これまでの3日間、連日オリンピック組織委会長 森の女性蔑視発言と、それに関する日本メディアの姿勢、女性蔑視や差別への感度の低さについて書いてきた。東京新聞がようやく「女性蔑視」と断定的に表現し始める等、後手後手ではあるものの、一部のメディアに認識を改めた感があるものの、それでもまだ批判すべき/記録しておくべき記事を書いているメディアもある。もうこれ以上日本が炎上する燃料を投下しないでほしい、と思いながらこの投稿を書いている。
とりあえず一応、これまで3日間の投稿へのリンクをまとめておく。今日の投稿は、勿論この投稿だけでも完結しているが、その前提にはこれらの投稿の内容がある。
- 差別や蔑視をボカして誤魔化す国にオリンピック開催する資格はない(2/4)
- 日本のメディアのレベルの低さ(2/5)
- イメージと実態が異なる例(2/6)
昨日の夜、誰かがリツイートした、共同通信の記事を紹介するツイ―トがタイムラインに流れてきた。
大坂、森発言は「少し無知」 | 共同通信
この記事を見て、その共同通信のツイートに「いいね」をする気にはなれなかった。まずあの大坂が「"少し"無恥な発言」なんてボカしたことを言うか?と思ったし、もし彼女が実際にそう言ったのだとしても、やはり「いいね」とは思えなかったからだ。
その少しあとに、今度はAFPの、同じ大坂のコメントを伝える記事がタイムラインに流れてきた。
大坂なおみ、森会長の発言「無知だったと思う」 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
共同通信の記事とは異なり、見出しに"少し"という表現はない。それどころか本文では、
大坂は全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2021)の開催地であるメルボルンでの記者会見で、森会長の発言に関する質問に「まったく無知な発言だったと思う」と述べ、「このような発言をする人は、話す内容についてもっと知識を持つ必要がある」と話した。
と、「まったく無知な発言」としている。"まったく"は、完全にとか間違いなくというニュアンスで、"少し"とは正反対と言ってもいい訳だ。あの大坂ならそう言うに違いない、というとても強く感じた。
どちらの記事にも大坂が英語で語った原文はなく、どちらが正しいのか、より適切な翻訳なのかを判断するには、それを確認必要がある。実際に大坂がなんと言ったのかを調べていたら、ロイターの英語版記事
Japan's Osaka calls Mori's remarks 'ignorant', mum on calls for resignation | Reuters
にインタビュー映像があった。映像には丁寧に英語字幕まで付けられていて、大坂が実際に何と言っているかは一目瞭然である。大坂は映像の中で「I feel like that was a really ignorant statement to make」と言っており、訳すと「それは本当に無知な発言だったと思う」である。
但し記事本文には、映像にはない彼女のコメント、
“I did look at the comments. I didn’t think they were good,”
Osaka told a news conference in Melbourne ahead of the Australian Open, which starts on Monday. She said she wanted to hear the reasoning behind the remarks and the perspective of those around Mori.
“I think if you’re in a position like that, you really should think before you say anything. I don’t know in what situation he said those things, but I think it’s really uninformed and a bit ignorant.”
という記述もある。この部分を日本語に訳すと、
「(森会長の)コメントを見ました。私は彼らが良いとは思わなかった」
と、月曜日に始まる全豪オープンに先立ち、大坂はメルボルンでの記者会見で語った。 大坂は、発言の理由や森会長の周りの人たちの認識も聞きたかったとも語った。
「そのような立場なら、本当によく考えてから発言すべきだと思う。どのような状況であんなことを言ったのかはわからないが、本当に無知で無知でしかたない発言だと思う」
ぐらいが妥当だろう。
この文章の最後に「a bit ignorant」とある。共同通信の記者はこの部分を強調したのだろうが、これは「 I think it’s really uninformed and a bit ignorant.」という文の一部であり、この場合の「a bit」は、決して少しという意味ではなく、「really uninformed / 本当に無知で」であり、且つ「and a bit ignorant / 更に輪をかけて無知」のようなニュアンスである。それは、それ以外の大坂のコメントからも明白であり、これぞまさにキリトリというやつだ。
森の蔑視発言について、発言全体を見れば蔑視でないことは明白なのに、朝日新聞がキリトリをやって騒ぎ始めた、のようなことを言っている人達がいるが、2/4の投稿を見ても、2/5の投稿に載せた森の撤回会見や撤回に至った経緯を話す番組映像等からも、森発言が差別に基づく蔑視であることは明白だ。つまりキリトリなどは一切ない。それどころか朝日新聞の記事では森発言の酷さの一部しか伝えられていないと言っても過言ではない。
そのような人達は、この投稿で指摘した共同通信の記事のような、実際にニュアンスが捻じ曲げられている記事に対して、なぜキリトリだ!と言わないのだろうか。その理由は明白である。彼らはキリトリ報道の意味を理解していないか、もしくは壊滅的に読解力がないか、キリトリ報道の意味を理解し且つ読解力もあるのに、都合が悪いとキリトリだ!と言いだすだけの人達か、のどれかだからだ。