「ストックフォトにも多様性を。ウェブ広告の写真で「人種格差」をなくすために立ち上がった会社がある」、ハフポストが9/15に掲載した記事だ。ストックフォトとはウェブなどで使う為の写真素材の事で、概ねそれらを集め多様な写真素材を広く提供しているサイトやサービスの事を指す。サイトによって有料無料などの違いもある。ストックフォトで扱われる写真に写るモデルは白人の比率が高いという事に疑問を感じた写真家と企業家がモデルが白人に偏らないように多様性を重視し、新たにストックフォトを扱う会社を立ち上げたという内容だ。この記事はハフポストのUS版の記事なのだが、他民族国家であるアメリカでは、特に白人と黒人の間でのこのような格差が話題になる。アカデミー賞で2年連続全ての受賞者が白人だけになったことで、黒人の俳優・映画関係者らが不快感を強く示すなんて話があったことは記憶に新しい。また、警察官が黒人の容疑者を安易に、場合によっては未成年者でも射殺してしまうなんてことが度々起こっている。建前上人種・民族を理由に対応を変えたり、扱いが違うことは差別的で許されないとされているが、未だにそれが実現出来ていないのが現実なのだろう。
人種・民族間に溝があるのは何も白人と黒人の間だけではない。1992年のロス暴動では、韓国系商店主が、黒人少女が万引きしたとしてその場で射殺してしまったことも暴動が起きた要因の一つだった。とは言え、やはりアメリカに限らず欧米では、地域によって程度の差はあるだろうが、白人と非白人の格差や差別が最も根深いと言えそうだ。
自分が記憶している外国人を扱ったテレビ番組の草分け的な存在は、ビートたけしがMCをしていた「ここが変だよ日本人」だ。勿論それより以前にもその手の番組はあったかもしれないが、自分の記憶ではこの番組の存在は分岐点だった。その後、外国人の目線で日本を考察する番組や、日本と他国の文化の違いを比較する番組などが多く作られるようになり、波はそれなりにあるが、数年前に何度目かのブームのピークがあった。現在は少し落ち着いているが、テレビ東京では「YOUは何しに日本へ」や「世界ニッポン行きたい人応援団」などその手の番組を複数放送している。自分もその2つの番組はとても興味深いと感じるし、毎週楽しみにしている番組だ。日本に来た外国人をターゲットにするか、外国へ取材に出向き、日本へ行きたい外国人を番組で招くかの違いはあるが、共に外国人が日本で各々興味のあることを体験する姿を取材するというのは両番組の共通点だ。近年、外国人観光客が倍増しており、日本人の方の彼らに対する興味も増していることもあって人気を得ているのだろう。
まず先に注釈しておくと、これから書くことでそれらの番組は差別的だとか、偏見があるとは決して思っていない。しかしどちらの番組も取材対象になるのは白人であることが多いように思う。アフリカ系・アジア系・イスラム系が取材対象になることがないわけではないが、確実に白人に比べて少ない。取材する側にも出来れば白人を対象にしようという意図が、意識的か無意識かは分からないが、少なからずあるのかもしれないと想像する。
まず「YOUは何しに日本へ」に関してだが、この番組は主に空港で旅行者に声をかけて密着取材をする形式だ。しっかりと調べたわけではないので大雑把な話だが、白人・黒人・イスラム系民族の旅行者の比率はもしかしたら白人が最も多く、普通に取材すれば白人の比率が高くなるのかもしれない。しかし、現在日本を訪れる外国人旅行者の多くはアジア系だ。特に中国人と韓国人がその大半を占める。ということは無作為にインタビューをしていれば、アジア系、特に中国人・韓国人が最も多くなるはずなのに、番組を見ていてもそんな印象は全くない。確かに、アジア系、特に中国人・韓国人は日本人とパッと見で見分けがつきにくく、外国人をターゲットにインタビューを行おうとすれば、スルーしてしまうケースが多くなってしまうことは想像できる。しかしそれでも最近増え始めている東南アジア系も少ないことは説明が付かない。また、中国人はその多くが団体旅行で訪日している点を考慮すれば、もしかしたら他のアジア諸国も似たような状況なのかもしれないし、団体旅行だと密着取材に繋げ難いという思考で敬遠しているとも考えられる。なので決して白人にわざと偏らせて取材しているとは思わないが、密着に繋がるのは白人である場合がとても多い為、自分は東アジアから中東まで広いアジア諸国の人々がどんなものに興味を持っているのか、またアジアの中でもどのような地域差があるのかも見てみたいとも感じる。そんな理由から、白人以外に密着する率をもう少し高めて欲しいとも感じている。
次は「世界ニッポン行きたい人応援団」に関してだが、こちらは取材班が各国に赴き、現地で取材対象を探したり募集したり、SNSなどで立候補を募ったりして面白そうな人を日本へ招き、その人の興味がある分野に関する体験を番組側が準備して取材するという形式だ。こちらの番組もこれまで自分が視聴してきた印象だと、取材対象の殆どが白人だ。取材班が訪れる国が欧米ばかり、たまに南米というような状況で、その結果日本に招くのは殆ど白人になっている。自分はアフリカやアジアの国で取材を行っている回を見た記憶があまりない。取材を行っている制作会社にも得意な国や地域などがあるだろうから、偏見による偏りではないだろうと思っているが、やはり自分はアジア人が日本の何に興味持っているのかも見てみたいし、日本人から地理的にも、情報的にも現在最も遠いアフリカの人々のそれにも大変興味があるので、今後は是非”世界ニッポン行きたい人”という番組タイトルが羊頭狗肉にならないようにという意味でも、それらの地域への取材もぜひ行ってもらいたい。
一応フォローをしておくと、テレビ東京の他の外国・外国人を扱う番組では、アジアやアフリカ地域へ多く取材を行っている番組も確実にある。
誤解のないように再度宣言するが、これらの番組が偏見に満ちているとか、差別的だなんて少しも思ってはいない。でも確かに出演する外国人が白人に偏っていることは事実で、人によっては「日本人は白人びいき」なんて印象を持つ人も居るかもしれない。今、日本でも外国人、特に在日朝鮮人や中国人・それらの国にルーツを持つ日本人に対して差別的な発言を悪びれもせず堂々としてしまう愚かな人々がおり、社会的な問題になっている。この状況が更に深刻化すれば、もしかしたら前述の番組らが槍玉に上がるなんてこともあるかもしれない。自然な成り行きで今の状況になっているのだろうから、そんなことを懸念して、バランスを取らなくてはと配慮しすぎるのもどこかおかしいようにも思えるが、自分は率直な興味として「YOUは何しに日本へ」にも、「世界ニッポン行きたい人応援団」にも、欧米だけでなくその他の地域や人々へ、もっと積極的にスポットを当てて欲しいと感じる。