スキップしてメイン コンテンツに移動
 

立場をわきまえられない人と注意できない人


 1/11、トランプ大統領が移民政策に関する上院議員らとの会合の中で、カリブの国・ハイチについて"Shithole"という単語(便所の穴、肥溜め、尻の穴のようなニュアンス)を用いて表現したとして大きな批判を浴びている。ハイチを表現する際に問題の単語を用いたそうだが、前後の文脈上、アフリカ諸国についてもハイチ同様の対処をするべきだという話だったようで、アフリカ諸国からも強い反発が示され、一般市民だけでなく、各国の政府関係者らにも謝罪を求める動きがあるようで、批判が活発化している。
 Shitholeという単語をトランプ氏が用いたというのは、民主党の議員が明かした話らしく、トランプ氏は「ハイチの人たちに対して失礼な発言は一切していない」と否定している。もしかしたら、実際はShitholeとは別の単語を使用したのに、民主党議員が聞き間違いをしたのかもしれない。しかし、トランプ氏のこれまでの言動を考慮すると、彼の弁解を手放しに信用する気には全くなれない。もしかしたら、彼の言うように実際はShitholeという単語を使わなかったのかもしれないが、同じ様な意味合いの単語を使ったことには違わないのかもしれないとも想像してしまうし、彼が「失礼な発言は一切していない」と言っているということは、彼はShitholeを失礼な単語と認識していないだけなのかもしれないなどとも想像してしまう。

 
 要するに、彼がこれまでイスラム系国家からの入国を制限しようとしてきたこと、2017年8月に起きた白人至上主義者と反対勢力の小競り合いの中で、白人至上主義者の男が自動車で突っ込んで死亡者が出た件について、「どちらの側にも暴力的な者がいた」などとして、白人至上主義に関して強く嫌悪を示さなかったこと、複数女性蔑視が疑われる発言をしていることなどを念頭に考えると、彼の話には信ぴょう性が感じられない。要するに、今回のShitholeと言ったかどうか、ハイチやアフリカ諸国に対して侮辱的な発言をしたかどうかに関して、もしかしたら本当に言っていないのかもしれないが、具体的になんと発言したかを明示せずにただ「言っていない」と言われても、それは狼少年が「狼が来たぞ!」と言っているようにしか聞こえないというのが自分が感じる印象だ。
 
 基本的人権が認められている国では、思想信条の自由や表現の自由が誰にでも認められている。確かに、いくらそれらが認められていようとも、他人の権利を侵害する場合までそのような権利が認められるはずもない。要するに不当に他人を侮辱するということは許されないことだ。ただ、ハイチやアフリカ諸国についてShitholeという単語を用いた表現が行われたとしても、仲間内での冗談の中でとか、ブラックジョークである可能性が考えれらる場合など、時と場合によっては容認、というか、どんな場合でも手放しに褒められる行為ではないだろうから黙認という表現の方がよいかもしれないが、絶対的に問答無用で口にしてはならない言動とまでは言えないとも自分は感じる。
 例えば、1/13の投稿で取り上げた、相撲協会 評議会議長・池坊保子氏の「(モンゴル人は)狩猟民族だからね」発言に関しても、公になる取材に対するコメントでなければそれ程問題ではないかもしれない。取材に対してでなくても相撲協会 評議会議長という立場はわきまえるべきという見解もあるだろうが、ということは、池坊氏が評議会議長という立場でなく単なる一般市民の年配の女性だったならば、「この人はそういう考えの人なんだな」と受け止められるぐらいの話だったということだろう。
 
 トランプ氏の発言や池坊氏の発言の何が問題だったのかと言えば、彼らが代表的なアメリカ人であり代表的な日本人で、且つ公の場でそのような発言をしたことが大きな過ちなのだろう。勿論公の場での発言でなかったとしても、そのような発言をしたことが明らかになれば、それなりの反発は起きるだろうから、最も問題なのは、国を代表するような立場である、要するに自分がどのような影響力を持っているかを理解していないことにあるのだと思う。
 前述したように、基本的人権の尊重が定められている民主的な国家では、自分の考えを表明する自由がある。しかし、彼らがその自由を最大限に行使したいのなら、今の立場を離れるべきだ。当然、ハイチやアフリカ諸国を国籍や人種などで一括りにして、Shitholeなどと表現することが適切ではないのと同様に、トランプ氏や池坊氏の発言だけを見て、アメリカは差別主義国としたり、白人は相変わらず黒人を差別してると批判したり、日本は人権感覚に欠けている国などと表現することも、一つ例だけを根拠に国・人種全体を一括りにして批判することであり、決して適切ではない。ただ、そんな不毛な対立が激化するきっかけを作ったのは誰かと言えば、最初に配慮を欠いた発言をした者ということは事実だ。
 
 決断力に欠け、曖昧でどっちつかずな態度しか示せない者が、何か指導者や中心的な人物になるのも決して好ましくないが、いくらキッパリはっきり主張する能力に長けていたとしても、俺が!俺が!ばかりで後先をよく考えられない者も確実に好ましくないし、自分の立場がどんな影響力を持っているのかをしっかり理解出来ない者も好ましくないのは明白だ。
 アメリカの大統領を選ぶための選挙権を持っているのはアメリカ国民だけだが、アメリカ大統領が世界中に悪影響を及ぼしているのを目の当たりにしていると、自分はアメリカ国民ではないが、大統領選の選挙権がないのは不公平だとも思えてくる。本来、そのような悪影響を少しでも緩和する為に、我が国の政府や首相も力を尽くすべきなのだろうが、日本政府も首相もトランプ第一主義で動いているようにしか見えない。今回の件に関しては、まだ実際にトランプ氏が侮辱的な発言をしたかどうかを確定できるような状況ではなく、首相のような責任ある立場の者は、現時点では冷静に状況を見極める必要性があると言えそうだが、日本政府がトランプ第一主義に見えるのは国内からだけでなく、他国からもそのように見えているようだし、北朝鮮情勢など強くでられない外交面での懸念があることも理解はできるが、政府や首相にはもう少し国際的に恥ずかしくない態度を示すようにしてもらいたい。

このブログの人気の投稿

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

裁量労働制に有利なデータの不適切さ発覚から想像すること

 先週の国会審議の中で、安倍首相が今国会の目玉政策に位置付けている”働き方改革”法案に関する答弁を撤回・謝罪する場面があった。それは、裁量労働制の拡大に関する議論の中で、首相がその合理性の根拠について「 裁量労働制で働く労働者のほうが、一般的な労働者よりも労働時間が短いことを示すデータもある 」などとした発言についてだ。野党などの指摘によって発覚したのは、そのデータの不適切さで、残業時間の調査に関して、1日の残業時間が14時間、法定労働時間と合わせて1日23時間労働することがある、要するに睡眠時間1時間以下で労働することがあると回答した事業所が9社あったとする調査結果が示されていたこと、また、平均的な労働者の残業時間を1時間37分としているのに、1週間の合計は2時間47分としているなど、不可解な点が複数指摘された。  当初厚生労働大臣は問題のない調査結果であるという見解を示していたようだが、この指摘を受けて、政府・厚労大臣は「データを撤回し精査する」とし、今朝これについて厚労省から見解が示され、一般的な労働者に対しては” 一か月で一番長い残業時間 ”でデータを集め、裁量労働制の労働者に対しては”特段の条件を付けず、 単に一日あたりの残業時間 ”と質問してデータを収集し、異なる条件で比較が行われた不適切なデータだったと認めた。