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過去に学ばない大雪による混乱


 昨日の午後は前日に予想されていた通りの大雪で、首都圏では交通機関に大きな影響が出た。ターミナル駅では駅から人が溢れんばかりに混雑し、首都高や幹線道路では立ち往生した車を先頭に大渋滞が発生。中には10時間以上も動かない・動けないケースもあったようだ。
 今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでも、当然この件をトップニュースとして取り上げていたのだが、MCの堀潤氏は「当初予想されていたよりも積雪量が多く、混乱が広がった」というような認識を示していたが、国交省や気象庁は前日から、不要不急の外出は控えるようにとか、大雪が降り始める前に帰宅・移動を促し、予想では昼過ぎから夕方以降は大雪になるという予報が出ていたのだから、帰宅時間帯と降雪のタイミングが重なることや、場合によっては交通機関に影響が出ることが示唆されていたのだから、個人的には”予想外の大雪が原因の混乱”なんて全く感じられなかった。

 
 首都圏が大雪に見舞われ交通機関が混乱をきたすと、降雪が当たり前の地域の出身者らから「なんで東京はあんなに雪に弱いのか」という話が毎度のように出る。自分はこの話を字面そのままに受け止めるわけではなく、首都圏在住の者が郊外地域を田舎と呼んで下に見る風潮に対する態度、言い換えれば、地域差に関する単なる話のネタだと思っている。東京が雪に弱いのはある意味当然だ。東京でもほぼ毎年雪は降るが、昨日のような大雪は数年に1回あるかどうかだ。昨シーズンは昨日のような規模の雪による混乱は起こっていない。そんな頻度でしか大雪が降らないのだから、大雪が降っても普段と変わらない社会生活が送れるように備えることにコストをかけるのは、無駄と言ってもよいのではないだろうか。
 このように書くと「台風だって毎年大きな影響を及ぼすとは限らないが、台風による洪水などには相応の備えをしている。ならば大雪にも同様に備えるべきでは?」と言う人もいるかもしれない。確かにそんな見解も分からなくはない。しかし、東京では家が潰されるような大雪は降らないし、大雪では、自動車などが洪水のように水没して使い物にならなくなったりもしない。断言はできないが、80年代以降、東京で大雪が24時間以上降り続けたという記憶は無く、長くても1日乗り切れば、それ以降は何事も無かったかのような社会生活に戻る。ならば大雪に比べて被害が大きくなる恐れが強く、近年頻度も上がっている豪雨や、頻度は大雪より確実に低いが、一度起これば被害が甚大になる恐れのある地震対策を優先するべきだ、と言えるのではないだろうか。そんな理由で東京が大雪に弱いのは仕方がないと感じる
 
 しかし、電車の遅延によって人でごった返す渋谷や新宿駅での、インタビューで「困った」と言っている人や、首都高で10時間以上立ち往生して不満を述べている人を見ても、個人的には自業自得のように見えてしまう。冒頭で触れたように、堀潤氏のように”予想外の大雪による混乱”と見る人もいるだろうが、大雪になり交通機関に影響が出る恐れは前日から指摘されていたし、数年に1回あるかどうかとはいえ、逆に言えば数年に1回は同じような事態が起こっているのだし、現在社会人である人は東日本大震災の際にも帰宅困難者が出たことを経験しているのだから、大雪が予想されているのに、わざわざ外出して帰宅に苦労している様子を見ても、個人的には考えが甘いとしか思えない。
 このブログでは、以前にも震災時の帰宅困難な状況に関して書いており、完全に重複する話だが、あの地震が起きたのは金曜日の午後で、地震後電車は動かなくなり、道路も混乱して多くの帰宅困難者が出た。直後の週末は関東でも電力不足や安全確保が出来ていないなどの理由で電車が動かず、製油所・流通網の被害などでガソリンも売切れになり、自動車やバイクでの移動にも不安があった。週明けの月曜は動き出した電車もあったが、完全復旧には程遠い状態でかなり混乱しており、自分がその頃の勤務先の上司に職場に行けないと伝えると、その上司は職場が契約していたガソリンスタンドがガソリンを確保してくれていた為、社用車で通勤できたことを前提に「どうにかしておまえも来い」と言ってきた。自宅から勤務先への電車はまだ動いていなかったし、自分の車もバイクもガソリンの残量が少なく、いつガソリンの供給が安定するのかも不透明で無駄に使いたくなかったので、結局自分はそれを無視し職場には行かなかった。「職場に行ったところで何もできなかったし、することもなかった」と、当時会社の近所に住んでいた同僚に聞いた。案の上、地震から3日が経った週明けの月曜も、不完全な交通状況下で無理矢理通勤した人たちの一部が、流石に地震当日の金曜程多くは無かったが、また帰宅困難となり関係各所が対応に追われる事態になったことが報道されていた。
 震災後、昨日の規模での交通被害は自分が覚えているだけで少なくとも3度ある。自分は大雪や台風被害が予想される際は電車での移動は避ける。間引き運転でも、昨日のように乗るまでに寒い屋外で何時間も待つことになるし、運休になって帰れなくなれば、寝床を確保しなければならず、そんな不確定な物に頼りたくないからだ。だから基本的に大雪・台風=自動車移動で、勿論大雪の際は、冬タイヤとチェーン携行で備えるが、2012年の大雪の際に、普段は自動車で1時間かからずに帰宅できる道のりなのに、立ち往生したトレーラーになどによる渋滞で12時間以上かかった経験があり、いくら自分が備えていようとも缶詰にされる恐れがあることを思い知らされた。
 
