9/15の朝、前回と同じ津軽海峡の上を通るルートで北朝鮮がミサイルを発射した。今回は前回よりも更に飛距離が伸びており、各メディアは方向を変えれば、以前北朝鮮が攻撃を検討していると示唆したアメリカ軍の基地があるグァムに到達すると指摘している。そして今回も前回同様に政府が一部の地域にJアラートを発令し、それを受けてテレビは大きな災害が起きた時のようなテロップ入りで番組を放送し、朝のワイドショーの時間帯だったこともありこのことで大騒ぎし、一部の新聞は前回同様号外を出していた。以前も指摘したかもしれないが大騒ぎしたところで何も変わらないのに、騒ぎすぎだとしか思えない。確かに重大な事件であることは間違いないが、政府が言うように発射の兆候を事前に察知していたなら大きな被害が出ることはないと予測できただろうし、現に誰も怪我していないし直接的な物損さえ皆無なのだから、政府・マスコミぐるみであんなに大騒ぎする必要が本当にあるのか、かなり疑問だ。
Jアラートに関する疑問もかなり大きく、大騒ぎの不必要さを再認識させる大きな要因だ。前回同様今回もJアラートが発令された地域の人々から、「避難しろといわれても、周辺に鉄筋コンクリートの建物も地下施設もない。結局何も出来ない」という旨のぼやきにも似たコメントが多く出ていた。自分はこれを見て、黒澤明監督のオムニバス形式の映画「夢」を思い出した。その中に「赤富士」という話がある。富士山が噴火し、その影響で原子力発電所が爆発するという話だ。映画の中で放射能は危険性を察知しやすくなるようにと、架空の新技術で着色されて目に見えるという設定になっている。
劇中では放射能は気体のように漂ってくる色の付いた煙のように表現されている。放射能の危険性が目に見えたとしても、そこかしこに漂っていればその危険から逃れるのは困難で、放射能に着色して危険性が見えるようになっても危険であることは変わらず、本質的な問題解決になっていないという話だ。
現在のJアラートは、黒澤明監督が劇中で描いた着色された放射能と同じ無意味なもののように自分には感じられる。厳密に言えば全く無意味ではないことは理解できるが、多くの人が言うように「で、どうしろと言うのか」としか言えない代物で、あまり役に立たないシステムに思える。
ハフポストは「Jアラートに意味あるの?再び論争に ホリエモン『さっさとやめるべき』」という記事を掲載している。まず自分は堀江貴史氏について、特にネット上では高飛車な上から目線な発言を繰り返しており、正常な議論が出来るようなタイプの人ではないと考えている為、記事の彼の発言に関する部分については無視することにする。この記事では、民進党の枝野氏の見解や危機管理が専門の学者の見解を紹介している。枝野氏によれば、中東で戦場を経験した大野議員の受け売りなのだそうだが、爆風による被害を避ける為に窓から離れることなどは大きな意味があるそうだ。また青森中央学院大の大泉教授によれば、地面に伏せて頭を守るという方法は、イスラエルでも周知されている防衛術で、致命傷を免れるために必要なことだそうだ。要するに直撃を受ければ甚大な被害を受けることは免れないが、致命傷になるかどうかの瀬戸際の状況だった場合に、被害を最小限にする為には、Jアラートで警戒を促すことには効果があるということなのだろう。
確かに話は理解できるし、前述したように厳密にはJアラートが無意味ではないということは分かる。しかし相変わらずミサイル通過後になって警報が鳴る地域があるなどシステムの不備が指摘されたり、前述のような認識を周知できていないことには問題がある事が明白だ。勿論国民一人ひとりがもっと積極的に認識を高めるべきであることも事実だろうが、結局そうならないのは、政府やマスコミが不安ばかりを大きく煽っているという側面が強いとからだとも思う。特にワイドショーなどがミサイル発射の映像に、映画などで場面を盛り上げる為に使われそうな、如何にも不安を煽るタイプのBGMを付ける演出を行っていたりするのには強い違和感を感じる。
以前にもどこかで書いたかもしれないが、日本人が大騒ぎしているのを見て北朝鮮当局はどのように感じるだろうか。どう考えたって少なからず「やってやったぜ」的に図に乗るような考えが生まれるだろう。勿論だから完全に無視するべきだとか、ミサイル発射について政府やマスコミが触れる必要性はないなんて言わないが、もう少し冷静な対応が必要なのではないだろうか。自分には政府やマスコミ自体が冷静な対応を欠いているように思える。それなのに国民に対して「冷静に・落ち着いた対応が必要です」なんて言っているのがとても滑稽に思える。関係各国や国民への影響を考えれば、マスコミなどの論調・演出、政府発表の言葉選びなどについても慎重さが必要だし、新聞がこれについて割く紙面の面積や、テレビがこの件について扱う時間の長さも、同様に適切な量を考えて欲しい。政府は支持率や選挙のために、マスコミは商業的な理由で必要以上に不安感を煽っているように思えてならない。