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ネットに投稿される嘘


 先週沖縄で相次いだ米軍機の落とし物。と言っても、2件のうちの1件は米軍が米軍機の落とし物と正式には認めておらず、現時点では、厳密に言えば疑惑と言わざるを得ない状況ではある。そちらの件については12/13の投稿で触れたように、落下物が落ちた保育園に対して、デマだの嘘だのと言う電話やメールが複数あった、というか朝日新聞の16日の記事によると、その後も続いているそうだ。
 Buzzfeed Japanはこれらの件に関連して、翁長・沖縄県知事が日本政府や米大使館に抗議する為に上京したこと、そして彼に対するインタビューの記事を15日に掲載している。「『何度抗議しても、何も変わらない』と翁長知事が語った沖縄と本土の”溝”とは」という見出しが示すように、彼の憤りを強く感じさせる内容だ。

 
 この記事には、自分も


政府や与党、その支持者らは、日米安保の重要性を声高に叫ぶなら、
まず日米地位協定の見直しに意欲を見せて欲しい。


とコメントしたが、それ以外にも、この投稿を書いている時点で3件のコメントがある。それらはどれも沖縄や翁長知事の主張に賛同しない、若しくは批判的な内容なのだが、どれも全く賛同出来ない。自分とは考え方が違うから賛同出来ないという意味ではなく、主張の内容が、稚拙・的外れ・事実の誤認・嘘に当たる恐れがかなり強く主張として認められないという意味で賛同出来ない。賛同というより容認出来ないと言った方が正しいかもしれない。自分は、このようなSNSの投稿を信じ込んだ類の人が、保育園にデマだの嘘つきだのと電話・メールなどしたり、直接しなくともネット上で中傷しているのだろうと想像する。


 まず、3件のうち最もマシに感じられるコメントは、


危険極まりない普天間だからこそ、だから、一日も早く辺野古に移設すべきなのに、一緒になって反対運動をしている。抗議する相手は反対運動をしているプロ市民活動家や、偏向したマスコミに煽られ反対している県民だ。もっと言えば、亡国政権民主党時代の鳩何とかいった輩が、最低でも県外、自分には腹案がある、と嘘を言って、辺野古移設を白紙にしてしまった相手だ。

という内容だ。普天間飛行場の危険性を除去する手段が、辺野古移転で問題がないかどうかに関しては賛否が分かれる話で、この人がそれを肯定的に捉えても何も問題ない。しかし、それが絶対的に正しいと言わんばかりの主張は到底賛同できるものではない。何やら辺野古移転に反対しているのはプロ市民だとか、偏向マスコミに煽られた県民だとか言っているようだが、こんなことを平気でネットに書き込んでいるこの人も、見る人が見れば彼が言うところのプロ市民に当たるだろうし、辺野古移転以外に道はない、その他の方法を検討するなどあってはならないというような話こそ偏向しているように思える。


 次は、何か話を勘違いしているようなコメントで


講義をする相手を間違えてる。米軍や日本政府相手じゃないでしょ。
そもそも、なぜ更新や整備をする必要があるのか??
シナや韓・北への対抗の為でしょ。
抗議するなら、その国へ書簡を送ったりメディアで発言すればよい。


という内容だ。何故沖縄の基地問題に関する抗議を中国・韓国・北朝鮮にするべきだと言えるのかが全然理解できない。彼の論理では、それらの国に対抗する為に米軍基地が必要だから、ということのようだがかなり支離滅裂だ。彼の論理を一般市民と警察官に置き換えてみるとその馬鹿馬鹿しさがよく分かる。市民は沖縄県民や日本国民、警察は米軍に置き換えて考えてみて貰いたい。脅威になる海外の勢力に対抗する為に日本に米軍が必要だという話をそれに置き換えれば、市民を犯罪・犯罪者から守る為に警察は必要な組織で、米軍と似たような存在だ。翁長知事や沖縄県民はこれまで米軍が起こした事件・事故が今後繰り返されることのないように、改善を求めて事件が起きる度に日本政府や米軍などに抗議している。米軍が起こした事件・事故とは、市民と警察の関係に置き換えれば、パトカーが交通事故を起こし市民に犠牲が出たとか、警察官が痴漢事件を起こしたなどと似たような事案だろう。そんな警察の不祥事が起こった時、警察は犯罪者から市民を守る為に必要なだけで、犯罪者がいなければ警察は必要ないのだし、警察がなければ警察の不祥事もないのだから、それらの不祥事に関しては警察が存在する理由になっている犯罪者に直接文句を言え、と言っているようなものだ。この話の強烈な不適切さは誰もが感じることだろう。警察の不祥事の責任は犯罪者でなく警察にある、という話をおかしいと感じる人は、このコメントをした人以外にどれほどいるだろうか。


