スキップしてメイン コンテンツに移動
 

差別を日本の伝統なんて言わないで


 朝日新聞の記事によると、自民党の竹下総務会長が、11/23に岐阜市で行われた党支部のパーティーで、国賓を迎えて開く宮中晩餐会についての見解を述べたそうだ。フランスのオランド前大統領が国賓として来日した際に、彼が事実婚の関係にある女性を伴ったことを踏まえて、

奥さんではないパートナーだという女性が天皇・皇后両陛下と並んで座るわけだから、どう対応しようかと宮内庁は悩んだ。

と指摘し、

そのパートナーが同性だった場合、どう対応するか。日本国として必ず近い将来、突きつけられる課題ではないのか。
パートナーが同性だった場合、私は(晩餐会への出席には)反対だ。日本の伝統にも合わないと思う。


という持論を披露したそうだ。この発言は差別的な思考に満ちている恐れがかなり強いと言わざるを得ない。自民党はこのような人物に、総務会長なんて要職を任せておいて大丈夫なのだろうか。


 まず事実婚の相手を伴って晩餐会に参加することに関して、宮内庁が対応に困ったという話について、これが事実なのかどうかは分からないものの、話の流れからすると竹下氏にはその受け入れに消極的であるように思える。彼が「そんなこと気にせず受け入れるべきだ」と思っているなら、明確に宮内庁が受け入れに躊躇したことを批判していただろうが、朝日新聞の記事にはそんな記述は一切ないし、産経新聞の記事も確認してみたが、同様にそのような記述はない。晩餐会に伴って出席する者が法律上の妻かどうかなんてそんなに重要なことなのだろうか。事実婚だと出席に相応しくないという懸念はどんなことを根拠に生まれるのだろうか。自分には全く想像もできない。しかも天皇・皇后両陛下が主催する晩餐会でそんな対応をすれば、天皇・皇后両陛下がそう考えているということにもなってしまいそうだし、特に天皇陛下は日本の象徴なのだから、場合によっては日本は時代錯誤甚だしい国だというように思われかねず、好ましくないどころではなく不適切と言っても過言でないと思う。
 パートナーが同性だった場合云々なんてのも同様で、オーストラリアで同性婚についての国民投票が行われたことに関する11/18の投稿でも書いたが、他人が誰と婚姻関係になろうが、直接的な不利益を被ることはないのだし、同性婚を認めるべきか否かというのは思想や宗教的な側面の強い問題だろうから、思想の自由や信教の自由が認められている国家では、本来認めるもクソもないというのが自分の考えだ。確かに日本では、過去に制定された法律がそのまま使われており、今も同性婚は法律上は認めらていない。しかしそれに対する社会的な認識は確実に変化しており、同性パートナーを婚姻状態と同等であるとする証明書を発行する自治体も出始めている。他国では同性婚を法的に認めていることも決して珍しいことではない。そんな状況なのに、国の象徴である天皇陛下が主催する宮中晩餐会には同性パートナーを伴って出席することを認めないなんて態度を、政府や宮内庁が示せば、天皇陛下の名誉を棄損することになる恐れもあるし、さらには日本全体が時代錯誤の差別容認国と認識される恐れだってある。
 同性のパートナーを認めることは日本の伝統に合わないという竹下氏の考えも、一体何を根拠にそんなことを言っているのか全く分からないとしか言えない。それに万が一、日本に同性愛を認めないという伝統があったとしても、それは天皇陛下の名誉(陛下は日本の象徴なのだから、日本全体の名誉とも言える)よりも大事なものだとは到底思えない。そんなどうしようもない伝統なんて、中学校の部活で惰性で受け継がれている理不尽な悪しき伝統と大差ないだろうから、守る必要なんてこれっぽっちもなく、さっさと捨てたほうが良い。

 結局、竹下氏は11/18の投稿で触れた「同性婚は自然の摂理に反するから、気持ち悪いと思うのだ。自然の摂理に反するから、消えてなくなってほしい。」と主張するような人間と大差のない差別主義者である恐れを、自ら大々的にアピールしたということに気が付いているのだろうか。
 竹下氏は「(北朝鮮のミサイルが)島根に落ちても意味ない」とか、「今国会でも強硬採決」などと口を滑らす場面が直近だけでも複数回あった。しかし今回の発言は、言葉選びを誤ったなんてレベルの話ではないし、流石に撤回で済むような内容ではない。自民党には相応の対処してもらいたい。でなければ自民党も、差別発言を繰り返す長谷川氏や偏見を隠さず暴言を連発する足立氏などを、未だに抱えたままの維新と大差ないと指摘されてしまうのではないかと危惧する。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。