの物的証拠が示されるのかには注目する必要がある。
自分はこの市長の現地での評判を知らないので、市民がこの記事を「信用し難い、いい加減な記事」と感じるのか、「ああ、やっぱり」と感じているのかは分からない。9/24には天理市の市長選があるようで、現市長は2期目を目指し立候補を表明しているようだ。市長は反省という言葉をコメントで使っているので、この報道を理由に天理市民が投票先を決めること自体は問題のないことのようにも思うが、このような報道が選挙に確実に影響を与えることを考えれば、プライベートに踏み込みすぎた記事の内容には疑問を感じる。特に本番という違法な行為があったかどうかについては、確証があるなら明確に報道するべきではないだろうか。もしこの部分が虚偽の情報だったなら、選挙妨害と言われても仕方ないように思える。