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平昌オリンピックサイトの世界地図とクルド人自治区独立投票から考える


 平昌オリンピックの公式サイトに掲載されていた世界地図に日本列島と樺太がなかったことが大きな話題になっている。現在は既に修正されているが、複数のメディアが「下請け業者のミスだった」という説明がなされたということを伝えている。要するに意図的に日本列島(と樺太)を削除したという嫌がらせ的な要素は一切ないということなのだろう。という事は、管理者は欧米かどこかの東アジアから遠く離れた国の企業だかWebデザイナーだかに制作を依頼していたのだろうか。東アジアに馴染みのない国の人が誤って日本列島を切り取ってしまったのなら、そんなこともあるかもとも思えるが、韓国人のWeb制作者が担当したならば、そのような間違いが起こるとは考え難い。”誰の”かは特定し難いが、意図的に日本と樺太が切り取られた恐れは相当高いとしか思えない。

 
 自分は大学生時代に国際関係論という中国・台湾・香港・朝鮮半島と日本に関する近世以降の国際関係史や諸問題に関する講義を受講していた。全学年対象の科目だったが受講生の殆どは1年生だった。最初の講義で教授が「台湾はどこか」と問う場面があった。自分は「そんな当たり前過ぎることを何故聞くのか」と不思議に思ったが、回答を求められた女子学生が海南島を指して驚いた。確かに歴史や地理などの社会科系科目を選択しなくても受験できる大学ではあったが、地球の反対側にあるアフリカや南米の小さな国の正確な位置が分からないならまだしも、東アジアの基本的な地理はいくらなんでも一般常識の範疇だろうと感じた。恐らく教授は以前にも同じような経験をしていたから最初の講義でそんな質問をしたのだろう。
 冒頭の件について意図的である恐れが強いとは思いながらも、韓国にも自分の同級生と同じような地理や国際関係に疎い大学生がいるかもしれないし、そのような者が学生アルバイトでWeb制作現場にいたかもしれないと考えると”単なるミス”である可能性も全くないとは言えないかもしれないとも思えた。しかしそれでもオリンピックという国家単位の重要なイベントの公式サイトであることを考えれば、Web制作現場やサイトの管理者、韓国のオリンピック関係者は、もっと厳重にチェックを行うべきだっただろうし、現在の微妙な日韓関係を考えれば、意図的に日本を切り取った嫌がらせ行為だと指摘を受けても仕方がないことだと思う。
 
 しかし現在日本のネット上で盛り上がっている、この件に関する過剰とも言える反応も同様に愚かな言動としか思えない。たとえそれが韓国側の意図的な嫌がらせ行為だったのだとしても、慰安婦問題や徴用工問題に関して行われる過剰な主張や、竹島・独島問題のように、その行為で何か我々に明確な不利益がもたらされるわけではない。確かにこのようなことに対してそれなりの不快感を示す必要はあるだろうが、必要以上に、そして過剰に相手を批判したり、罵倒するような行為は第三者の視点ではどのように見えるか考えた方がいいだろう。愚かな煽り合いをやめない北朝鮮当局とアメリカ大統領が国際的にどんな評価をされているかを考えれば、あまりにも過剰な反応を示せば、日本人も稚拙な嫌がらせをするような者と同レベルだと見なされてしまう恐れが非常に強い。
 一部の一般市民がそのような反応を示すのはある意味では仕方がないとしても、政治家が同じようなスタンスを示すことは更にそんな懸念を高めることに繋がると考える。ハフポストの記事によれば、自民党の山田議員は”断固抗議”なんて言葉を使っているし、菅官房長官も、そこまでにはないにせよ、不快感を示すというより重大な事態だという懸念を示していたように自分には見えた。(山田議員や菅官房長官だけでなく過激な言葉を並べている一般人も含めて)彼らは適切な対応だと思っているのだろうが、自分には虚勢を張るというか過剰な勇ましさのアピールというか、自己満足の為の言動のようにさえ見えてしまう。なぜもう少し落ち着いた大人な対応が出来ないのだろうか。国際的に韓国の日本に対する行き過ぎた過敏さを知ってもらう為には、日本は同じような過剰反応をするよりも、彼らより自分達の方が冷静だという態度を示した方が効果的ではないだろうか。そして何より相手の憎しみを真に受けて憎しみで返しても話は一向に進展せず、寧ろ関係が悪化する恐れが高まるだけだと自分は思う。
 
