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電子マネーと顔認証


 近年、隣の国・中国では電子マネーの普及が飛躍的に進んでいるという話を、テレビ・新聞・ネットのメディアなどが総じて取り上げている。電子マネーの普及は中国だけでなく北欧などでも進んでいるそうだし、クレジットカード利用率なども含めて考えれば、キャッシュレス化は世界的な潮流で、現金払いがまだまだ主流である日本は、時代に取り残されているという論調で書かれた記事がどのメディアでも主流だ。
 日本で現金重視傾向が変わらない理由は、偽札などの不安が低いこと、治安が良いので多額の現金を持ち歩くことへの抵抗感が低いこと、などだと多くの記事で紹介されている。このような理由ならば、寧ろそれは安全な社会であることを誇るべき話で、ネガティブな要因など、どこにもないのでないのか?というのが自分の感覚なのだが、効率やマネーロンダリングなどの不正のし難さなどの観点で考えると、キャッシュレス化が合理的ということで、現金重視をネガティブ視する風潮があるようだ。

 
 昨年、テレビにも良く出演しており、しばしばネガティブな意味合いで話題になる某社会学者が、ワイドショーに出演した歳に「電子マネーを使わない人は気持ち悪い」とも聞こえてしまうような発言をしていた。流石に電子マネーを使わないなんてヤツは気持ち悪いなんて発言には一切賛同できないし、確実に不適切な発言だ。だが、確かに未だに現金重視とされている日本でも、SUICAやPASUMOなどの鉄道系電子マネーなどを中心に、コンビニや自販機で、小銭代わりに使える電子マネーはそれなりに普及しており、高額な支払いが必要な店の大半では、クレジットカード払いが可能なので、両者を上手く組み合わせれば、現金を殆ど持たなくても生活が可能な状態にはなっている。そしてSUICAやPASMOなどを小銭入れ代わりに使い始めると、小銭で財布がパンパンになることもなくなるし、店側もお釣り用の小銭を用意する必要が無くなるだろうから、もっと使える店が増えるべきだとも思えてくる。
 ただ、現金の直接使用では必要ない、残額が少なくなった際に現金でチャージする手間はある。オートチャージを利用することで省くことは可能だが、クレジットカードなどと連携したオートチャージでは、使い過ぎてしまうという人もいるだろう。また、買い物の履歴が全て残るということは、ある意味ではお金の管理がしやすく、使い過ぎの抑制に役立てたり、計画的な消費の為には有効だろうが、現金利用では考える必要性が薄かった、記録が盗まれる恐れが新たに生じると考えることも出来そうだ。個人的にはキャッシュレス化はすべての面で現金重視より優れているとは思えない。
 
 電子マネーなら、お金を盗まれる心配は現金よりも低いという話もしばしば耳にする。もし電子マネー決済に必要なカードやスマートフォンを落としたり盗まれたりしても、クレジットカード同様早急に利用停止の措置を行えば、不正に使用されるリスクは殆どないが、現金では落としたり盗んだりされたら返ってこないことも多いといった話だ。確かに紙幣や硬貨という物理的な証書でなく、データとして管理されているお金・電子マネーならではの利点かもしれない。しかし、逆にデータならではの欠点・不安な点もあると個人的には考える。現状では、不正アクセスによってデータが書き換えられてしまうということが絶対ないとは言えない。直接的な不正アクセスでなくても、なりすましによってデータを盗まれる恐れもまだまだ決して低くない。現に自分の周りにも、クレジットカードのスキミング被害を受けた者は何人かいるし、保有していたビットコインが消えてしまったと明言しているテレビ番組司会者などもいる。
 どうも最近は電子マネー化・キャッシュレス化は世界の潮流で、ビジネスチャンスでもあるのだから日本も乗り遅れてはならないというような論調が幅を利かせているが、自分には、電子マネー・キャッシュレス化はまだまだ黎明期であるように思え、問題はこれからどんどん表面化するのだろうとも思える。確かにビジネスチャンスという意味で言えば、乗り遅れるな!という話も理解はできるのだが、利用者的な目線で考えると、成熟しきっておらず、飛びつくのはまだまだ時期尚早であるようにも思える。勘繰り過ぎかもしれないが、場合によっては、一部の者が新しい技術を普及させることで利益を得る為に、そのような風潮を煽っている側面もあるのかもしれない。
 
 電子マネーと直接的に関係のある話ではないが、最近パソコンやスマートフォンのログインに、指紋や顔認証を用いる場合が増えている。ただ、現在はまだ文字列指定によるログインと選択できるような状態なので、特に不便を感じることはない。これも電子マネー同様に、特に中国で顔認証技術の研究が重視されており、日本も乗り遅れてはならないというような論調の記事・番組を見かける。
 個人的には指紋や顔認証は、文字列による認証に比べると安全性は決して高くないと考える。指紋は寝ている隙に勝手にログインされる恐れが確実にあるし、場合によっては不正な認証の為に手首から先を切り落とされてしまう恐れもあるだろう。顔認証も同様で、認証システムによっては写真で認証出来てしまうことがまだまだあるようだし、特殊メイク技術などを用いれば、他人に成りすますことも出来そうで、全然安全性を感じられない。自分の頭の中だけにしかない文字列の記憶の方が、そんなものよりよっぽど安全だと自分には感じられる。

 新しい技術が万能に見えるのは、既存の技術に比べて登場からの時間が短く、問題点の洗い出しが充分でないからというのも、その要因の一つだろう。自分は決して電子マネーの利用や指紋や顔などの生態認証に関して全面的に否定的なわけではない。どちらかと言えば、とりあえず試してみるタイプの新しいもの好きなので、致命的な影響に巻き込まれない範囲では、積極的に利用したいと考える方だ。
 ただ、電子マネーや顔認証技術などに関してはまだまだ発展途上の状態なのに、万能で既存技術より確実に優れているというような論調の記事を目にすると、「普及すると儲かる人がその裏にいるんだろうな」と感じてしまう。 

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