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情報端末の信頼性


 FBI、CIA、NSAなどアメリカの諜報機関が「アメリカ市民は中国の情報機器メーカー・HuaweiやZTEの製品・サービスを利用するべきではない」と警告したと、CNBCが報道したそうだ。Gigazineが掲載したこの件を紹介する記事によると、FBIの長官が、悪意を持って情報を盗む能力を有する恐れや、検出されていない未知のスパイ活動を行う機能が組み込まれている可能性などについて言及したそうだ。
 このような指摘が行われるのは今回が初めてではなく、2016年には実際に一部の端末から、中国のサーバーにデータが勝手に送信されていたことが発覚しているそうだ。日本でも同じ中国の情報機器メーカー・レノボ製のパソコンに、セキュリティ上強い懸念があるプログラムが組み込まれていたことが発覚し、問題視されたことが過去にあった。

 
 確かに、政府による情報統制や国民監視が行われている中国のメーカー製端末を利用するのは、自分もやや抵抗感がある。とは言っても、昨今は中国メーカー製品の品質は格段に向上し、それなりの人気も博しており、価格の安さと性能のバランスなどを考えれば、魅力を感じないわけではない。現にAndroid端末においてHuaweiは、世界的に韓国のサムソンに次ぐ地位を築き上げている。
 また、このような記事だけを見ると、中国製品だけに注意が必要なように感じられるかもしれないが、アメリカのNSAによる盗聴問題、不適切な情報収集問題があったことも確かだし、アメリカのhp製パソコンからも、スパイウェアが検出され、レノボ製同様の問題が日本で起きている。しかもhpは日本向け製品は日本国内で生産している。この手の話は、確かに中国製に比べればその懸念は小さいのかもしれないが、決して中国メーカー・製品に限った話ではなく、アメリカのメーカー・日本製の製品でも起こりうる話であることも認識しておく必要は確実にあるだろう。
 
 1990年代後半から2000年代初頭にかけて、インターネット普及などの影響もあり、個人情報の保護に関する問題提起が多方面から起こった。中には少し過敏になり過ぎたような反応を示す人もいた。個人的には「理解出来ない、していない事だから過剰に不安を覚えるのだろう」と感じていた。例えば、その後の特殊詐欺に繋がるような、アダルトサイト閲覧などに関する架空請求が横行していたこともあり、住所や電話番号や氏名の取り扱いなどについて、名簿屋の存在などがメディアなどでも取り上げられ「不用意に提供してはならない」というような啓蒙が行われていた。しかし、通販やレンタルビデオ店などを利用するには、信用を得たり、配送してもらう為には住所・氏名・電話番号を提供しなくてはサービスを利用できない。勿論怪しい業者・店に注意することは必要だが、あまりに過敏になり過ぎると、社会生活に支障をきたすことになる。要するに、不正に個人情報が使用されるリスクをある程度は受け入れる必要もあると言えるだろう。
 また、私たちが検索する言葉の記録など、個人情報の一部を提供することを前提に提供されているサービスも、特にネット上には多数存在する。勿論、知らない間に勝手に個人情報が収集されるようなことは確実に好ましくないが、一切個人情報を漏らさずに生活することは、インターネットを利用する限り、不可能に近いと言える。ネットを一切利用しないで生活することも不可能ではないが、現在一般的な社会生活を送る為にはネットを一切利用しないというのはあまりにも不自然だ。大事な事は、自分の情報がどこでどのように扱われているかについて、極力理解・把握しておくことだろう。
 
 通販を利用するのに、住所・氏名・電話番号を提供しないことは不可能だ。しかし店員が勝手に顧客情報を悪用する恐れは確実にゼロではない。通販に限らず、少し前に警察官が防犯の名目で作成された住民の巡回連絡カードを悪用し、そこから得た情報を幼女誘拐に用いたという事件も発生している。勿論そんな事件が起こるのは仕方ないという訳ではないが、人間が関わる限りどんな場合もリスクがゼロにはならないことは、常に変わらない。通販に関して言えば、個人情報を提供することにリスクはあるが、そこで悪用される恐れが出てくる情報は提供した個人情報、住所・氏名・電話番号と、何を買ったかの履歴だけだ。それがどのように悪用される恐れがあるかを想像してみると、概ね住所や電話番号を悪性した架空請求・オレオレ詐欺、買い物履歴を悪用した詐欺商材営業などの懸念が考えられる。しかし、想像できる範囲のことには対策が可能だし、対策をすれば致命的な不利益を被る恐れはかなり下げられる。そう思えれば、ある程度不安は感じるだろうが、その不安と通販の利便性を天秤にかけて、サービスを利用するかどうかを決められる。勿論想像を超えた詐欺被害などに遭う恐れが全くない訳ではないが、ただ漠然と何も考えずに、ただただ不安だ!不安だ!と言っていても仕方がない。
 
 しかし、情報端末、特にスマートフォンから情報が抜き取られることは、前段のような話とはレベルの異なる話だ。昨今スマートフォンの中には、ハッキリ言って持ち主の個人情報の大部分が収まっていると言っても過言ではない。電源が入っている限り、常にネットに接続されているし、やろうと思えばGPSによって位置情報、カメラによって画像、マイクで音声を収集も可能で、行動履歴を全て丸裸にされる恐れもある。現にアメリカでは、NSAが不適切に個人情報を収集している恐れが指摘されてから、パソコンやスマートフォンのカメラにテープを張り付けるなど、物理的にシャッターをする人も少なくないようだ。国家権力による監視に限らず、android端末では、全く動作していることを持ち主に意識させずに、カメラやマイクを遠隔操作し、端末周辺、言い換えれば持ち主を監視できるアプリケーションが存在している。当然GPSから位置情報を得ることも出来る。そんなことを考えると、スマートフォン・パソコンを選ぶ際には細心の注意を払う必要があるだろう。誰かが何かを仕込む恐れが増える中古品には更に注意が必要だ。
 
 では、iPhoneなら安全なのかと言えば、決してそうとも言い切れないのではないだろうか。2017年12月、iOSには旧型端末のパフォーマンスを故意に落とすようなプログラミングが組み込まれていたことが発覚し、大きな問題になった。Appleは「バッテリーの消耗による不意のシャットダウンを回避する為の機能」という旨の見解を示したが、これを公表していなかったことは不適切だったと認め、バッテリー交換などの対応を行っている。
 この件は、個人的なiPhoneの信頼性を著しく下げた。Android端末のレベル向上は目覚ましく、数年前のようなiPhoneの優位性ははっきり言って今はもうない。少なくとも自分にはそう感じられる。既にiPhoneでないと得られない体験はかなり少なくなっている。しかし、この件から理解しておかなければならないことは、iPhoneやiOSなどにも、私たちが知らない機能が仕込まれている恐れがあるということだ。勿論、今のところiOSに個人を監視するような種類や、不当に個人情報を収集するようなスパイウェアが仕込まれているという事実は発覚していない。というか実際にないのかもしれない。しかしそれは、言い換えれば”発覚していないだけ”なのかもしれない。
 
 玉石混淆のAndroidやWindows端末よりApple製端末の方が、セキュリティ面で優位だという話は理解出来る。しかし何事も過信は良くない。勿論過敏になり過ぎればandroidだろうがWindowsだろうがApple製だろうが、どれも怪しく見えてくるだろう。過信も過敏もどちらも結局両極端・バランスが悪いということなのだろう。情報端末を選ぶ際には、価格と性能、使い勝手の良さ、そしてメーカーの信頼性なども考慮する必要があり、バランスよくそれを考えなくてはならないという状況だと言えるだろう。

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