スキップしてメイン コンテンツに移動
 

産経新聞の報道姿勢


 産経新聞は2/8、昨年・2017年12/9に掲載した沖縄での交通事故に関する記事に関して、事実と異なる内容だったことを認め、謝罪し記事を削除したそうだ。BuzzFeed Japanの記事によると、産経新聞は12/1に沖縄市内で発生した交通事故に関して、米兵が日本人を救出していたとこ後続車にはねられたと記述し、これを記事化しないのは「日本人として恥」だとして、沖縄タイムス・琉球新報を強く批判する記事を掲載した。この記事はネットで広がり所謂、自称・保守系まとめサイトなども引用していた。しかし、批判された琉球新報が調査したところ、米軍も沖縄県警も米兵が救助活動をしていたという話を否定。それを受けて産経新聞が記事削除・謝罪するに至ったようだ。
 この産経新聞の記事を引用というか、信用というか、記事を受けて意思表示を示したのは自称保守系まとめサイトだけではない。陸上自衛隊第15旅団も12/21にFacebookで「自分の事を犠牲にしてでも、日本国民を助け出すという勇敢な行動に、私達は心から敬意を表します」と投稿しているそうだ。更に石垣市の地元紙・八重山日報、防衛省・自衛隊員向けの新聞・防衛ホーム新聞なども産経新聞の記事を引用して記事化しているそうだ。

 
 産経新聞の記事に関しては、はっきり言って事実誤認による不正確な事案の記事化という範疇にも収まらないくらい不誠実で、在日米軍にも不利益を与えかねない大変深刻な事態だと思う。誰もが認識しているように、産経新聞は政権に対して非常に親和的で、このような不正確な記事が掲載された背景には、基地移転問題で政府と対立する沖縄県や、米軍に強い不信感を抱く沖縄県民へのけん制を示したいという産経新聞や記者の願望があるのだろう。不正確な情報で米軍・米兵を美化すれば、産経新聞だけでなく、米軍・米兵への不信感が余計に高まる恐れもあるだろうし、直接的には関係ないと言えるだろうが、産経新聞が支持する姿勢を強く示しており、また、米軍が起こす不祥事に対して毅然とした態度で臨めない政府への不信感にも繋がりかねない。
 産経新聞の不正確な記事を根拠として、米軍や政府へ批判が向けられるのは適切ではないが、それでも不信感につながりかねないことは事実だ。米軍や県警が、交通事故で米兵は救助活動をしていない、と明かした理由は、産経新聞がついた嘘の片棒を担いだことになれば、一気に米軍や政府への批判が高まることを理解しているからで、出来る限りそのような事態を避けなければならないと考え、ノーコメントではなく明確に事実でないと言及したのだろう。ただ、米軍や県警は、琉球新報の取材に対してではなく、産経新聞が記事を掲載した時点で、「事実とは異なる」と即座に指摘するのが最も理想的だったことも事実だ。

 更に心配になるのは、自称保守系まとめサイトや、一部の報道機関だけならまだしも、陸上自衛隊や防衛省内向けの新聞が、事実と異なる話を迂闊にも信用し流布してしまったことだ。このことについて記事化しているメディアは多くなく、自分は記事内容が事実に即しているか確信を持てないが、記事の内容に大きな間違いがないのなら、自衛隊や防衛省は信頼を大きく損なうと思う。そんな視点で考えれば、前段では産経の記事を根拠に政府を批判するのはお門違いと書いたが、批判が政府に及ぶこともある意味では仕方がないかもしれない。

 「まとめサイトや自衛隊・防衛省は産経新聞に騙された被害者」と感じる者もいるだろうが、情報の真偽を確認せずに事実として不特定多数に積極的に伝えれば、確実にある程度の責任は問われる。確かに最も問題なのは、多くの人が、ある程度記事内容が信用できるとされる全国紙レベルの新聞が、充分な取材もせずに不正確な記事を掲載したことだが、この件について他の全国紙・NHK・民放キー局の殆どが触れていないことを勘案すれば、慎重になるべき話かもしれないと想像できたのではないだろうか。ごく普通の市民が産経新聞の記事を信じ、ツイッターでリツイートするなどは仕方がないかもしれない。誰が運営しているかも定かでないようなまとめサイトならまだしも、自衛隊の旅団のSNSアカウント、防衛省内の新聞などという立場なら、もっと慎重に情報発信して然るべきだ。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。