テレビ東京が「ヒャッキン! 世界で100円グッズを使ってみると?」という番組を放送している。何回かの単発特番を経て2017年の秋からレギュラー化された番組だ。「Youは何しに日本へ」のヒット以降、テレビ東京が力を入れている?、外国人・日本国外からの目線で日本を再確認するタイプの番組で、日本の100円ショップで販売されている商品を海外で紹介し、外国人の反応を取材するという内容のバラエティ番組だ。実はそのような体裁を前面に出して、実のところは100円ショップの商品を宣伝しているという側面がかなり強いようにも自分には思える。別にそれは批判するべきようなことではないし、自分は番組を見る際に多少の演出があることは分かった上で、国外の視点で見るとこのように見えるのかということを興味をもって見ている。
この番組では、取材する人を現地で探す際に、いくつかの100円ショップ商品を並べて街頭インタビューを行い、興味を持ってくれた人がどのように使うのかを密着取材する形式をとっている。その際に100円の商品だとは伝えない。そして、
- 実際に使った後にスタッフが「これ、いくらだと思いますか?」と質問
- 「1000円か1500円ぐらい?」と外国人が答える
- 「これ全部100円なんです」とスタッフが種明かし
- 外国人が驚く
という流れがあり、外国人が答える価格は時々で差はあるが、100円より高い価格を答えた後に驚くという流れが、最早お約束と化している。先日の放送では、イタリア人の女性が「(そんなに安く売ってて)日本は大丈夫なの?(儲けはちゃんとあるの?)」とコメントしており、それを見て、以前から感じていた自分のある思いが再燃してきた。
近年アパレル業界を中心に、後進国での労働力の搾取によって低価格商品が成立していたり、生産委託しているブランドが安く買い叩いているのに、高い価格設定を行って大きな利益を上げておりバランスが悪い、なんて話をよく耳にする。この手の話は近年とか、アパレル業界に限った話でなく、何百年も前の植民地などで奴隷を使って行われていたプランテーション農業や、その名残などに関しても同じような問題があったし、そのような事全般を是正する為に、フェアトレード・公平貿易の仕組みの普及を目指す国際的な運動が行われている。
100円ショップを見ていると、置かれている商品の殆どは日本より経済的に遅れている国で生産されていることが分かる。90年代は韓国製が多かったし、2000年代に入るとマレーシアや中国などが主流になり、現在は中国製もまだまだあるものの、ベトナム製やインドネシア製が増えているように感じる。勿論、100円ショップの商品の中にも、それは100円で妥当とか、寧ろ100円じゃちょっと高いと感じるような商品もあるし、自分は詳細に調査を行ったわけではないので、自分が想像しえない安さの秘密があるのかもしれないが、これ作ってる人は適正な収入を得られているのか心配になってしまうような商品も少なくない。イタリア人の女性が「100円で売ってて日本は大丈夫なの?」と感じたように、自分も「100円で売ってて生産している人は大丈夫なの?(適切な収入を得られているの?)」と感じてしまうことが多々ある。
「そんな風に感じるなら、まずお前が100円ショップを使うなよ」と言われてしまうかもしれない。確かにその通りだとも思う。便利に100円ショップを利用させて貰っているが、そのような後ろめたい気分をしばしば感じている。
これまで触れてきたのは、100円ショップ経営企業と、商品生産国の労働者、100円ショップの利用客の関係の話だが、飲食業・小売業などを営む大企業、そこで働くアルバイト・パートなど非正規労働者、それらの店の利用客の間にも、似たような構造があるのではないだろうか。そう考えると、イタリア人女性の「100円で売ってて日本は大丈夫なの?」という率直な疑問は、あながち間違った感覚ではないなとも思えた。
現在日本では非正規労働の割合が増加し続けているそうだ。厳密には正規だから、または非正規だから不当な扱いを受けているということではないかもしれないが、非正規労働者は正規に比べて確実に不当な扱いを受ける確率が高い。政府は働き方改革とか、同一労働同一賃金というスローガンを掲げてはいるが、そんなスローガンを掲げ始めてから既に5年以上も経っているのに、一部では改善の兆しは見え始めてはいるものの、社会全体では改善が抜本的に進んでいるようには全然感じられない。一体いつになったらこの閉塞感の強い社会の情勢は改善していくのだろうか。テレビや新聞ではバブル越えの景気的な報道をしばしば目にするが、一体国民の何割程度がその実感を得ているのだろう。2019年に予定されている消費増税や、2020年のオリンピックが終われば確実に日本の景気は一段落する。ということは、今景気の良さを感じていない人はそれまでに実感を味わえなければ、当分実感することはないと言えそうだ。
果たして、それでも今の経済政策が正しい、他に比べればまだマシだと言えるだろうか。