 最後は個人的に最も質が悪いと感じた、


左翼は沖縄の基地は全体の75%を占めるという。噓だ。
八戸、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保の合計が沖縄の四分の一しかない?
そんなはずはない。面積を調べて証拠を示すようにして欲しい。


というコメントだ。これに関してはあまりにいい加減過ぎて、こんな明らかなデマが放置されることは許されるべきではないと思い、自分は記事にも以下のように反論するコメントをした。


人に証拠を示せと言うならば、
まず自身が嘘である証拠を率先して積極的に示すべきではないでしょうか。

と言ったところで、
あなたは大した証拠を示そうとしないだろうと想像したので、
とりあえず、”沖縄 米軍基地 75%”で検索してみました。
すると、ハフポストの2016年6月の記事がヒットしました。
記事のタイトルは、

沖縄のアメリカ軍基地「日本全体の39%」投稿に翁長知事「開いた口がふさがらない」

です。BuzzFeedのコメント欄はURLを張れないので、
Googleでタイトルをコピぺして検索してみてください。その記事によると、
2016年6月に「沖縄には、在日アメリカ軍基地の74%が集中している」
という話について、在日アメリカ軍司令部が「事実ではない」と
述べたそうです。しかしそれは、面積的には74%で間違いないが、
米国の専用施設の39%、全ての地位協定メンバーの49%が沖縄に
存在しているという意味で、74%は事実でないとしているそうです。
これは米軍司令部の公式Facebookにも掲載された話のようです。

ということは、あなたの面積が75%なんて嘘だ
という認識は確実に誤りだということになりそうです。
根拠を示してみましたが、どのようにお考えでしょうか。
コメントを削除されるような対応はせずに、
是非お考えをお聞かせ下さい。
念のためスクリーンショットを保存しておきます。

また、あなたは、左翼が米軍の75%の面積が沖縄に集中している
という嘘を広めている、と述べているように見えます。
左翼も右翼もそれだけでいいとか悪いとかいう話とは別だと思いますが、
どうも私には、あなたは左翼=悪というような認識を持っている
ように感じられて仕方ありません。前述のハフポストの記事には、

>中谷元・防衛相は28日の閣議後会見で「防衛省は面積の割合が74%だと公表しているが、データの見方、とらえ方は様々。コメントは控える」と、具体的な論評を避けた。

という記述があります。ハフポストの記事を書いた記者が、
中谷氏のコメントを捏造したという可能性もあるかもしれませんが、
防衛省が面積の割合が74%だと公表しているということは、
あなたの認識で判断すると、防衛省や政府、中谷氏は、
”嘘つきの左翼”ということになりそうですが、果たして本当にそうでしょうか。
自分には全然そのようには思えないのですが、
是非あなたの見解をお聞きしたいと思います。


元のコメントに対して自分がこの反論コメントをしたのは、この投稿を書いている時点で約1日前だが、現時点では元のコメントを書いた人物からの返信はない。

 このような、やさしく言えば事実誤認、厳しく言えばあからさまな嘘・でっち上げを、恥ずかしげもなく書けるような状況は確実に好ましくない。確かにこのような考えを一切合切封じることも、それはそれで適切ではないかもしれない。しかし、記事を掲載しコメントを募っているBuzzfeed Japanや、コメントシステムを提供しているFacebookは明らかな嘘の拡散を助けているという側面もあるわけで、このような状況には何かしらの対策を行う必要があるようにも思える。確かにやり過ぎれば検閲とか言論弾圧だとか言われかねないだろうが、現在の野放しの状況も同じくらい危険な状況だと自分は思う。
 様々な考え方の人がいること、それぞれが互いに尊重しあうことはとても重要だが、そんな話を自分にだけ都合よく拡大解釈し、自分の意見と異なる考えを不当に棄損するような主張は、決して表現の自由・言論の自由の範疇には入らないと自分は考える。

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