フロリダの高校で起こった銃乱射事件と、大統領が示した「もし亡くなったあの勇敢な教職員が、ロッカーに銃器を持っていたら、もっとたくさんの命を救えていただろう」という見解に関する違和感について、2/22の投稿で書いた。TBSニュースの2/23の記事によれば、大統領は、
(教師が銃を持っていれば)銃撃事件は起こらない。なぜなら犯人は臆病だからだ。学校を銃撃しようとするやからは、教師の2割が銃を持っていれば敷地に入ってこないだろう
教員が銃を所持すれば学校を狙った犯罪を防ぐことができる
銃を携行する教職員には、少額のボーナスを出すことを勧めたい
などとも述べたそうだ。大統領には「学校への銃の持ち込みが禁止されているから、犯罪者は学校を、反撃を受け難く狙いやすい標的と感じ、あのような事件が起こる」という認識があるようだ。自分は大統領の認識は不備だらけだと考える。
まず、学校に銃を持った職員がいれば、標的になり難いという話について、確かにこれについては大統領の主張が全くの検討違いとは言い難い。今回のフロリダの事件のように犯人が事件を起こした後自殺しておらず、事件後自分の生命を維持することを前提に事件を起こしているなら、そのような側面もあると言えるだろう。しかし昨年のラスベガスの乱射事件のように、事件を起こした後犯人が自ら命を絶つケースは決して少なくない。このような件に関しては”犯人は臆病者だから銃があれば狙われない”とは言えないのではないだろうか。死を恐れず犯行を起こす者に対しては、数人の教師が銃を携行していたところで、それが犯行に対する高い抑止力を発揮するとは考え難い。
次に、教員が銃を所持すれば学校を狙った犯罪を防ぐことができるという話は、必ずしもそうとは言えないのではないか?ということだ。教員が絶対過ちを犯さない神のような存在ならば、その可能性が高いとも言えるだろうが、教員とは言え人間であることには変わりなく、何かの拍子に自暴自棄になり、所持していた銃で乱射事件を起こす恐れが全くないとは言えないし、教員が所持していた銃を問題のある生徒や侵入者に奪われ、乱射事件が起きる恐れもないとは決して言えない。要するに、銃がある限り乱射事件が起きる恐れは確実に無くならない。そして持ち込まれる銃が増えれば増えるほど、そんなケースが発生する恐れも高まる。教員が銃を携行することで、教員が銃撃される恐れは今より下がるかもしれないが、生徒が銃撃される確率は、場合によっては最悪増える恐れさえあるのではないだろうか。そう考えると、教員の銃携行を促進する為、少額のボーナス支給検討なんて話は常軌を逸しているとしか言えない。
Gigazineが2/23にまとめた記事によると、トランプ氏は銃乱射事件を受けて、暴力的なゲームや映画を規制すべきだと発言したそうだ。これまでもトランプ氏の頭の中が20年程度前の認識から更新されていないと感じられるような事案は複数あったが、またもやそれを裏付けるような発言をしたようだ。Gigazineは1/25に「『ゲームをプレイすること』と『暴力的であること』に関連はないという研究結果が発表される」という記事を掲載したばかりだ。この記事は暴力的なゲームに限らずゲーム全般についての話だが、暴力的な映画やゲームの影響で犯罪が起きるという話が最も盛り上がったのは、1999年のコロンバイン高校乱射事件の頃で、その後このロイターの記事のような反証も多く示され、かなり下火になっている。
この手の話は、暴力事件以外、例えば日本でも、痴漢事件の容疑者が痴漢モノのアダルトビデオを所持していたとか、強姦容疑者が強姦モノのビデオを所持していたなどと、主に検察が、強制的な家宅捜査を行い証拠として提出することが多々あり、まるで犯罪と関連性が強いかのように論じられる場合が決して少なくない。確かにその種のアダルトビデオを鑑賞する者の中には犯罪を犯す者もいるだろう。しかし、そんなのは鑑賞する者の内のごく少数でしかないし、もし関連性がとても強いのなら、アダルトビデオに限らず、性的コンテンツ・サービスのバリエーション・量ともに世界で最も発達している国の一つ・日本の性犯罪発生率は、世界最悪でなければならないのではないだろうか。日本の性犯罪は親告罪とされてきたので、実際は訴えられていない潜在的な件数はもっと多いかもしれない。しかしそれを勘案しても、日本の性犯罪発生率は世界的に最悪レベルとは言えないと自分は感じる。寧ろ、多様な性的コンテンツやサービスが性犯罪発生率と抑えていると言えるような側面の方が強いのではないだろうか。
そもそも銃乱射事件で大勢の人が亡くなっているのに、「銃は悪くないので強い規制は必要ない。それよりも銃を乱射できるゲーム、銃の乱射シーンがある映画の方が問題で、そちらを強く規制するべき」なんて話に共感できる者が一体どれだけいるだろうか。はっきり言ってそんなのは、競馬を予想する際に、自分の贔屓の馬に有利な情報だけに注目して予想を組み立てるようなもので、銃規制から目を逸らせようとしているだけにしか思えない。
今の日本の首相も自分に都合の良いことにだけ過剰に注目し、そればかりアピールしがちだが、トランプ氏はさらに輪をかけたような見解を示すことも多く、アメリカ大統領という世界で最も影響力を持つ人間の一人であることを考えれば、さっさと辞めてもらいたい。安倍首相とトランプ大統領、彼らが気が合うとお互いに言っていることはある意味当然のことに思える。同時にとてもとても残念なことに感じる。
自分に都合の良い話にばかり注目し、都合の悪い話を無視するという特徴は、ネット上でヘイトスピーチ的な主張を行っている者とも共通するし、フェイクニュースに騙されやすい人達とも共通する。そんなタイプの人が私たちの国や、世界で最も影響力の大きな国で、最も権力を持つ立場に就いていることには、かなり大きな懸念を感じてしまう。