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「キャバ嬢みたい」は失礼?


 とある正月番組を見ていると、男性芸人の司会者が、アシスタントを務めていた20代の女性タレントが着物を着ていたことを踏まえて「キャバ嬢の成人式みたいだな(笑)」と発言していた。録画していなかったので詳しく確認できておらず、もしかしたら「キャバ嬢の初詣みたいだな(笑)」だったかもしれない。それに対して女性タレントはすかさず「失礼!(笑)」と返答していたのだが、この女性タレントもキャバクラ嬢を見下しているように思え、キャバクラ嬢に失礼なコメントをしているように見えた。そして、そのような指摘をせずに「ごめん(笑)」的なやり取りをした男性芸人も、女性タレント同様にキャバ嬢<女性タレントのような見下す感覚を持って「まるでキャバ嬢みたい」と発言したように見えてしまい、とても残念な気分にさせられた。


 このようなやり取りをテレビで放送するべきでないと言いたいわけじゃない。自分がこのブログでしばしば書いている通り、いろいろなことに過敏になってタブーを増やし過ぎることは好ましくないとも思っているから、放送されたこと自体は大した問題ではないと考える。ただその一方で、テレビで職業差別を感じさせるような出演者同士のやり取りが、放送されたことに不快感を表明することは当然の事だとも思う。そして、12/18の投稿でも触れたが、このような感覚がいかに滑稽かを指摘することも必要なことだろう。
 昨年・2017年は、日本では男尊女卑の傾向が強いという話が、セクハラ・性犯罪・子育て関連の問題などが複数クローズアップされたこともあり、これまで以上に盛り上がりを見せ、その文脈の中で男性による女性差別という点が大きく注目されていたが、自分はこのやり取りから、女性を蔑んでいる女性も決して少なくないのだろうと想像してしまった。
 自分は、この件だけに注目し、この女性タレントがそんなタイプの女性だと糾弾したいわけではない。キャバクラ嬢に限らず水商売や風俗で働く女性のことを、男性に媚びる意地汚い女だとか、金に目がくらんで女を売りにしている卑しい者というような目線で見ている者は、日本の社会には男女問わず大勢いる。女性タレントという職業も、少なからず男性にどう見られるかを考えて女性という特性を出来る限り活かす職業のように思えるので、キャバクラ嬢を見下すようなコメントをしたのが女性タレントだったということは、不快感をより強く感じさせた要因の一つだったのかもしれない。しかし、この女性タレント1人を批判したところで社会全般の風潮が変わるわけでもなく、そんなことをして満足しても仕方がない。この女性タレントや男性芸人だけが悪いのではなく、社会全体にそんな風潮があるから、彼らはそのような認識を無意識的に持ってしまっているとも言えそうだと自分は思う。

 このように書くと「お前は何をどうしたいのかがよく分からず、結局のところ、私は寛大ですアピールをしたいだけじゃないのか?」と感じる人もいるだろう。このような発言をテレビで放送するべきじゃないと指摘し、兎に角ダメとタブー化すれば、確かに表面的には水商売や風俗業に携わる女性に対する差別は無くなるだろう。無くなるは言い過ぎだとしても、少なくともテレビ画面からは一掃出来るかもしれない。しかしそれは、言い換えればテレビ画面から一掃されただけで、根本的な問題解決にはなっていないとも言える。
 要するに必要なのは「そのようなことを言うな」と規制することでなく、何が問題だったのかを指摘し、多くの人にそれを考えてもらい、そのような差別的な認識を持つ人自体を減らすことが重要なのだと考える。そのような認識を持つ人自体が減れば、冒頭で紹介したような出演者同士のやりとりは、規制などしなくても自然と減るはずだ。
 太陽と北風の話で言えば、必要なのは北風ではなく太陽だということだ。臭い物に蓋という方法がここ20年くらいの間の問題解決の主流になっており、何かあるとすぐに規制、規制と言われがちだ。しかし臭い物に蓋をした結果得られるのは、(一部の人にとって)不快なものが見えなくなったということと、そのような人の自己満足だけである場合が殆どだ。


 トップ画像は、Japan Hostess | After learning about Japanese culture, you w… | Flickr を使用した。

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