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IS衰退傾向も混沌とする中東


 ISが支配していたシリア・ラッカをシリア民主軍という勢力が制圧したと多くのメディアが報じた。イラクでISが重要な拠点にしていたモスルも既に陥落しており、そのような報道を見ているとISの勢いは急速に衰え、事態は良い方向へ進み始めているようにも思える。しかし、ラッカから避難している難民らからはシリア民主軍がクルド人系の勢力であることを理由に「ISの方がまだマシだ」とか「クルド人は自分達の利益しか考えない」という旨の声も出ているようだ。さらにシリア民主軍がラッカでトルコで政府と対立関係にあるクルド人系の組織・PKK(クルディスタン労働者党)の指導者の横断幕を掲げたとトルコ政府が非難しているという報道もある。今の状況を見ていると、ISがもしこのまま消滅したとしてもイラク・シリア・トルコなどのクルド人に関る問題に民族間の対立に、問題がシフトするだけになってしまう恐れもある様に思える。

 
 先月・2017年9月にはイラクのクルド人自治区で独立に関する住民投票が行われ、独立支持が圧倒的という結果が出たということ、この投票に関してイラク国内からだけでなく、クルド人の独立運動の盛り上がりを懸念する周辺・関係国から不快感が示されたということが報道されていた。
 これらのクルド人とアラブ人・トルコ人などとの関係性に関して、自分は専門家でもないし現地に行ったことすらないので、実際にどんな・どの程度の状況があるのかは詳しくは分からないが、第一次大戦の結果、イギリスやフランスなどがオスマン帝国の分割を、石油などの利権ばかりを重視し一方的に国境を決めたこと、その国境に民族の分布が考慮されていなかったことが影響しているのは紛れもない事実だろう。そして第二次大戦後にユダヤ人国家・イスラエルができたことで、イスラエルの建国自体を否定するつもりはないが、その影響で更に中東情勢が混沌としてしまったのも事実だ。イスラエルに関しても欧米諸国の影響は確実ある。更に、ISが誕生した要因の一つに、米国によって大義のないイラク戦争が引き起こされたことがあることもまた事実で、個人的には現在の中東情勢の悪い状況については欧米諸国・特にアメリカ・イギリス、そしてロシアの影響はかなり大きいと考えている。

 結局彼らは現在も彼らの利益の為に中東の各勢力にそれぞれ影響を及ぼし、問題の複雑化に一役買っているようにも思える。ただ、ユダヤ人(イスラエル)・アラブ人(多くの中東諸国)・ペルシャ人(イラン)・クルド人らが必要以上に互いに憎しみあっているようにも思える。日本人・朝鮮人・中国人の間にもいまだに半世紀以上前の戦争に端を発するわだかまりがあり、一部に互いに憎しみを強烈に表現する人々がいることを考えれば、中東の状況は決して特異なものでなく、一歩間違えば我々にも似たような状況が降りかかる恐れがあるような状況なのかもしれないが、それでも憎しみ合いが殺し合いに発展してしまっている状況、殺し合いとまではいかなくともお互いを全く認められないような状況は「仕方がない」という言葉で片付けられるような状況ではない。
 中東の歴史に詳しいわけではないので、正しい受け止めなのかは分からないが、ユダヤ人とアラブ人はかつて長い間共存関係にあったし、アラブ人やクルド人、ペルシャ人などはかつては同じ国の国民だった時期もあったはずだ。勿論当時もそれなりに民族間の問題はあったのだろうし、全てが上手くいっていたわけではないかもしれないが、それでもそんな共存していた時期があったのは間違いない。

 今まで・直近はISという共通の敵がいたから互いに争うことを辞めていたが、ISが消滅したらまた別の争いが始まるというのでは、たとえ欧米諸国などにも争いが起こった責任があったとしても、問題の解消に協力しようと考える人が減ってしまう恐れがあると自分は思う。
 欧米諸国が中東の現在の状況が生まれる種を過去に撒き、そして今も少なからず水をやっている状況があることには間違いないが、彼らがお互いに憎しみ合うことを辞めないことも現在も争いが続いている・終わらない大きな理由だろう。問題を武力や強硬な方法で解決しようとする限り、結局新たなわだかまりが生まれ、また新たな争いが始まるという負の連鎖が続くのだと思う。

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