朝日新聞が11/8、「『飲むだけで体重や脂肪を減らす!』 ダイエット食品の誇大宣伝などで太田胃散ら16社に措置命令」という記事を掲載した。消費者庁が「試験で実証!」「科学的根拠有」などの宣伝文句を使っているのに、明らかな効果が確認できない商品や、実際は大した注文数もないのに「予想を上回る注文を頂いており、生産が間に合わない」という文言で消費者を煽っていた企業など16社に再発防止の措置命令を出したという記事だ。この記事を読んで、最近はテレビCMでもこのようなコピー・テロップ・演者の台詞が横行している、特に地方独立局やBS・CS局は9割がこのような誇大表現を伴うCMであるようにも思え「明日からテレビのCMはどうなるんだろう」と感じた。ただ、個人的には誇大に見えても、効果・効能が確認されている医薬品や、ルールに沿って表現を行っている機能性表示食品のCMの場合もあるだろうから、勿論全部が全部無くなるわけではないだろう。しかし健康食品系に限らず、テレビショッピング番組やテレビ通販CMでは巧みな2重価格で不当に割安感を煽ったり、先日業務停止命令を受けた法律事務所のように、過剰に”今だけ!”感を煽る手法は決して少なくない。自分にはそんなCMも消費者を騙す、場合によっては詐欺的とも言えるケースもあるのではないかと思う。今回の措置命令の効果が波及してそのような手法が自粛ムードになるかは、これから分かることだが、個人的には効果は限定的で、もう少し抜本的な対策が必要ではないかと考える。
朝日新聞は翌日「『感情』が認知に及ぼす影響」という記事も掲載している。こちらは宣伝文句や巷で流行る健康法などを例に、極端な話でも話を単純化したり、恐怖や不安などの感情に訴える手法で表現されると、受けて側はその話の不適切な点に気が付かない・若しくは度外視してしまい、受け入れてしまいやすいということを指摘する記事だ。直接的には前段で取り上げた記事と連動してはいないのかもしれないが、とても似た題材を扱っている。
また、11/7には「中高生の読解力がピンチ 教科書レベルの文を誤読、調査で判明」という記事も掲載している。この記事は、2016年4月から2017年7月にかけて行われた中高生ら2万4千人を対象に行われた調査で、教科書や新聞記事レベルの文章をしっかり理解出来ない中高生が多くいるという結果が出たという記事だ。
最初に紹介した誇大広告の件、そして次に紹介した感情に訴えようとする極端な話の件は、中学生の読解力低下の件とはややニュアンスの異なる話かもしれない。しかし自分には決して無関係な話ではないように思える。誇大広告が問題なのはそれを信じてしまう人がいるからで、あまりにも馬鹿馬鹿しくて誰にも信用されないような誇大表現なら大きな問題にはならない。それは感情に訴えようとする極端な話も同様で、多くの人が冷静に物事を判断し、記事のように極端な話の不適切な点に気づくことが出来れば、このような啓発を行う記事は必要ない。要するにどちらも錯誤させられる・騙される・信じてしまう人がいるから問題提起が必要になっている。個人的には、どちらも言い換えれば、誇大広告に対する読解力(理解力・判断力)の低さ、極端な話の不適切さに対する読解力(理解力・判断力)の低さに関する話とも言えるのではないか考える。何が言いたいのかと言えば、読解力の低さは中高生だけでなく、その親世代・祖父母世代にも言えることなのではないかということだ。
近年ヘイトスピーチをあからさまに行うデモや、ネット上で偏見丸出しの発言を恥ずかしげもなくする人々が問題視されている。彼らがなぜそのような行動に至るのか、それは感情に訴えてくる極端な話、例えば南京事件やユダヤ人虐殺は敗戦国である日本やドイツを陥れようとする為の嘘で、完全にでっち上げでしかないというような話を受け入れてしまうことや、大きなグルーピングで単純化されたイメージ、例えば在日朝鮮人=反日テロリストとか、それをもっと拡大した韓国人=反日勢力というイメージや、同性愛者=性的に堕落・倒錯した人という一方的で勝手な確実にイコールでは結べない印象を、確かにそのイメージに当てはまる人もいないことはないだろうが、対象のグループに属する人全てに当てはまると勘違いすることで、彼らの中では差別が正当化されている為に行われるのではないかと自分は考える。結局彼らも誇大広告を信じてしまう人と同じように、何かしらの不安感につけこまれ、そして煽られ、更にそこに単純化された極端な話を与えられたことで、自分の信じたい部分だけにしか目をむけずに信じ込みやすい人、要するに読解力(判断力)の低い人たちなのではないか。そう考えると、やはり読解力が下がっているのは中高生だけではなく、その親・祖父母世代も同様だと自分には思える。
この投稿を読んで、中には「あなたは誇大な話や極端な話を信じる、言い換えれば騙される方だけが悪いと言いたいのか」と感じる人もいるかもしれないが、それもまた極端な受け止め、言い換えれば”目を向けたいことにしか目を向けていない曲解”でしかないと自分は思う。自分が言いたいのはそうではなく、”物事を適切に理解しないと様々な問題、場合によっては深刻で大きな問題が起こる”ということだ。紹介した3つの記事の中で最も注目するべきは中高生の読解力低下という記事で、中高生の読解力低下を防ぐには学校教育だけではどうにもならず、その保護者世代が適切な読解力・理解力・判断力を身に付けることが必要だと考える。現状では結局それが適当なレベルに達していないから、中高生の読解力に関する調査に反映されているのではないだろうか。それは悪循環とも言えるような状況で、中高生に限らずその保護者世代の読解力ともども改善していかなければ、勝手で一方的な解釈による差別などが拡大する恐れもあるように思う。差別を減らしたい、無くしたいと考えれるなら、ただ「差別をしてはならない」と啓蒙するだけでなく、このような状況をどうやって改善するかを考えることも必用だろう。