 イラクのクルド人自治区で独立に関する居住者投票が行われ、独立を支持するという票が圧倒的に多かったということが報じられた。クルド人は現在イラン・イラク・トルコ・シリアの国境付近などに居住する民族で、かつてのユダヤ人同様独自の国家を持っていない民族だ。クルド人はオスマン帝国の中に居住していた民族だったが、第一次大戦後イギリスやフランスによる領土分割の影響で各国にまたがって居住することになり、分断されたことで各国で少数派となり、多数派民族による差別や弾圧の対象になることがしばしばあったようだ。現在もトルコ国内では深刻な対立が残っているし、シリアではイスラム国やアサド政権を牽制する勢力の1つになっている。それらの周辺国など関係各国は自国内でもクルド人の独立の機運が高まることを懸念し、この投票について強硬な批判を投票前から行っていたし、投票終了後も結果を認めないという強硬な態度で臨んでいる。
 私達はなぜクルド人が独立を求める投票を行うに至ったのかについても考えなければならない。その理由はユダヤ人がイスラエルを建国するに至った理由と同じだと自分は考える。ユダヤ人がイスラエルを建国するに至った最大の理由はドイツのナチ党による迫害だったのかもしれないが、それ以前にもロシアや東ヨーロッパを中心に欧米各国でユダヤ人を迫害する風潮はあった。そんな状況を背景にヨーロッパに居住していたユダヤ人たちが、自分達の安全な居場所を求めて、自分達独自の国家を作ろうとしてイスラエルが建国された。結局クルド人達も虐げられてきたから独立したいという機運が高まっているのだと自分は思う。要するに彼らが現在居住している国は、迫害という言葉が適切かどうかは分からないが、クルド人をある意味で蔑ろにしてきたから独立に関する投票が行われるような状況に至っているのに、それに対して更に強硬な態度で臨むことはクルド人達の独立の気運を更に高めるだけで、彼らが独立を阻止したいのなら逆効果でしかないように自分には思える。
 
 日韓の間にある関係性や問題と、クルド人と周辺各国の関係性はまた少し性格が異なることは確かだが、どちらの問題についても憎しみをぶつけ合うだけでは問題の解決は遠のくばかりであることは共通していると思う。
 こんな表現が適切かどうかはやや疑問に感じるが、韓国が日本を世界地図から切り取ったことを子供じみた意地悪だと捉えれば、日本がそれに対して激しく反応すればするほど相手を喜ばせるだけなのではないだろうか。韓国側に意地悪をやめさせたいなら、彼らが期待しているような反応をしないのが最も効果的だと思う。自分はそう考えているので、過激な言葉で韓国側を罵倒している人々を見ると、一体何がしたいのかがさっぱり理解出来ない。単に喧嘩がしただけ、優越感を感じたい以外に一体どんな目的があるのだろう。言葉は悪いが不良に憧れる中学生から進歩していない思考を持っている人たちにしか思えない。
 周辺国より自分達の方が正しい判断が出来るとアピールしたいなら、同レベルの憎しみをぶつけるなんてのは最も愚かな行為でしかなく、本当にそう思っているなら一歩引いて子供をなだめるような態度で「地図、間違ってますよ」と冷静に指摘する程度の器量を見せるべきだろう。どんな場合も落ち着いた姿勢・判断が必要なことは間違いないし、特に国家や民族・地域の指導者・政治家という立場ならば、それが更に求められることは言うまでもない。

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