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”偏向”報道とは何か


 日本維新の会の足立康史議員がツイッターに

朝日新聞、死ね。

というツイートを投稿し波紋が起きている。足立氏は朝日新聞が掲載した、加計学園問題に関する審議がまだまだ国会で行われる状況であるのに、獣医学部新設を認める答申を文科省・大学設置審がしたことに対して懸念を示す内容の社説を引用し、「朝日新聞、死ね。」とコメントした。
 ネット上では足立氏が用いた”死ね”という文言のインパクトの強さに批判が集中しているようだ。個人的には国会議員という立場でこのような乱暴なコメントをすることが適当だとは全く思わないが、以前に彼が国会審議の中で発言して大きな問題になった「民進アホ」発言とは異なり、ツイッターというある意味では掃き溜めに吐き捨てたような言葉でもあるし、このような発言をしてもらった方が彼の人間性が良く分かるというように見ることもできるだろうから、流石に国会審議でこの種の発言をすると審議自体が停滞してしまうだろうから避けてもらいたいが、ツイッターや自身のブログなどでならもっとアピールしてもらっても構わないと思う。勿論そんな彼の発言への批判もどんどんするべきである。しかし黙らせようとか封殺しようというのはあまり適切でない対処だと自分は思う。


 自分が注目したいのは、「朝日新聞、死ね」の後に彼が投稿した、

まだ言うか、と言われそうだが、何度でも言う。朝日新聞は“万死に値する”、と。だいたい加計学園の問題について、朝日新聞のねつ造報道はあまりに酷い。取材に来た朝日新聞の記者にも改めて指摘したが、今年5月17日の「総理のご意向」報道に始まるマスコミの偏向報道、ねつ造報道は度を越している。

というツイートだ。このツイートはその後「朝日新聞、死ね」というツイートを強調したいという名目で彼によって削除されたようだ。 注目すべきは”偏向報道・捏造報道”という文言だ。これはあくまで個人的な感覚でしかないが、これらの文言を好んで使用する人は朝日新聞・毎日新聞・東京新聞・沖縄タイムズなど所謂リベラル系と言われるメディアに対して批判的な人々に多いと感じる。勿論政府に寄り添った報道が多い産経新聞・読売新聞などを批判する人の中にも、”売り言葉に買い言葉”的にこれらの文言を使っている人を見かけることはあるが、割合的にはそう多くはないと感じる。
 偏向報道という言葉は、昨今使われ始めたものではないが、直近では森友学園問題・加計学園問題に関して批判的な報道をするメディアに向けて使われる場合が最も多いだろう。これらの問題の現状を整理すると、


  • 野党など追求する側は首相が恣意的に関与したという明確な根拠を示せておらず、結局疑惑の域から話が進んでいない
  • 問題はないとする政府与党側は取引に関する記録などの提出に消極的だし、追求によって存在しないと説明していた文書の存在が明らかになることもあった
  • 首相が丁寧に説明すると表明するも、野党らによる臨時国会召集に長らく応じず、召集しても議論を行わずに衆院を解散させた
  • 衆院解散に踏み切るにあたって、加計問題について丁寧な説明は閉会中審査で既に尽くしたという態度を首相が滲ませる
  • 解散総選挙で自民党が大勝し政権を維持するも、加計学園問題については国民の6割程度が政府側の説明が足りないという世論調査結果もある

どちら側の主張に整合性を感じるかは人それぞれだろうが、こんな状況でも批判する記事が偏向報道だとまで言えるだろうか。自分には全くそう思えない。

 確かに朝日・毎日・東京の各紙には、しばしば拡大解釈しすぎ・言い過ぎと思えるような記事が掲載されることがあると思う。しかし一方で偏向報道という言葉をよく使う人たちがあまり批判しない産経・読売新聞も別のベクトルで言い過ぎ・時には差別的と思えるような記事を掲載していると自分はしばしば感じる。結局彼らが用いる”偏向報道”という表現は、偏っているという事よりも自分の意見と異なっているということを言っているに過ぎず、適切な言葉を選んで批判をしているとは思えない。偏向報道を真に正常化したいと望んでいるなら、全ての偏りについて指摘し批判するべきだ。
 誰もが知っているように”偏向”とは偏っているという意味だろうが、偏向報道という批判を繰り広げている人々のうち、一体どれだけの人がニュートラルな立場で物事を考えられているだろうか。自分には”偏向報道”という言葉を好んで使う人ほど考え方が偏っている傾向が強いように見える。

 話は変わるが足立氏に限らず、そもそも維新自体が信頼に足る政治団体であるとは全く思えない。10/27の投稿で触れたように党の創設者である元代表は、ネットでの発言やメディアの取材に対して暴言や人をあからさまに馬鹿にするような表現を恥ずかしげもなく繰り返しているような人物だし、現代表も元代表に比べればトーンは下がっているが似たり寄ったりだ。更に衆院選では差別的な発言が問題視されていた元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏を公認していたし、足立氏にしても「民進アホ」発言以降もその傍若無人さは変わっていないのに維新はずっと彼を処分しないままだ。更に付け加えれば、流石に先月の衆院選への立候補は断念したし、大分前に離党はさせているが、全く議院の資質があるとは思えない言動を繰り返していた、というか今も繰り返しているあのお騒がせ女性議員も元維新だった。
 
 冒頭で自分は足立氏の「朝日新聞、死ね。」というツイートを封殺するべきでないと書いた。しかし「ツイッターは子供も見ています。真似されると国益を損なうのでご訂正を。」というコメントに対して、

子どもたちは、真似しないでね。

と足立氏自身もツイートしていることから考えれば、封殺せずとも適切ではない恐れのあるツイートに指定するなど、何かしらの対処の必要性はあるかもしれないとも思う。
 ただそれでも、自分の偏った思考は棚に上げて他者を偏向などと罵倒するような人物が国会議員の中にもいることが分かるように、そして今回の選挙ではかなり議席を減らしたようだが、そんな人物に公認を出している政党が強い影響力を持たないようにする為にも、問題が懸念される議員の発言でも封殺するべきではないと思う。”死ね”という強い文言に引っ張られて、批判する側にも感情的になってしまっている人がいると自分は感じる。

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