連休中の日曜日・9/17の午後、いくつかのメディアが安倍首相が衆院の年内解散を検討していると報じた。この時点で既に最も早いスケジュールだと、臨時国会召集日の9/28に解散し10日公示・22日投開票になるということにも触れられていたが、この第一報を見た自分は、それが現実になる可能性が本当に高いのかについて懐疑的だった。しかし翌日の朝のニュースや朝刊はこの件で持ちきりだったし、政府広報という評価もある読売新聞もその可能性が高いことを伝え、更に「消費税10% 使途変更問う / 借金返済から子育て支援へ」なんて選挙を行う理由まで書いていたのだから、ほぼ間違いないのだろうと思えた。
しかし消費税の使い道に関しては、野党第一党の民進党も似たようなことを言っているし、解散するにしたって臨時国会でそれについて議論を行ってから、国民にその是非を問いたいなら、まず判断材料となる議論を見せるべきだと自分は考えるので、臨時国会の冒頭での解散なんてのは選挙に有利だからという判断が優先されているとしか思えない。
安倍首相は9/18の午後、国連総会の為に日本を発つ直前に記者らにこの件について問われ、
衆議院の解散については、いちいち答えるのは差し控えるが、帰国後に判断したい
と述べたようで、解散時期についてもその理由についても、まだ具体的には考えを示しておらず、正式に決定した話ではないというアピールをしている。恐らく読売新聞などが報じた内容にどのような反応を国民が示すのか様子見、評判が悪ければ修正するという方針なのだろう。しかしその後の自民党幹部らなどへの取材などで明らかになっているように、臨時国会召集日の解散はほぼ決定事項のようだ。安倍首相が帰国後どのような解散理由を示すのかによっても変わる話ではあるが、彼が解散理由に「加計学園・その他の今年度前半に起きた諸問題によって不信感が高まった現内閣への信任を問いたい」というようなことを上げないのであれば、通常国会終了直後に行う必要があるとしていた丁寧な説明というのは、たった数日の閉会中審査で尽くしたと考えているという事になる。臨時国会を避けるということは、もう充分に丁寧な説明を行ったのだからこれ以上の説明は必要ないと言っているのと同じだろう。もしそうではないなら、臨時国会で議論を行ってから解散について考えるべきではないのだろうか。どうも安倍首相は自身の保身を優先し、野党やマスコミの先に居る国民を軽視しているように思える。
国民を軽視していると思えてしまう要因は、前述した9/18のコメントにも感じられる。「解散については、いちいち答えるのは差し控える」という表現からも感じる。”いちいち”という表現からはどうもネガティブな印象を感じてしまう。”いちいち”とは”一つ一つ”という意味だが、「いちいち答えるのは差し控える」と言われたら、”面倒だから”とか”手間が掛かるから”というようなニュアンスが感じられてしまう。自分は、似たような質問を記者がいくつも投げかけたか、若しくはそれを安倍首相が想定して、そうならないように先に牽制したのだろうと想像する。それにしたって「”一つ一つの質問に”答えるのは差し控える」と言えばよかったのに、”いちいち”と言ってしまったことで、記者や、記者が書いた記事を読む読者・国民をどうも軽んじているように見えてしまう。このようなことを書くと「言葉尻を捉えた稚拙な批判だ」などと言う人もいるだろうが、政治家とは言葉で議論を交わすことを生業とする、文筆家・文学者ほどではないにしろ言葉に敏感でなければならない種類の人々だ。また、このような指摘を安倍首相自身に投げかけたとしても「誤解を招く発言だったがそのような意図はない」などとするのだろうが、誤解と思えるかどうかは聞き手・受け手側が判断することで、人間には本音と建前があるのだから、このような表現は漏れ出た本音だと思われても仕方がないことだと思う。
と、自分には今回の解散(の検討)については、あからさまに選挙に有利なタイミングである事を最優先した、出来の悪い方針のように思えるが、安倍首相が会見で帰国後どのような考えを示すのかが今から楽しみだ。是非とも大多数の国民が納得できる説明を行ってもらいたい。