 震災時の経験から言えば、帰宅時間帯の大雪があらかじめ予想されていれば、最初から休みにする会社もあるし、午後は退社を促す会社もある。ということは、どうやっても普段通りに業務を行うことは出来ない。小売りやサービス業だって確実に客足は伸びないだろうから、無理矢理営業するメリットは決して大きくない、というか寧ろないと言ってもいいかもしれない。どうしてもその日にしなくてはならない仕事もあるだろうから、すべての経済活動をストップさせる必要はないだろうが、確実な帰宅手段を確保できない者を出社させることは好ましくないし、帰宅手段が確保できないのに外出して「帰宅できなくて困っている」と言っている者にも全然同情出来ない。会社が出社を無理強いするなど、どうしても出社・外出しなければならない事情があるなら、食べ物と寝袋を持参し、帰宅できなくても困らないような対策をしておくべきではないだろうか。自動車に関しても同様で、前述のように、いくら自分が備えていようとも、立ち往生に巻き込まれる恐れは確実にあることを前提とし、携帯トイレや食べる物も携行するぐらいの必要性があると自分は思う。大雪が降れば首都圏では交通機関の大混乱が起きるのは予想外でもなんでもない。
 
 しかし、羽田空港の中継などを見ていると、航空会社が「予定通り飛ぶ」としていたのに、いざ空港にいってみたら着雪の為欠航になったと不満を漏らしている人もいたようだ。確かに航空券を予約し航空会社が予定通り飛ぶとしたのなら、行かないわけにはいかない。このような事案を見ていると、日本の交通機関は遅れ・運休・欠航などのイレギュラーが少なく優秀、という評価が一般的だが、場合によっては運休・欠航をなるべはやく決定する方が優秀なのかもしれないとも思える。ターミナル駅の混乱に関しても、大雪が予想されていたのだから鉄道会社が前日から、間引き運転・場合によっては運休を宣言していれば、大きな混乱にならなかったのかもしれないし、首都高などの立ち往生だって、道路公団が雪が降る前に通行止めにする予定を宣言していれば、起きなかったかもしれない。一般道での立ち往生だって、多くの原因は冬タイヤやチェーンによる対策をしていなかった大型車だ。一般的な自家用車は、立ち往生してもほぼ人が後ろから押すなどの方法で路肩に寄せられるが、大型車ではそうはいかない。しかも重量のある大型車は、チェーンを巻こうが坂を登れない場合も少なくない、大型車を運行している流通業社が無理に通常業務を維持しようとせず、事前に大雪を理由に業務を縮小・休止すると取引先に通達し取引先も受け入れていれば、雪対策の不十分な大型車の運行を止められ、立ち往生による渋滞は避けられたかもしれない。
 
 前日・前々日から大雪が予想され、混乱が起こる恐れが指摘されていた昨日のような状況では、”予想外の大雪で起きた混乱”なんてのは単なる言い訳にすぎないと自分は感じるし、馬鹿正直に普段通りの生活・業務を無理矢理維持しようとする日本人の気質が招いていることだと感じる。はっきり言って、過去に似たような経験を何度もしているのに、同じような失敗を繰り返しているのは、馬鹿正直ではなく、言葉は悪いが先の事が予想できない単なるバカとしか言えないとも感じてしまう。企業側も働く側も過去に学ばず、ただただ勤勉だけを美徳としているから、大雪・台風の度に似たような混乱が起きるのではないだろうか。こんなことからも、働き方改革は全然進んでいないんだと感じさせられる。

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