政府が賃上げに積極的な企業に対して法人税などの優遇措置を行う検討を始めるとNHKなどが報じた。まだ”検討を始める”という施策の初期の初期の段階のようで、具体的な話は一切報じられていない。なのであくまでも記事を読んだだけの第一印象的な話でしかないが、選挙戦では景気が良くなったと政府が盛大にアピールしたが、大半の労働者の実質的な賃金が一向に上向かないという問題から政府が目を背けているのではないかという批判をかわす為のアピールのように見える。単純に考えれば、賃上げが推進されるような政策は多くの人にとって喜ばしいことだし、企業にとってもメリットがある話だからそれなりに結果が出そうだとも思える。しかし個人的にはある種の懸念も感じる。
前述したように具体的な話がまだ一切ないのでハッキリしたことは何も言えないが、自分が感じる懸念は、法人税減税でどの程度税収が減るのか、それは賃上げの効果波及で起こるであろう経済成長でカバー出来る程度の範囲に収まるのかということだ。もし大幅な税収減になってしまうのであれば、ただでさえ今も国の財政収支は良い状態ではないのに、更に状況を悪化させてしまうことにもなりかねない。この政策によって賃上げが実現すればそれは喜ばしいことだが、その背景で財政が後退するようであれば、そのツケを払わされるのは結局国民で、プラスとマイナスの影響がどのようなバランスかにもよるが、賃金上昇させる為にそれ以上のコストがかかれば財政健全化は遠のき、後でその補填の為にさらなる消費増税などが必要になり、結局企業は得をするが国民にそのコストが押し付けられるなんて事態も想像してしまう。自分は経済に決して詳しいわけではなく、この政策に関してもバランスのとり方によっては上手くいく可能性はあるとは思うものの、政府が言い続ける所謂トリクルダウンなどが一向に起きない状況を考えれば、個人的には現政権の経済政策によって企業の内部留保は過去最高という状況にもかかわらず、更に企業に対して優遇措置が行われる必要があるのか疑問も感じる。
しかし一方でどうにかして労働者の実質的な賃金を上げようという、政府の姿勢についてはある程度評価したいとも思う。ただこれまで述べたような懸念もあるだろうから、数の力でゴリ押しするのでなく、充分な議論を行い、待機児童解消目標のように甘い見通しで事を進めず、確実に効果のある政策になるように慎重な検討を行って欲しい。