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どこの改憲本部?


 自民党の憲法改正推進本部が12/20の役員会で、改憲項目の論点整理を行ったが、例えば9条に関しても2項を残すのか削るのかなど、まだまだ意見が集約しきれていないという話を、多くのメディアが報じている。これに関して一部のメディアでは”論点とりまとめ”とか”中間とりまとめ”という表現を用いているが、まとまっていないのに”とりまとめ”と表現するのも何か変だと個人的には感じている。また、昨日の役員会で意見を一本化しなかったのは、まとまらなかったのでなく、意図的にまとめなかったという見解も一部にはあるようで、憲法改正の機運を何としてでも高めたいという意図や、更に国民投票で否決される恐れを出来るだけ低くするなどの意図をもって、より強硬な改正案と、それよりは柔らかい改正案を両方掲げることで、「柔らかい改正案ならいいのではないか?」という世論が盛り上がることを狙っているという指摘もある。


 個人的には、これまで積み上げられてきた憲法解釈という前例を、閣議決定だけで覆して集団的自衛権を容認するとしたり、「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があえば、内閣は召集を決定しなくてはならない」という憲法の規定を形骸化させるような、臨時国会の冒頭解散についても「憲法に抵触しない」という見解を示せるような党首を擁する党は、改憲だなんだと言う前に、まず党首に現憲法の遵守を徹底させるべきだと考える為、今の政権与党の元での改憲には反対だ。しかも自民党は、先の衆院選で幼児教育無償化に関して”すべての子どもを対象に”という公約を掲げていたのに、選挙が終わるとすぐに”すべての子ども”が対象にはならない政策を検討し始めているし、彼らの話を手放しで信用できないという個人的な思いはこれまで以上に高まっている。産経新聞によると、『東京五輪・パラリンピックが開催される2020(平成32)年を「日本が大きく生まれ変わる年にするきっかけとしたい」と述べた上で「新しい時代の幕開けに向けた機運が高まる時期であるからこそ、憲法について議論を深め、国の形、あり方を大いに論じるべきだ」と訴え』たそうで、相変わらず憲法とオリンピックには何の関連もないのに、あからさまに政治利用しているし、「日本が大きく生まれ変わる」とか「新しい時代の幕開けに向けた機運が高まる時期」など、かなり胡散臭いスローガンを恥ずかしげもなく並べ立てている。オリンピックには憲法との関連は何もないし、オリンピックの年に(憲法改正もすることで)日本が大きく生まれ変わるなんて話は、もはや扇動とすら感じられる。そんな観点でも、現政権与党の元での拙速な憲法改正・その議論にはある種の危うさを感じる。
 
 自分がこの投稿で書きたい事は、実は憲法改正の是非に関してではなく、この件に関する毎日新聞の見出しについてだ。その見出しとは「改憲本部、論点整理を協議」という表現だ。


この見出しを最初に見かけたのはGoogleニュースだった。自分は、正確な名称までは分からなかったが、「改憲本部」は自民党の憲法改正推進本部を指す表現だとすぐに分かったが、見出しはせめて”自民改憲本部”としておかないと、政治に対する見識が高くない者が見た際に、政府なのか国会なのかは分からないが、国の機関が既に改憲の論点を整理する段階になっていると勘違いしてしまう恐れもあるのではないかと感じた。もしそのような正しくない認識を与えてしまうと、中には「ああ、もう憲法改正ってそのレベルに達している話なんだ」と思う者も出てくるだろう。それは言い換えれば、内容はまだ詰める必要があるが、改正されること自体、それは言い過ぎかもしれないが、国民投票に掛けられることはほぼ決まりのような、誤ったイメージを広める恐れがある。「そんな些細なことに目くじらを立てるな」という見解もあるのだろうが、政治、しかも憲法改正は私たち国民にとってかなり重要なことだし、毎日新聞が正しい報道を心掛けている報道機関であるなら、誤解が生まれないように細心の注意を払うべきだと自分は思う。
 確かにGoogleニュースに表示された見出しをクリックして毎日新聞のサイト・記事に進めば、「改憲本部、論点整理を協議」という見出しの前に「自民党」とも書いてある。


しかし、このブログで自分が再三指摘しているように、見出しを見た者全てがリンクをクリックするわけではないし、クリックした者も本文を全て読むわけではないのだから、見出しは極力勘違いが起きないような表現にしなくてはならない。11/19の記事・「”ロヒンギャ迫害決議案”という見出しの不正確さ」でもロヒンギャ迫害決議案ではなく、ロヒンギャ迫害”非難”決議案だとTBSの見出しを批判したが、今回も程度は似たり寄ったりだ。大手のメディアですらこんな状況であるのは非常に残念だ。あからさまなデマやフェイクニュースを撒き散らす、いい加減なまとめサイトと同レベルだとまでは言わないが、こんな見出しを掲げるようでは、大手メディアがそのようなサイトは問題だと指摘しても、そのようなサイトや、そのの支持者に「お前らもいい加減な見出しをしばしば使うだろ」と反論される隙を与えているとは言えそうだし、第三者から見ても、大手メディアがそのようなサイトへの問題提起を行う際の説得力は、確実に低下することになると感じる。

 11/19の記事の繰り返しになるが、政治家・文筆家・記者・作家など言葉を商売にする人々には、社会全体に与える影響も考慮してその責任を実感し、もっと日本語を大切にするように心がけて欲しい。

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